52 / 73
6
無駄話
しおりを挟む
「お前……。外に出るようになってから、ますます性格歪んできたんじゃないか?まぁそんなことはどうでもいい。それよりも、ステーリア行きの船なら俺よりリュカかポールの方が簡単に手配できるんじゃないか?」
マルセルは呆れたような顔をしてジャンと互いに顔を見合わせた。
「ロベール……。お前リュカの話を本当に聞いていなかったんだな。前にリュカが言っていただろう?ザールへの出入は厳しく管理されているからリュカにだって無理だ。それに、今回のステーリア行きの話はポールにはギリギリまで伏せておくつもりだ。」
「え?じゃあステーリアには一体誰がついて行くんだよ?俺はてっきりいつもの4人にリュカが入って5人で行くものだとばかり…。」
ロベールの言葉にその通りだとジャンも同意した。
「ポールは置いていく。リュカは学園の仕事がどうにかなるのならば来てもらうつもりだ。ジャンは──」
「当然一緒に行く。往復するだけでも2ヶ月かかるんだ。その間こちらに一人だけ放置されても困る。」
「セバスはどうするんだよ?あの金物屋の親父の説得は?」
「……食堂の娘の件も含めてジャンにはまだ王都でやらなければならないことも多いんだがな。まぁ一緒に行くと言うのならばそちらはポールに引き継ぐよう手配しておこう。」
ロベールはしばらく何かを考えていたが、ふと何かに気が付いたように首を傾げた。
「おい、待てよ?それじゃ 最低でも2か月はこの国に居ないってことだよな?学園はどうするんだ?もしかして辞めるのか?」
マルセルとジャンは何を今更と言いたげにロベールを見つめた。
「そうだろう、普通に考えて。」
「まぁまだ入学したばかりだから辞めるのが嫌ならば休学しておくという手もあるが……。復学できるかどうかは何とも言えない。」
「……。」
マルセルは黙り込んでしまったロベールに優しい眼差しを向けると少し声のトーンを落とした。
「忘れたか?私は本来この国から出て自由になりたかっただけなんだ。」
「……忘れるわけないだろ。」
「そうだな。だがこのままだと、公爵がどう動くか見極めているうちにこちらも身動きが取れなくなってしまうような気がするんだ。もちろんトロメリンとミレーヌの動きは引き続き注視しないといけないが。私はどさくさに紛れて国王の座を押し付けられるのだけはごめんなんだ。」
ロベールは苦い顔をしたままでマルセルを見返した。マルセルの長年の思いも重々分かってはいるが……。
「それは……今じゃないと駄目なのか?」
「そうだ。」
「……。」
ロベールは額に手をあてると大きくため息を付いた。見つめるジャンも未だ戸惑いを隠せない。
「マルセル、俺たちがこちらにいないのをいい事に、陛下と公爵が密かに何かを推し進めるという可能性もある、大丈夫なのか?」
「何か、とは?具体的には?」
「マルセルに王位継承権を再び与えるとか、ロベールとの婚約を無かったことにする……とか。」
「……私たちが帰国した時に仮にそういう話になっていたら、トロメリンに戻って来なければいい。そのままどこかへ逃げるか?」
「お前なぁ、簡単に言うなよ、そういう事。だいたいステーリアには宛があるのか?」
「あぁ、リュカがいるじゃないか?公爵家一族なんだ、何も問題ない。」
「リュカは国を出たんだろう?あっちだって訳ありなのかもしれないのにそれで本当に大丈夫なのか?」
「なのかもしれない、じゃなく普通に訳ありだと思う。でもまぁそれはそんなに重要な事ではない。こちらで言う所のロベールと同じだ。最大限利用させてもらう。」
「マルセル……。お前さぁ、絶対独裁者の素質あると思うよ。」
「それでよく陛下の庇護から外れて自由になりたいとか言えるよな。」
ようやく決心が着いたように苦笑いを浮かべたロベールを見ながら、マルセルは密かに安堵のため息をついた。
「それよりもロベール。お前学園で何かやり残したことでもあるのか?まさか辞めるのを渋るとは思わなかった。」
ロベールは決まりが悪そうに頬をポリポリとかくとマルセルから視線を逸らした。
「まぁな。俺だってたまには無駄口を叩く相手が欲しい時もあるんだよ。」
「へぇ……。」
「無駄口な……。」
意外そうな顔をしたマルセルとジャンを見比べると、ロベールは吐き捨てるように言い放った。
「お前たちの言いたいことはだいたい分かってるよ!俺が何時でも無駄口ばかり叩いていると言いたいんだろう?そうじゃなくてさ。お前たち相手には喋れないことだってあるんだよ。」
ジャンはしたり顔で頷くとマルセルを横目で見やった。
「そうかもしれないな。」
「で、その無駄口叩く相手というのは一体ロベールとどういう関係なんだ?」
「関係?もしかして女だと思ってるのか?」
マルセルは少しガッカリした色を見せると興味を失ったように答えた。
「なんだ、男なのか?ロベールの事だから好みのタイプの子でも見つかったのかと思ったんだがな…。」
「そういう話を気安く出来るのは当たり障りのない相手ばかりだよ。」
「どうせ当たり障りのない相手に婚約者の惚気話でもしてたんだろ?まさか本人を目の前にしてそんな話は出来ないからな?」
「それは……まぁ確かにしたけど。婚約の件は広めろと言われたからその通りにしただけだろ?いいじゃないか?」
「別に──」
ジャンはマルセルと再び顔を見合わせると苦笑した。
「誰も悪いとは言ってない。」
マルセルは呆れたような顔をしてジャンと互いに顔を見合わせた。
「ロベール……。お前リュカの話を本当に聞いていなかったんだな。前にリュカが言っていただろう?ザールへの出入は厳しく管理されているからリュカにだって無理だ。それに、今回のステーリア行きの話はポールにはギリギリまで伏せておくつもりだ。」
「え?じゃあステーリアには一体誰がついて行くんだよ?俺はてっきりいつもの4人にリュカが入って5人で行くものだとばかり…。」
ロベールの言葉にその通りだとジャンも同意した。
