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聖霊メイドと勇者襲来

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 昨日の、ガイアスにSSランク冒険者に推薦された話だが、まぁ、これは結局受けることになった。あれから三十分くらい話していたのだが、結局なったほうが恩恵はいいしなっておくことにした。…とは言っても緊急依頼の束縛が強くなるらしいがな。緊急依頼は、一般人や町や国に危険が及んだ時、そこのギルドが出すその危険に対応できるランクの冒険者を強制的に呼び出す。まぁ、これも依頼達成時の報酬はかなりでかいし、危険ではあるが十分のメリットがある。大暴走の報酬はその後に渡された。合計で、光金貨三十五枚になった。

 そして今、ギルドから、報酬でもらった家に向かっている。前までいた宿は、引き払った。…と言っても、またご飯を食べに行こうと思っている。あそこはレストランも兼ねているからな。

「…これかー。でかいな。」

 探し始めて数分、ギルドから鍵と一緒にもらった地図を頼りに家を探すと、一等地と呼ばれる、普通は上位貴族が住むような地区で、土地化がかなり高いところの巨大な屋敷を見つけた。まあ、俺の今回の場合、全部ギルド(&国)の負担だがな。それと、SSランクになる前に、この国の国王に謁見するらしい。ここは一応この国の王都で、王様が住む巨大な城があるが…正直あまり興味がない。普通の西洋系の城だしな。日本の城だとまだテンションが上がるのだがなぁ…。それは仕方ないな。でも、ここから東に行った国に日本のような国があるみたいだし、ここである程度の拠点と財源を確立したら行こうと思っている。まぁ、拠点は今目の前にあるし、財源も、俺がSSランクとして動けば数年は遊んで暮らせる量の金が1ヶ月もなく稼げる。

「ん~この屋敷の内装まで格安でつけてもらったのも嬉しかったな。」

 じつは、ギルドからもらえたのは家と土地で、内装品までは含まれてない。だが、実はこの家にはお化けがついているみたいなのだ。…つまり、訳ありで売れない家をそれなりの金をもらって渡せると考えた商業ギルドが、つけてくれたのだ。…まぁ、格安とは言っても、一般人だと数ヶ月分の給料が吹っ飛んでいるのだが。

「まぁ、お化けが出るのは夜からみたいだし、家の中を片付けておくか。…この棚、邪魔だな。この机はあっちに置いておこうか。んーまずは、家具の整理だな。」

 その後、一時間ほどで家具の整理をした。なんか、妙に高級そうなものは大体売った。いちおう、俺の中にも日本の感覚があって、キラキラしたものがあると落ち着かない。まぁ、日本人全員がそうかどうかは知らんがな。少なくとも、俺は静かで小さな自然があるほうがいい。何なら、庭をちょっと加工して小川でも流そうかな?今度。

「さてと、晩御飯は…せっかくだし、何か作るか。えっと、今ある食材は…醤油、ソル(お酢)、リナ(今さっきついでに買ってきた米のようなもの)、大量の魔物の肉(ギルドで売らなかった大暴走の分)、あとは…塩、砂糖くらいか?あ、油もだな。…今日はステーキにするか~。」

 そして、調理が終わり、飯を食べている時だった。周囲のものが揺れて、音を出し始めた。最初は小さかったが、どんどん音が大きくなり、今ではガタガタと揺れている。…そうだ、今度食器も買わないとな。後、調理道具。今回はここにあったもので何とかなったが、最低限みたいで、少ないしな。

「とりあえず、うるさいな。せっかくご飯を食べているのに、うるさいな~。」
《う、うるさい…?…あっ!……う、ウ~ラ~メ~シ~ヤ~。キャハハハハハハハ。》
「…どうやら、騒音うるさい元凶であろう幽霊の登場だな。つか、最初の方メンタル弱そうだったな…。」
《お、大きなお世話だ!っ。ふふふふふふふふ。》

 あ、あの…全然怖くないんだが…。というか、最初の方の反応がおかしかったから、だな。その…怖さというより、滑稽さが笑いを誘うんだが…。全力で取りなしてるところ悪いけど、笑い声がめっちゃ恥ずかしそうだからな?

「とりあえず、出てこい。人の飯の邪魔をしたやつはここで正座と相場が決まっている。」
《それ出てくるとお思いですか?》
「急に敬語になったな。《あなたが殺気を飛ばすからでしょ!》…まぁ、そうかと思ったが。お化けに殺気って効くんだな。一つ勉強になったわ。」
《あの…とりあえず、その殺気やめてくれません?存在が消滅の危機くらい怪しくなってきたんですが…ああもう!強くしないでください!出ていきます。出ていきますから!》

 キャラ、変わったな。ていうか、殺気で消滅って…。そして出てきたのは、どこも透明ではない、普通の人間の少女だった。…いや、耳が少し尖っているか?と言うか、幽霊って透明じゃなかったっけ?

