騎士様は甘い物に目がない

ゆみ

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咽び泣きドーナツ

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 少し前にステーリアからはるばる手紙が届いた。それが何とフェルナンド殿下からジーク宛に、だ。リーナ様でもセシリア様でもなく…。
 ジークフリートは嫌な予感がすると言いながらも中身が気になるようであっという間に読み、そのまま黙り込んでしまった。…何だろう?何が書いてあったんだ?
 考え込んでいるようなジークフリートに声を掛けたものかどうか迷っていると、こちらに手紙を差し出される。読めってことなんだろうか?おずおずと受け取るとその文面を見て頭が真っ白になった──。そうか、そういう事だったのか。便箋には流れる様に書かれた綺麗な文字が並んでいる…が、全く読めない…。ステーリア語、あの時頑張って勉強したんだけど…。こんなに崩して繋げて書いてあったら普通分かんないだろ?
 上目遣いにチラッとジークフリートを見上げると、読めなかったことが直ぐに分かったのだろう、噴き出して笑っている…ぐぅ。

 手紙には当たり障りのない挨拶とともに菓子のレシピが書いてあるという。ジークフリートはそれをレジナルドに理解して欲しかったようだ。
「フェルナンドはステーリアからチョコレートを贈ることが出来ないから、その代わりに異国の菓子の作り方を書いてきたようだ。こちらで料理人に作らせてリアに出して欲しいらしい。どう思う?」
「なるほど、そんな事が書いてあったのか…ま、こっちで作ってもらう分にはいいんじゃない?」
 それからがひと仕事だった。フェルナンド殿下の手紙をジークがヴィルヘルム語に訳して、それを俺が料理人に伝え試作を重ねる。フェルナンド殿下も実際に自分が作った訳では無いので結構大まかな説明しか書いて無いので苦労した。
 そしてやっと納得のいくものが出来上がったのは手紙が届いてから3日後だった。

「こちらが、フェルナンド殿下からの?」
「そう、俺再現するのにかなり頑張ったんだから!あ、これはそのまま手で掴んでガブッと齧って食べるものらしいよ?」
 そう、フェルナンド殿下が教えてくれたのはドーナツという異国の菓子。リア様の物には出来上がりに少しチョコレートをかけてある。ジークの前には何もかかっていないドーナツ、俺のは砂糖がまぶしてある。
 ジークフリートとレジナルドが見つめる中、セシリアは少し躊躇ったあと、ドーナツを手で掴み半分に割るとチョコレートのかかった所を可愛らしく齧った。
「どう?…っていうか、気に入ってくれたみたいだね。」
 嬉しそうにもう一口齧ったセシリアは口の中にドーナツがあるため声を出せないのかコクコク頷いてみせた。
「では私も…」
「俺も~!っ?!」
 不味い、思い切りよくかぶりついたら砂糖が喉に…! ゲフンゲフン
「レジー様!大丈夫ですか?」
 これは、あれか?フェルナンド殿下の陰謀か?いや、あの冷たい視線…ジークとフェルナンド殿下の共謀?恐ろしい…。粉砂糖…気を付けよう、今度から。
 レジナルドはセシリアに情けない顔で頷くと、目尻をそっと拭った。
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