騎士様は甘い物に目がない

ゆみ

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噂のキャンディー

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 ジークフリートの執務室へ行こうと王宮の北棟に入ってすぐ、レジナルドはリーナ王女に呼び止められた。
「レジーなら知っているでしょう?」
「?」
 何の事かと話を聞いてみると、王宮の侍女の間で最近人気の出てきている菓子屋の話だった。リーナ王女は是非とも自分を店まで連れて行けとうるさい…。
「あぁ…確かに宝石みたいに綺麗だった──。」
 例の騎士団で一つだけ貰った甘いゼリー菓子を取り扱っている店のことだろう。
「レジー、本当にお願い!貴方しか居ないのよ!」
「…リーナ様、いくら俺でも貴方を密かに連れ出すなんてそんな真似出来ませんよ。」
「…リアとのことは?」
「な、何でそれを?」
「私が何も知らないとでも思っているの?」
 必死に言い募るリーナ王女。近くを通りかかった騎士が何か聞いてはいけない会話を耳にしてしまったと言うような顔で足早に去っていく。
「…リーナ様?」
「私のこの思いをレジーだけは分かってくれるでしょう?」
──甘い物の話ですよね?
「なんか、わざと誤解を招くような言い方してません?」
「あら、何の事かしら?」
 悪戯がバレたというようにリーナはうふふと笑うと、どこからか小さな包みを取り出した。
「…これと同じものがどうしても欲しいのよ。」
「これは?」
 包みを開くと中には琥珀色の宝石…の様な?
「…キャンディー?」
「そう、紅茶の香りが物凄くいいのよ?」
「へぇ、俺はてっきりゼリー菓子の事かと思っていました。」
「あの店に置いてある物はどれも可愛くて乙女心をくすぐるらしいのよ!──これは、最後の一つだけど…レジーにあげるわ。」
 包みを押し付けるようにレジナルドに渡すと、リーナは早目に予定を立てるよう言い付けて返事も聞かずに去って行った。
 昔からリーナはこんな風だ──。ジークフリートと3人で喧嘩をしながら王宮で永く過ごしてきたレジナルドは知っていた。
 リーナからその想いを伝えられたあの日も、彼女は大好きなチョコレートタルトとその想いをレジナルドに押し付けるように渡すと返事も聞かずに逃げる様に去って行った。
 包みを改めて開くとキャンディーはやはり綺麗な琥珀色に輝いている。レジナルドはそこに同じ色の髪を持つ、儚い笑みを浮かべた一人の令嬢ひとを見ていた。
「さて、さっきの騎士の誤解をどうやって解けばいいかな…?」
 キャンディーをそっと口に含む。口の中には一気に紅茶の香りと、花の華やかな香りとが広がった。
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