「ポールは置いていく。リュカは学園の仕事がどうにかなるのならば来てもらうつもりだ。ジャンは──」
「当然一緒に行く。往復するだけでも2ヶ月かかるんだ。その間こちらに一人だけ放置されても困る。」
「セバスはどうするんだよ?あの金物屋の親父の説得は?」
「……食堂の娘の件も含めてジャンにはまだ王都でやらなければならないことも多いんだがな。まぁ一緒に行くと言うのならばそちらはポールに引き継ぐよう手配しておこう。」
ロベールはしばらく何かを考えていたが、ふと何かに気が付いたように首を傾げた。
「おい、待てよ?それじゃ 最低でも2か月はこの国に居ないってことだよな?学園はどうするんだ?もしかして辞めるのか?」
マルセルとジャンは何を今更と言いたげにロベールを見つめた。
「そうだろう、普通に考えて。」
「まぁまだ入学したばかりだから辞めるのが嫌ならば休学しておくという手もあるが……。復学できるかどうかは何とも言えない。」
「……。」
マルセルは黙り込んでしまったロベールに優しい眼差しを向けると少し声のトーンを落とした。
「忘れたか?私は本来この国から出て自由になりたかっただけなんだ。」
「……忘れるわけないだろ。」
「そうだな。だがこのままだと、公爵がどう動くか見極めているうちにこちらも身動きが取れなくなってしまうような気がするんだ。もちろんトロメリンとミレーヌの動きは引き続き注視しないといけないが。私はどさくさに紛れて国王の座を押し付けられるのだけはごめんなんだ。」
ロベールは苦い顔をしたままでマルセルを見返した。マルセルの長年の思いも重々分かってはいるが……。
「それは……今じゃないと駄目なのか?」
「そうだ。」
「……。」
ロベールは額に手をあてると大きくため息を付いた。見つめるジャンも未だ戸惑いを隠せない。
「マルセル、俺たちがこちらにいないのをいい事に、陛下と公爵が密かに何かを推し進めるという可能性もある、大丈夫なのか?」
「何か、とは?具体的には?」
「マルセルに王位継承権を再び与えるとか、ロベールとの婚約を無かったことにする……とか。」
「……私たちが帰国した時に仮にそういう話になっていたら、トロメリンに戻って来なければいい。そのままどこかへ逃げるか?」
「お前なぁ、簡単に言うなよ、そういう事。だいたいステーリアには宛があるのか?」
「あぁ、リュカがいるじゃないか?公爵家一族なんだ、何も問題ない。」
「リュカは国を出たんだろう?あっちだって訳ありなのかもしれないのにそれで本当に大丈夫なのか?」
「なのかもしれない、じゃなく普通に訳ありだと思う。でもまぁそれはそんなに重要な事ではない。こちらで言う所のロベールと同じだ。最大限利用させてもらう。」
「マルセル……。お前さぁ、絶対独裁者の素質あると思うよ。」
「それでよく陛下の庇護から外れて自由になりたいとか言えるよな。」
ようやく決心が着いたように苦笑いを浮かべたロベールを見ながら、マルセルは密かに安堵のため息をついた。
「それよりもロベール。お前学園で何かやり残したことでもあるのか?まさか辞めるのを渋るとは思わなかった。」
ロベールは決まりが悪そうに頬をポリポリとかくとマルセルから視線を逸らした。
「まぁな。俺だってたまには無駄口を叩く相手が欲しい時もあるんだよ。」
「へぇ……。」
「無駄口な……。」
意外そうな顔をしたマルセルとジャンを見比べると、ロベールは吐き捨てるように言い放った。
「お前たちの言いたいことはだいたい分かってるよ!俺が何時でも無駄口ばかり叩いていると言いたいんだろう?そうじゃなくてさ。お前たち相手には喋れないことだってあるんだよ。」
ジャンはしたり顔で頷くとマルセルを横目で見やった。
「そうかもしれないな。」
「で、その無駄口叩く相手というのは一体ロベールとどういう関係なんだ?」
「関係?もしかして女だと思ってるのか?」
マルセルは少しガッカリした色を見せると興味を失ったように答えた。
「なんだ、男なのか?ロベールの事だから好みのタイプの子でも見つかったのかと思ったんだがな…。」
「そういう話を気安く出来るのは当たり障りのない相手ばかりだよ。」
「どうせ当たり障りのない相手に婚約者の惚気話でもしてたんだろ?まさか本人を目の前にしてそんな話は出来ないからな?」
「それは……まぁ確かにしたけど。婚約の件は広めろと言われたからその通りにしただけだろ?いいじゃないか?」
「別に──」
ジャンはマルセルと再び顔を見合わせると苦笑した。
「誰も悪いとは言ってない。」
0
あなたにおすすめの小説
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました
当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。
リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。
結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。
指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。
そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。
けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。
仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。
「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」
ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる