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良いことしてみたら…
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飯塚亮太、18歳。
中華屋の息子。
まだまだこれからの長い人生、面白おかしく生きていこうと思ってた。
……なのに、なんでこうなった?
――あれは、今から1時間ほど前の話だ。
学校からの帰り道。
自転車をこぎながら、今日の晩ごはんを考えていた。
麻婆豆腐が一番好き。
でも今日は餃子もいいな。
帰ったら四食目だな、なんて考えながら、いつもの道を走っていた。
そのとき、ふと横の溝が目に入った。
――子供が、溺れそうになっている。
考えるより先に体が動いた。
自転車を放り出し、溝に飛び込む。
助け上げた、その瞬間。
「……やばい」
人生で初めて、足が攣った。
今じゃなくてもよくない?
痛みに耐えきれず暴れているうちに、意識が遠のいて――
⸻
気がつくと、真っ白な空間にいた。
なぜか、こたつに入っている。
手にはみかん。
状況が理解できないまま、勧められるがまま食べている。
これで四つ目だ。
目の前には、真っ白なおじいちゃんが座っていて、静かにお茶を啜っている。
「……え?」
視線をずらすと、テレビがあった。
そこには、自分が映っている。
学校帰り、子供を助け、足が攣って暴れて――ここに来たらしい。
テレビの中では、助けた子供が母親らしき人に泣きながら抱きしめられていた。
「……よかった」
その瞬間、胸が少し軽くなった。
「俺、親より先に死ぬとか……親不孝だよな」
すると、おじいちゃんが口を開いた。
「このあと、お主は“勇敢な少年”としてニュースになるのじゃ」
「中華屋も今以上に繁盛する。
両親は悲しむが、忙しさに追われながら、人生を全うするじゃろう」
……ちょっと待って。
「え、俺は?」
おじいちゃんは、みかんを一つ取りながら言った。
「本題じゃがな」
「お主、良いことをして命を落とした。
そこでじゃ――」
「ワシを神と崇める世界に、転生できるがどうする?」
「魂のまま無に還り、やり直すか。
今の魂を持ったまま、転生するかじゃ」
頭が追いつかない。
「……それって」
俺は、思わず聞いていた。
「好きなだけ食べられる食べ物屋さんとか、なれますか?」
食べることは、俺にとって一番大事だ。
一日六食とか食べたい。
好きなだけ食べたい。
でも、できれば太りたくない。
……いや、やっぱり食べる方が大事だ。
「無いことはないが」
神様は俺を見る。
「其方、料理はできるか?」
「はい、できます」
即答だった。
「なら大丈夫じゃな」
よく分からないが、納得したらしい神様は、満足そうに頷いた。
「ワシの助けが必要なときは、
ワシを思いながら眠りにつきなさい。夢で会おう」
「……はい」
そう答えた瞬間、淡い光に包まれて――
⸻
次に目を開けると、河原に立っていた。
澄んだ水。
気持ちのいい風。
でも――
「……俺、5歳くらいじゃない?」
そう思った瞬間、記憶が一気に流れ込んでくる。
五歳までの人生。
まるで早送りで生きたような感覚。
「……違う人に入った?」
いや、違う。
これは、俺の人生だ。
水汲みに来ていたことも思い出した。
そして、神様が「料理ができるか」と聞いた理由も。
――この世界、飯がまずい。
魔獣肉を焼くだけ。
硬いパン。
軽く焼いただけの、ゴリゴリしたじゃがいも。
どこで食べても、たいして美味くない。
「……なるほどな」
水を汲み終え、家に向かいながら考える。
今ある材料で、何が作れる?
――さて。
まずは、腹ごしらえからだ。
中華屋の息子。
まだまだこれからの長い人生、面白おかしく生きていこうと思ってた。
……なのに、なんでこうなった?
――あれは、今から1時間ほど前の話だ。
学校からの帰り道。
自転車をこぎながら、今日の晩ごはんを考えていた。
麻婆豆腐が一番好き。
でも今日は餃子もいいな。
帰ったら四食目だな、なんて考えながら、いつもの道を走っていた。
そのとき、ふと横の溝が目に入った。
――子供が、溺れそうになっている。
考えるより先に体が動いた。
自転車を放り出し、溝に飛び込む。
助け上げた、その瞬間。
「……やばい」
人生で初めて、足が攣った。
今じゃなくてもよくない?
痛みに耐えきれず暴れているうちに、意識が遠のいて――
⸻
気がつくと、真っ白な空間にいた。
なぜか、こたつに入っている。
手にはみかん。
状況が理解できないまま、勧められるがまま食べている。
これで四つ目だ。
目の前には、真っ白なおじいちゃんが座っていて、静かにお茶を啜っている。
「……え?」
視線をずらすと、テレビがあった。
そこには、自分が映っている。
学校帰り、子供を助け、足が攣って暴れて――ここに来たらしい。
テレビの中では、助けた子供が母親らしき人に泣きながら抱きしめられていた。
「……よかった」
その瞬間、胸が少し軽くなった。
「俺、親より先に死ぬとか……親不孝だよな」
すると、おじいちゃんが口を開いた。
「このあと、お主は“勇敢な少年”としてニュースになるのじゃ」
「中華屋も今以上に繁盛する。
両親は悲しむが、忙しさに追われながら、人生を全うするじゃろう」
……ちょっと待って。
「え、俺は?」
おじいちゃんは、みかんを一つ取りながら言った。
「本題じゃがな」
「お主、良いことをして命を落とした。
そこでじゃ――」
「ワシを神と崇める世界に、転生できるがどうする?」
「魂のまま無に還り、やり直すか。
今の魂を持ったまま、転生するかじゃ」
頭が追いつかない。
「……それって」
俺は、思わず聞いていた。
「好きなだけ食べられる食べ物屋さんとか、なれますか?」
食べることは、俺にとって一番大事だ。
一日六食とか食べたい。
好きなだけ食べたい。
でも、できれば太りたくない。
……いや、やっぱり食べる方が大事だ。
「無いことはないが」
神様は俺を見る。
「其方、料理はできるか?」
「はい、できます」
即答だった。
「なら大丈夫じゃな」
よく分からないが、納得したらしい神様は、満足そうに頷いた。
「ワシの助けが必要なときは、
ワシを思いながら眠りにつきなさい。夢で会おう」
「……はい」
そう答えた瞬間、淡い光に包まれて――
⸻
次に目を開けると、河原に立っていた。
澄んだ水。
気持ちのいい風。
でも――
「……俺、5歳くらいじゃない?」
そう思った瞬間、記憶が一気に流れ込んでくる。
五歳までの人生。
まるで早送りで生きたような感覚。
「……違う人に入った?」
いや、違う。
これは、俺の人生だ。
水汲みに来ていたことも思い出した。
そして、神様が「料理ができるか」と聞いた理由も。
――この世界、飯がまずい。
魔獣肉を焼くだけ。
硬いパン。
軽く焼いただけの、ゴリゴリしたじゃがいも。
どこで食べても、たいして美味くない。
「……なるほどな」
水を汲み終え、家に向かいながら考える。
今ある材料で、何が作れる?
――さて。
まずは、腹ごしらえからだ。
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