王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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王女のわがまま

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 フェルナンドとリーナの婚約話はあれから一向に進まない。それどころかいわゆる顔合わせ以降リーナは一人で何か思い悩んでいるようだった。

「レジーの目が誰の方を向いているかなんて、分かっているわ。」
「…それは私も気付いていました。」
 リーナ王女の私室でジークフリートはこの話がどこの方向へ向かっていくのかと身構えていた。
「このままだと私はステーリアへ嫁ぐことになるでしょう。」
「…」
「ジーク、私がステーリアへ行くことが決まったら、レジーをくれない?」
 そう来たか…。レジナルドをステーリアへ連れて行くということだろうか?
「それは…どういうことでしょう?」
「何も愛人として伴うわけじゃないわ、安心して。ただ、レジーだって貴方たちの傍にずっと仕えているのはどうなのかしら?ずっとステーリアにいろと言うつもりはないわ。期間を区切ってでもいい、レジーは貴方たちからしばらく離れるべきなのよ。」
 リーナの言う事は最もらしく聞こえる。もちろんジークフリートもレジナルドの心の整理がつくまでしばらくの間セシリアから離した方がいいのかもしれないと思ったこともある。しかしわざわざ隣国にまで引き離すとは考えたこともなかった。
「姉上は…レジーに思いを伝えるつもりはないのですか?」
「…自分の立場はわきまえているつもりよ。」
「では、どう言い訳をしてレジーを連れて行くのですか?」
「言い訳…?」
「レジーは普通に考えても王女の輿入れについて行かせるような身分の者ではありません。それを私の手許からわざわざ引き抜いて連れて行くにはそれ相応の理由が必要でしょう?」
「ステーリアで護衛の技術を学ぶためとでもしておけばいいじゃない?」
「それならば輿入れに同行させなくても別で検討します。スコール公爵にも意見を聞くべきでしょうし──。」
「…」
 隣国から嫁いできた王女に公爵子息で元王太子側近の騎士がわざわざ付き従って来るなど醜聞以外の何物でもない。そんな誰の目にも明らかなことをしてしまえば、レジナルドはもうヴィルヘルムに戻って来ることなどできないだろう。
「姉上もレジーがうんと言わないと分かっていたから私に先に話したんでしょう?」
 リーナは何かを言い返そうとしたがそのままグッと言葉を飲み込んだ。小さい頃からよくある事だった。いつでもジークフリートの言う事は正しい。何時だって我儘でわからず屋なのはリーナの方であった。それを時には庇い、時には慰めてくれたのがレジナルドだ。レジナルドがいなければ、自分は弟を前にして何も言えずに逃げ出すことしか出来ない…。
 リーナは小さくため息をつくと弟の視線から逃れるように手元を見つめ、小さな声で呟いた。
「ねぇジーク、もし私が王女じゃなかったらレジーはこちらを見てくれたと思う?」
「…姉上」
「私はね、やっぱりただの幼馴染としてしか見てくれなかったと思うわ。」
「そんなことは…」
 ジークフリートはリーナがただ話を聞いて欲しいだけで答えなど求めてはいないのだと気が付いて開きかけた口を閉じた。
 レジナルドはセシリアから離れればその想いを断ち切ることができるのだろうか?ならばリーナの気持ちはどうなる?
 ──一体どうすればいいんだ。
 こういう時に本来頼るべきなのは母である王妃なのであろう。しかし王妃は離宮に篭ってもう長い間姉弟と直接会うこともなかった。表向きは公爵夫人が亡くなったことにショックを受け、声を失ったため離宮に篭っていることになっているが、本当のところは分からない。事件が起きてから随分時間も経過している。ジークフリートはもう王妃は随分前に声を取り戻しているのではないかと考えていた。
 しかし、今更そんなことを確かめてもどうしようも無い。とりあえず今は父上に頼るしかないのだろう。
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