「初めまして。ワタシはこの家の精霊です。…不本意ですが、これからよろしくお願いします。」
「ああ、よろしく……ってえ?」
「あ、説明不足でした。わたしたち、家精霊ハウスエレメンタルは、新たな主人になれる素質があるかを確認する為の試練を来訪者に行います。そして、認められたものだけがその家に入れるのですが…。とりあえず、さっきのがその試練と思ってくれていいです。」
「で、俺はここにいていいと。なら、お前、名前は?いつまでも、これお前呼びなのは嫌だろ?」
「…ワタシに名前はありません。」
「…そうか。じゃあ今日からお前はエメレだ。エレメンタルから取った。」
「………!!ありがとうございます!…これは…。」

 名前を決めた途端、エメレが光り始める光が収まると…絶世の美女になっていた。…は?え、俺名前つけただけだよな?て言うか、魔力がごっそりなくなっているし。一度の魔法使用でここまで消費するのは、初めてかもしれないな。…そういえば、エメレが持っている魔力の波動、俺に似てないか?

「ありがとうございます。ご主人様との名付けの契約で、ワタシは家聖霊の最上位種、【絢爛なる城の守護者】に進化しました。」
「そうか。精霊の最上位とは、よかったな。よかったな。で、エメレは何ができるんだ?それと、俺は別にシンで良いぞ?」
「ああ。そうですね…家事全般に、家の中にいる限り、世界を的に回してもご主人様を守り通すことができるでしょう。」

 あ、シンで良い云々の話はスルーしやがった。…まぁ、呼びやすいならこのままでも良いか。と言うか、世界を敵に回して持って…………いや、できそうだな。見た感じ、完全に魔力を出しているわけではないが、それでもそこらの魔術師とは比べものにならないだろう今の俺よりも魔力が多い。

「あ、そうだ。エメレ、今使える魔法を全部魔法陣として描いてくれないか?」
「……わかりました。明日の朝までには書き出しておきます。」
「あ、それと、エメレの分の家具はどうする?」
「……では、ベッドと棚を用意してくれませんか?…あ、それと調理器具に…ほかの道具もあとで書き出しておきます。」
「助かる。ありがとう。」
「…っ。ど、どういたしまして。」
「。どうした?」
「い、いえ……(やばい、シン様、笑顔がカッコ良すぎる…)。」
「?そうか?まぁ、良いか。とりあえず、今のエメレに敵意がないなら良いか。」
「いや、あの殺気を喰らったあとでまだ敵意を持てるのは、ワタシの知る限り、いませんよ?」

 そうか?これくらいだったら、前世の友人だった、雷装地獄炎天流剣術の使い手だった友人や、他にも三人ほど、俺の殺気に余裕で耐えれる奴がいたぞ?…殺気には耐えるけど、剣術勝負の時は俺が勝ったが。

「その顔は、耐えれる知人がいるようですね。…ご主人様って、人脈も化け物ですねぇー。」

 いいのか?「ご主人様」に「化け物」を言ってしまうのは、あなたの頭の中で許可されるものなのか…?まぁ、とりあえず、俺は優秀っぽい使用人を見つけれたようだ。…元幽霊だが。まぁ、もう敵意もなさそうだし、別に問題ではないだろう…そう思っていたが、次の日の朝、俺は、その優秀さに仰天することになる。

______sideエメレ______

 ワタシは、どこにでも…はいないかもしれませんけど、普通の家精霊。ワタシたち家精霊は主人が長い間いないと、存在が不安定になって、いずれ消滅するんですけど…それで結構危なくなってきているときに、面白そうな人が来ました。その人は黒髪黒目で…いや、目は黒の周りは薄い青が混じっているみたいだけど…とりあえず、そんな人が来ました。普通の服を着他普通の人に見えましたけど…腰にある剣が尋常じゃない覇気を放っています。ワタシは精霊だから、余計にその強大な魔力を感じられます。…しかも、その人本人も、今のワタシを軽く凌駕する魔力を持っていますね。

 そして、夜。ワタシは、その人に散々色々言われた挙句、その人に、ワタシの試練(?)をクリアされました。……自滅していた節があったのは、気にしたら負けです。

 でも、その人に名前をつけてもらったおかげで、その人の魔力の恩恵にあずかることができたました。それにより、ワタシは進化に進化を繰り返して…瞬間的に精霊として…いや、それを凌駕した「聖霊」としても最上位の種族につきました。これにより、この世界惑星内を感知できるようになりました。そして、その中でワタシより強いものが(目の前にいる尋常じゃない、今のワタシにとっても化け物以外)一人もいないことを知ると同時に…ワタシのご主人様を害しようとするものがいることを知りました。そんなこと、ワタシが許すわけがないでしょう。愚か者。ワタシがこの世界の絶望を味わわせてもらいましょう…と、その前に、ご主人様の言われた魔法陣と家具などのメモを書いておかなければ…。

 これから、楽しくなりそうです。…にしても、魔法陣は、何に使うのでしょうか?気になります。
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