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超巨大組織、[楽園]

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「こんにちは。」
「おやおや、こんにちわ。元気だねぇ。」

 買い物する為にスーパーマーケットに行く途中、顔見知りのおばあちゃんに会った。このお婆ちゃんは、三年前くらいに知り合った。初めは何となく手助けするくらいの仲だったけど、そのうちに少しずつ仲良くなっていき、今ではたまに家庭菜園で育てている野菜のお裾分けや一緒にお茶を飲んだりしている。

 お婆ちゃんの歩き方が少し不自然になっていたので、失礼だと思いながらも【零階位・真眼real eye】という、情報を読み取る魔法を使うと、足に下肢静脈瘤という病気が出ていた。そこで、お婆ちゃんと別れたが最後に【零階位・発動遅延・完全回復パーフェクトリザレクション】を仕掛けておいた。発動遅延系は術を展開した後、どれくらい後でそれが発動するか決めれる、【零階位魔法】の発展系の一つだ。完全回復パーフェクトリザレクションの名は、昔の預言者の復活から来ている。その名の通り、回復系統に関しては最上位の魔法だ。

「さて、じゃあ買い物が終わったな。ルー、どこか行きたい所とか有るか?」

 買い物を終わらせた後、肩に止まっていたルーに声を掛ける。ルーには一応、【完全魔法】の“認識阻害”という術をかけているから、周りの人には見えていない筈だ。

 話しかけられたルーは、少し考えた後に川に行こうと言った。見せたい景色があるそうだ。言われるがままについていくと、川についた。そこを登っていくと古墳だと言われる丘があり、そこを登って行くと、街が一望できる場所に着いた。下の方で川が流れている。奥の方には神社が見え、ちょうど日が落ちていくところだった。

〈よく見ておけ。一瞬だけだぞ。〉

 ルーがそう言い終わるかどうか、こちら側を向いている神社の鳥居に陽が、差した。本殿の上から覗く太陽が、鳥居と本殿の屋根との間から、火を差し、その光が下にある川に反射していた。その後、本当に少しの間だけ、今や空高くに登り始めている月の光が、日の光の上に、反射した。俺たちは、その間微動だにしなかった。その後、奇跡が終わって、降り始める頃。ルーがポツリと言った。

〈我は、あの奇跡を他の人と見るのが夢だったが、今叶った。〉

 どうやら、ルーは良くも悪くも人とは格が違く、一緒に景色を見るなんて畏れ多いとずっと一人で、あの景色を見ていたそうだ。

「そうか。ならば、今回からはその夢が毎回叶う事になるだろうな。」

 そう返すと、ルーはふっと笑って、最後にポツリと、「ありがとう」と、そう言った気がした。この日、俺はルートの絆が深まったと思えて、とても嬉しかった。


_____???side_____

 _____では、この作戦で行く。いいな?」
「おう。しくじるなよ。」

 ここは、絶対に知られない場所。とある組織が拠点とする場所だった。ここで、四人の人が資料を見ながら話し合っていた。周りで立っている人が、四人に敬意を払っていることから、高い位にいる者だろう。ちょうどいま、この話し合いが終わったようだ。四人が立ちあがろうとした矢先、一人の男が入って来た。四人は、さっと跪きその者を歓迎すると同時に、最大限の敬意を払っている。

「作戦が、決まった様だな。」
「「「「はっ!」」」」
「うむ。そのまま成功させよ。この計画を進める第一歩となる。」
「「「「仰せのままに。」」」」
「では、行け。己の責務を全うせよ。」

 四人は、音もなく消えた。だが、残った一人の男は、それが当たり前であるかの様に平然としている。

「さて、何が出るか。何も起こらなければいいのだが…」

 男の言葉が、部屋の中で木霊した。
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