秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に

カイエ

文字の大きさ
45 / 65
三章「遭遇」

#17

しおりを挟む
「塞がない、というわけには行かないからね」
「「「「!!!!」」」」

 カインの言葉に、皆はゴクリと喉を鳴らす。

 ――ダンジョンを塞ぐ?
 ――ということは、もうこの場所へは来られなくなるということ?
 ――そんなのは嫌だ!

 それが、皆の偽らざる思いだったろう。
 しかし騎士カインが自分たちのために動いてくれていることは、全員が理解している。
 ここに至っては選択肢はなかった。

「分かりました」

 オレはそう言ってケンゴに言う。

「ケンゴ、帰り道は任せた」
「ダイチ……」

 ケンゴは縋るような目でオレを見て……結局「わかった」と言って、目を伏せた。

「こっちです」

 ケンゴはそう言って、皆を促す。
 ひょっとするとわざと違う道を選ぶかもしれないと思って見ていたが、ケンゴはそんなことはしなかった。

(ケンゴは人の親切を無下にしたりはしないからな。……あるいは、何も考えてないだけかもしれないが)

 ちなみにケンゴだけはすでに「Nocturnality(夜目)」を切っている。
 すいすいと危なげなくダンジョンを歩くケンゴを見て、カインは驚いているようだ。

「ケンゴ。この先、蜘蛛3匹、サソリ1匹。あとコウモリが5匹ほど」
「……すごいね。数どころか種類までわかるのかい?」
「カインさんはわからないんですか?」
「気をつければわかるけれど、ボクの場合基本的に行き当たりばったりかな」
「……どんな敵でも出会い頭に倒せるってことですね」
「そのくらいでないと騎士団には入れないさ」

 カインが胸を張るが、オレはカインがはるか前方で索敵が完了していたことを知っている。
 昔から如才ないのだ、この男は。

「では、お手並み拝見」

 カインが言うと、ちょうどモンスターと視線が通る。
 モンスターは相手を選ばない。視線が通れば、すぐに攻撃を仕掛けてくる。

「コータ、カナ、援護頼む。ダイチ、二人を守ってくれ。アリサ、蜘蛛は任せた。オレはサソリを倒す」
「おう!」「任せて」「行くよ!」

 ケンゴとアリサが走り出す。

「Ventus(風よ)!」

 カナの風魔術が、サソリを地面から引き剥がす。が、ひっくり返るまではいかない。

「りゃあっ!」

 ケンゴは宙に浮いたサソリの横っ腹を下から掬い上げる。
 サソリはぐるんと回転して、背中から落ちるが、やられてなるものかとハサミでケンゴを攻撃。

「ホォーーームラン!」

 パキャ、と音がして、蜘蛛が一匹天井にぶち当たり、魔石となって落下する。黄色だ。

「ラッキー、黄色いただき!」

 軽くジャンプしてパシッとそれをつかむアリサ。そのままもう一匹の蜘蛛へ躍りかかり、ゴルフのようなスイング。しかし、もう一匹が苦戦するケンゴへ向かう。

「Ignis(火よ)!」

 コータが蜘蛛とケンゴの間に牽制の火球を打ち込む。ケンゴはそれで蜘蛛の存在に気づき、

「サンキュ!」

 小さく叫んで、サソリのハサミを思い切りぶちのめすと、サソリの片腕がちぎれ飛ぶ。しかし、サソリは強敵だ。決定打にはならない。
 そうこうしているうちに、オレとコータとカナで、飛び回るコウモリを撃ち落としていく。位階の上がったコータやアリサには、傷一つつけられない雑魚ではあるが、視界を奪われるなどのリスクもある。
 本当は「Flamma(炎よ)」を使って一網打尽にしたいが、ここは他の皆に見せ場を作るところだろう。
 バラバラと降り注ぐ魔石の中に、青い光を見つける!

「「Stiria(氷の槍よ)ッ!!」」

 コータとカナの声が重なると一瞬にして魔石が消費され、巨大な槍が二本、空中に浮かぶ。

「おいおいおい……」

 流石にオーバーキルじゃないか?

「「いっけぇーーーーッ!!」」

 二本の槍はサソリの腹を貫く。サラサラと解けていくサソリ。あとには緑色の魔石。見ると、アリサも三匹目の蜘蛛を斃したところ。

 ここまで、攻撃開始から時間にして1分ほど。
 パン、パン、パン、と大げさなほどの拍手とともに、感嘆の声が上がる。

「すごいね、キミたち!見事な連携プレイだ!」

 カインが心底驚いたという顔で、

「正直、まだまだ侮っていたと言わざるをえないね! 子供とは思えない! それどころか大人だって、駆け出しの冒険者チーム程度じゃなかなかこうは行かないだろう!」
「そ、それって、俺たちが強いってこと、ですか?」
「強いさ!」

 カインは心の底から関心しているのだろう、興奮した様子で賞賛する。

「これは将来が楽しみだ! その年で中堅どころの冒険者に手が届きそうだよ! 索敵の正確さも、補助の的確さも、攻撃力、スピード、どれをとっても申し分ない!」
「あ、ありがとうございます!」

 褒められなれていないのか、皆顔が紅潮している。
 まぁ、実際これだけ戦える子供は、なかなか居ないだろう。

「これは、私も格好悪いところは見せられないね」

 カインは得意げな顔で

「では、次にモンスターと遭遇したら、私に任せてもらおう」

 そう言ってウィンクした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...