デブの俺、異世界行ったらイケメン最強!

ゆぃ♫

文字の大きさ
7 / 7

塩2

しおりを挟む
「謝らなくていいんだよ」
困ったように笑いながらロイが言い、パンと手をひと叩きした。
「さ、進もうか」
一気に空気が切り替わる。
……ああ、こういうところがリーダーなんだな。
前世も合わせれば二十三歳の俺。
年も近そうなのに、ロイはずっと大人っぽく見える。
「はーい」
つい、子どもみたいな返事をして、素直についていく。
さっきの獅子は、本当に急すぎた。
怖すぎて、今さらながら背筋がぞわっとする。
今度は油断しない。
魔力探知を使って、周囲を警戒する。
普段、裏山を探索するときは鑑定しながら歩いているから、魔物も事前に見つけられていた。
でも今日は「どうせ戦闘になるし、採取もできないだろう」と思って、何もしていなかった。
……それが裏目に出た。
反省しながら魔力探知を続けると、
事前に分かるだけで、動きやすさが全然違う。
結果的に、かなりサクサク進めた。
「もうすぐ森を抜けるよ。抜けたら弁当にしよう。
それにしても……本当に君はすごいね。すごく助かったよ」
ロイがそう言ってくれる。
「また一緒に来てほしいくらいだ。
魔物の報酬は、君の分も当分にしよう」
……え。
内心、すごく嬉しい。
でも同時に、申し訳なさも湧いてくる。
「全然倒してないのに、いいんですか?」
「もちろんだよ。
周囲を警戒して、あれだけ正確な距離まで分かっていたからこそ、こんなに楽に進めたんだ」
……そっか。
そう言ってもらえると、胸の奥がじんわり温かくなる。
「ありがとうございます」
スーとジャックは相変わらず無口だけど、
スーは何かをぶつぶつ呟いているし、
ジャックは……なんだかやたらキラキラした目で俺を見ている。
ちょっと怖い。
そんなこんなで弁当を食べ、
すごく喜んでもらいながら、ようやく港町に着いた。
――ここが、冒険者の町。
初めて見る冒険者ギルド。
いかつい人がたくさんいて、
丸太で作られた建物は、よく見ると無数の傷がついている。
歴戦、って感じだ。
ロイに冒険者登録を勧められた。
「冒険者になるつもりはないんですけど……」
そう言ったんだけど、
今回の報酬は子どもが持ち歩くには高額だから、登録してギルドに預けた方がいいと言われた。
……なんか、うまく丸め込まれてないか?
そう思いつつ説明を聞いてみると、
仕組みは免許証+銀行みたいな感じで、かなり使い勝手が良さそうだった。
結局、登録することに。
十五歳までは親の許可が必要で、仮登録扱いになるけど、
内容はほぼ変わらないらしい。
許可がない場合、ギルド側がクエストを受けない判断をする、という仕組みだそうだ。
登録が終わると、革のブレスレットにシルバーのタグが付けられた。
銀行カード的な役割も果たすらしく、盗難防止のため外せない。
……便利だな。
「一時間後にギルド集合ね」
そう言われて、しばらく自由行動。
ギルドで場所を聞いておいた、
海と金物屋に行くことにした。
まずは海。
ギルドから真っ直ぐ海側へ下ると壁に突き当たる。
それを左に行き、開けた場所の階段を降りると――
「おお……」
綺麗な海だ。
家の方角を確認して、
次は金物屋。
海から見て、ギルドを左に。
ずーっと進んで、Y字路をさらに左。
突き当たりが金物屋だ。
扉を開けると、綺麗な鈴の音。
「はい、何いるの?」
「蛇口が欲しいです」
「蛇口だけかい? 付与するか?」
「普通のでいいです。後で付与するので」
店員はフン、と頷いて、五種類ほどカウンターに並べた。
錆びないのがいいな、と思ったら、
錆止めを付与すればどれでも問題ないらしい。
そもそも水が出るものだから、ほぼ錆びないとも。
悩んだ末、
持ち手が可愛い、口の長い蛇口を選んだ。
ギルドに戻ると、ロイたちはもう来ていた。
「あれ? 何も買わなかったの?」
「買いましたよ。ちっちゃい部品なんです」
そう言って、
“それ以上は聞かないで”って感じで、にこっと笑う。
察してくれたみたいで、
「そっか。じゃあ帰ろうか。暗くなる前に」
すぐ帰路についた。
帰りは探知のおかげでスムーズ。
魔獣もそこそこ狩れた。
魔獣の取り分はギルドに預けてくれるらしく、
また来たときにブレスレットで確認してくれと言われた。
感謝を伝えて別れようとすると、
ロイたちは食堂に向かうようだった。
俺は家に戻り、裏へ。
蛇口を付けられるくらいの壁と、
簡単なコンロ台のようなものを作る。
蛇口をはめ、
「海からここにつながっている」イメージを強く思い浮かべ、魔力を込める。
……そっと、蛇口をひねる。
「おお……!」
水が出た。
……海水、かな?
舐めてみる。
「ウェ。塩辛い」
思わず顔をしかめつつ、
感激で笑ってしまう。
鍋いっぱいに海水を汲み、クリーン。
横で火魔法を使い、少し煮詰める。
白っぽいものが浮いてきたらクリーン。
さらに煮詰めて、水分がなくなる少し前でこす。
――塩と苦汁、完成。
これで塩が手に入った。
豆腐も作れる。
「……やったな、俺」
小さく呟いて、
胸の奥がじんと熱くなった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

ヤンデレ女神と征く開拓スローライフ。

山椒
ファンタジー
両親に、友達に、恋人に、嫁に裏切られ続けた男、神室千照は絶望して自ら命を絶った。 すべてが終わるという安堵感であったが次に目覚めた時には女神が目の前にいた。 千照のことをずっと見ていた女神、アマテラスは千照に異世界転生を提案する。 まだ人生に未練があった千照はそれを受け入れ、二度目の人生を送ることになる。 だが千照は知らなかった。千照にはとてつもない才能が秘められていることを。 千照は知らなかった。アマテラスがヤンデレであることを。 千照は知らなかった。彼を裏切らないものはとてつもない人格の持ち主であることを。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

処理中です...