ある日王子は国を出ることにした

ゆみ

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無駄話

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「お前……。外に出るようになってから、ますます性格歪んできたんじゃないか?まぁそんなことはどうでもいい。それよりも、ステーリア行きの船なら俺よりリュカかポールの方が簡単に手配できるんじゃないか?」

 マルセルは呆れたような顔をしてジャンと互いに顔を見合わせた。

「ロベール……。お前リュカの話を本当に聞いていなかったんだな。前にリュカが言っていただろう?ザールへの出入は厳しく管理されているからリュカにだって無理だ。それに、今回のステーリア行きの話はポールにはギリギリまで伏せておくつもりだ。」
「え?じゃあステーリアには一体誰がついて行くんだよ?俺はてっきりいつもの4人にリュカが入って5人で行くものだとばかり…。」

 ロベールの言葉にその通りだとジャンも同意した。

「ポールは置いていく。リュカは学園の仕事がどうにかなるのならば来てもらうつもりだ。ジャンは──」
「当然一緒に行く。往復するだけでも2ヶ月かかるんだ。その間こちらに一人だけ放置されても困る。」
「セバスはどうするんだよ?あの金物屋の親父の説得は?」
「……食堂の娘の件も含めてジャンにはまだ王都でやらなければならないことも多いんだがな。まぁ一緒に行くと言うのならばそちらはポールに引き継ぐよう手配しておこう。」

 ロベールはしばらく何かを考えていたが、ふと何かに気が付いたように首を傾げた。

「おい、待てよ?それじゃ 最低でも2か月はこの国に居ないってことだよな?学園はどうするんだ?もしかして辞めるのか?」

 マルセルとジャンは何を今更と言いたげにロベールを見つめた。

「そうだろう、普通に考えて。」
「まぁまだ入学したばかりだから辞めるのが嫌ならば休学しておくという手もあるが……。復学できるかどうかは何とも言えない。」
「……。」

 マルセルは黙り込んでしまったロベールに優しい眼差しを向けると少し声のトーンを落とした。

「忘れたか?私は本来この国から出て自由になりたかっただけなんだ。」
「……忘れるわけないだろ。」
「そうだな。だがこのままだと、公爵がどう動くか見極めているうちにこちらも身動きが取れなくなってしまうような気がするんだ。もちろんトロメリンとミレーヌの動きは引き続き注視しないといけないが。私はどさくさに紛れて国王の座を押し付けられるのだけはごめんなんだ。」

 ロベールは苦い顔をしたままでマルセルを見返した。マルセルの長年の思いも重々分かってはいるが……。

「それは……今じゃないと駄目なのか?」
「そうだ。」
「……。」

 ロベールは額に手をあてると大きくため息を付いた。見つめるジャンも未だ戸惑いを隠せない。

「マルセル、俺たちがこちらにいないのをいい事に、陛下と公爵が密かに何かを推し進めるという可能性もある、大丈夫なのか?」
「何か、とは?具体的には?」
「マルセルに王位継承権を再び与えるとか、ロベールとの婚約を無かったことにする……とか。」
「……私たちが帰国した時に仮にそういう話になっていたら、トロメリンに戻って来なければいい。そのままどこかへ逃げるか?」
「お前なぁ、簡単に言うなよ、そういう事。だいたいステーリアには宛があるのか?」
「あぁ、リュカがいるじゃないか?公爵家一族なんだ、何も問題ない。」
「リュカは国を出たんだろう?あっちだって訳ありなのかもしれないのにそれで本当に大丈夫なのか?」
「なのかもしれない、じゃなく普通に訳ありだと思う。でもまぁそれはそんなに重要な事ではない。こちらで言う所のロベールと同じだ。最大限利用させてもらう。」
「マルセル……。お前さぁ、絶対独裁者の素質あると思うよ。」
「それでよく陛下の庇護から外れて自由になりたいとか言えるよな。」

 ようやく決心が着いたように苦笑いを浮かべたロベールを見ながら、マルセルは密かに安堵のため息をついた。

「それよりもロベール。お前学園で何かやり残したことでもあるのか?まさか辞めるのを渋るとは思わなかった。」

 ロベールは決まりが悪そうに頬をポリポリとかくとマルセルから視線を逸らした。

「まぁな。俺だってたまには無駄口を叩く相手が欲しい時もあるんだよ。」
「へぇ……。」
「無駄口な……。」

 意外そうな顔をしたマルセルとジャンを見比べると、ロベールは吐き捨てるように言い放った。

「お前たちの言いたいことはだいたい分かってるよ!俺が何時でも無駄口ばかり叩いていると言いたいんだろう?そうじゃなくてさ。お前たち相手には喋れないことだってあるんだよ。」

 ジャンはしたり顔で頷くとマルセルを横目で見やった。

「そうかもしれないな。」
「で、その無駄口叩く相手というのは一体ロベールとどういう関係なんだ?」
「関係?もしかして女だと思ってるのか?」

 マルセルは少しガッカリした色を見せると興味を失ったように答えた。

「なんだ、男なのか?ロベールの事だから好みのタイプの子でも見つかったのかと思ったんだがな…。」
「そういう話を気安く出来るのは当たり障りのない相手ばかりだよ。」
「どうせ当たり障りのない相手に婚約者の惚気話でもしてたんだろ?まさか本人を目の前にしてそんな話は出来ないからな?」
「それは……まぁ確かにしたけど。婚約の件は広めろと言われたからその通りにしただけだろ?いいじゃないか?」
「別に──」

 ジャンはマルセルと再び顔を見合わせると苦笑した。

「誰も悪いとは言ってない。」
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