秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に

カイエ

文字の大きさ
5 / 65
一章「秘密基地をダンジョンに」

#4

しおりを挟む
 ぼくたちは、さっそく秘密基地の準備をはじめた。

 裏山を駆け降りると、家の近い順にコータの家、ケンゴの家、そしてぼくの家を回って、荷物を集めて回る。

「机とかイスはいるだろ」
「そんなの手に入る?」
「婆ちゃんちの倉庫にあるかもしれないから訊いてみよう」
「食べ物は?」
「それより懐中電灯でしょ、洞窟の奥真っ暗じゃん」

言いながら、手に入るものは片っ端からリュックサックに詰め込む。

「水はどうする? 婆ちゃん、生水は飲むなって言ってたじゃん」
「学校で使ってる水筒でいいだろ」
「ランプは?」
「俺んちの懐中電灯、ランプ代わりに使えるやつだ」
「じゃ、ランプはケンゴが準備して、そうだ、危なくないようにロープ……なんてないから、紐! 紐持っていくよ」
「紐?何に使うの? コータ」
「洞窟で、道に迷わないように入り口から紐を垂らしながら歩けばいいかなって」
「さすがコータ、よくそんなこと思いつくな!」
「とりあえず、イスとかは婆ちゃんに借りるとして、食べ物は?」
「釣り道具持っていく?」
「魚釣って食おうぜ」

 それぞれの家を回りながら、思いつく限りの荷物を集めると、結構な大荷物になってしまった。

「婆ちゃんにだけはちゃんと報告しよう」
「だな」
「ちゃんと許可もらおう」

 走って婆ちゃんちに向かう途中、クラスメイトたちとすれ違う。

「何お前ら、その荷物」
「なんでもねぇよ!」

 大荷物で走っているぼくたちを、みんな不思議そうに見ている。

「おい、どこ行くんだよ」
「ひ、み、つー!」

 そしてぼくたちは、共有している秘密の大きさを思い出してゲラゲラと笑った。

 * * *

「婆ちゃん!」

 縁側から声をかけたら、奥から「ほぅい」と声が帰ってきた。

「来たね」

 そう言って、婆ちゃんが顔をだす。

「サイダーでいいかい」
「サイダーはいいから、婆ちゃん、お願いがあります!」

 そう言って、ケンゴは靴を脱いで、サッと正座する。
 いつもはコータに叱られるくらい乱暴な口調なのに、こういう時に一番礼儀正しいのがケンゴだ。
 普段から礼儀正しいコータも靴を脱いで正座をしたので、ぼくも慌てて正座する。
 婆ちゃんは驚いた顔をして

「どうしたね?」

 と正面に座ってぼくたちを見回す。
 説明を始めたのは、コータだ。

「お婆ちゃん、裏山に洞窟を見つけました」
「ほぅ」

 お婆ちゃんが目を見開く。

「見つけたかい」
「はい。祠があるって言ってたのは、そこのことですよね」
「婆ちゃんが作ったまんじゅうが置いてあった」

 言うと、

「そうさね。この山は、子供らが遊ぶ場所だからね。神さんに無事をお願いしてるよ」

 そう言って婆ちゃんは笑った。

「婆ちゃん!」

 ケンゴが真面目な顔で頭を下げた。

「あの洞窟、ぼくらの秘密基地にさせてくれ!」
「あっ、あのあの」

 コータが慌てて遮る。

「洞窟、締め縄がありました。入っても大丈夫でしょうか?」
「もう入っちゃったけど……」

 ぼくが小さな声で言うと、婆ちゃんはあははと笑った。

「そうさね、入るのは別にかまわないよ」
「バチとか当たりませんか」
「そんな器の小さい神様なんかいやしないよ! 子供の守り神だって言ったろ?」

 婆ちゃんは笑って、立ち上がる。

「いいものあげるから、ちょっと待ってな」

 ぼくたちは顔を見合わせて「はい」と答える。

 ちょっと待たされて足がしびれてきた頃、婆ちゃんは何かを持って戻ってきた。

「ほれ、これ持って行きな」

 そう言って、ぼくたちに一つずつ何かを渡してくれた。

「お守りさね」

 婆ちゃんが言った。
 紺色で、縦長の六角形のお守りだった。

「洞窟を使うのは構わない」

 婆ちゃんが言うと、ケンゴが「本当か!?」と嬉しそうに声を上げた。

「本当さね。でもお守りだけはちゃんと持っておきな。守ってくれるはずさ」

 そういって婆ちゃんは笑う。

 ……秘密基地に、お守りはいまいちキマらない気がする。
 そう思っていたら、ケンゴがガバッと頭を下げた。

「ありがとうございます!」

 そしてぼくらに嬉しそうに宣言する。

「これさ、秘密基地に入るための合言葉代わりにしようぜ!」
「合言葉?」
「ほら、えーと、入るのに必要なやつで……なんて言ったっけ?」
「パスワードみたいな?」
「そう、なんかそんなやつ!」

 おお、なるほど、それならけっこう秘密基地っぽい……か?

「わかった、じゃあお守りを忘れたら、秘密基地には入れないってことで」
「大事にする」

 僕達がワイワイやっているのを見て、婆ちゃんは言った。

「雨の日や、その次の日は水が多いから行かないこと。山に入るときはかならずアタシに声をかけておくれ。あと」

 婆ちゃんはニッと悪戯な顔で笑って、

「アタシも祠のお世話でちょくちょく顔をだすから、その時は秘密基地とやらを見せておくれ」

 ぼくらは満面の笑顔で

「わかった!!」

 と大きな声で返事した。

 この日は、そろそろ門限が近いので、もう一度秘密基地に行くのは諦めて、その代わりに婆ちゃんに、いらなくなったイスや机をもらう約束を取り付け、持ち寄った荷物を婆ちゃんに預けて解散となった。

 こうして、秘密基地の初日は幕を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...