騎士様は甘い物に目がない

ゆみ

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宿命のライバルと飴玉

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 貴族子息が一般的に剣の稽古を始めるのが許されるのは10歳になってから。レジナルドとジークフリートは二人で一緒に騎士団に通うようになってそろそろ一年が経とうとしていた。朝一番の訓練には早起きをして出ないといけないため、遅刻に自信のあった二人は自然と午後一番の稽古に出るようになっていた。

 今日も稽古が終わると騎士たちは何時もの部屋でそれぞれに身支度を整え、そのまま慌ただしくそれぞれの持ち場に戻って行く。体の大きい騎士たちに囲まれてまだ随分と体の小さいふたりはそれをぼんやりと眺めていた。

「殿下、レジー殿もそんなところで何をしておられるのです?」
 近くにいた騎士が声を掛けてくる。確かこの人は第一騎士団の副団長だ。
「私も鍛えたらあのくらい筋肉がつくのかと思って…」 
 ジークフリートは少し恥ずかしがりながらも正直に思っていることを打ち明けた。
「あ、ジークはそんなこと考えてたんだ?」
「レジー殿はどんな事を考えていたんですか?」
 父親ほどの歳である副団長は二人の横に座るとにこやかに尋ねた。
「今日は誰が来てるのかな~って。日によって違うでしょ?訓練に参加してる騎士も。どうしてなんですか?」
「皆が一斉に持ち場を留守にしては困るからですよ。」
「それだけ?」
「えぇ、他に何か?」
「いや…もっと俺達には分からない凄い理由を勝手に期待してただけで。」
「凄い理由とは何だ?」
「ほら、いつも同じ相手と訓練してると慣れちゃうから違う相手と組ませないとダメとか…。何か分かんないけど…。」
 副団長は上着のポケットから飴を取り出すと、それを二人にも分けてくれた。
「相手の癖を知り慣れることは悪いことではありません。沢山の人と訓練をするのもいい経験でしょう。ですがまだお二人にはその必要はありませんな。」
 副団長のくれた飴はオレンジの味がした。
「子供だから相手にならないって事?」
「そうですね、体格もまだまだ違いますし。まぁでも現時点で騎士団で一番強いのは殿下で決まりでしょうな。」
 レジナルドは驚いてジークフリートを見た。二人で一緒に訓練を始めたというのに一体いつの間にそこまでの差をつけられたというのだろうか…。
「レジー、勘違いするな。私には本気で来れないということだ。まだ体の小さい王太子相手に怪我でもさせてみろ?大事件だ。」
「あぁ…そういうこと?」
 ジークフリートと、副団長が何やら稽古の話を始めた所でレジナルドはふと気が付いた。
「ん?ちょっと待って?副団長はジークが一番って言ったよね?それって俺が本気でジークの相手をしても勝てないって言うことじゃない?」
「今のままだと、な?」
 身長も、勉強も、そしていつの間にか剣の腕までもがジークフリートには敵わなくなってきていることは分かっていたが…それが傍目にも分かってしまう程だということにレジナルドはショックを受けていた。
「俺、明日から早起きして朝の訓練も出ようかな…。」
 しょんぼりと項垂れたレジナルドが放ったあり得ない言葉に、ジークフリートは目を丸くしている。
 飴の包み紙を二人の手から受け取ってポケットに無造作に突っ込むと、副団長は大げさな手ぶりで話出した。
「殿下もレジー殿も、まだその必要はありません。いいですか?まだ11歳だというのに体に筋肉ばかりつけたのでは身長が伸びません。それに寝ている間に身体は修復され、成長するものです。ですから──」
「はい!」
 レジナルドは椅子から飛び上がって元気よく手を挙げた。
「俺ジークに勝てることあった!寝ることだ!」
「…」
「よし、決めた!極める!」
「レジナルド…お前って奴は…。」
 副団長はジークフリートと顔を見合わせると、ポケットからもう一つ飴を取り出しこっそりとジークフリートに手渡した。
「殿下もよいライバルをお持ちのようで…何よりです。まぁ何にしても今は丈夫な体を作ることが一番大事な時期ですから…。」
「…切磋琢磨する。」
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