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四章「帰還」
#4
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この世界では、靴を脱ぐ習慣がない。
靴のまま家に上がることに落ち着かない子どもたちに「大丈夫」と伝えると、また「なんでそんなことを知っているんだ!」と追求された。
うん、でもソフィと顔を合わせるのであれば、こうなることは解っていた。
「えーと、では、改めて自己紹介をさせてもらいます」
まだ騒いでいる子どもたちに代わって、俺は頭を下げた。
「では、まずリーダーから」
「え、俺?! あ、あー、えーと、俺は奥本健吾と言います! 十歳です! 特技は剣道! よろしくおねがいします!」
「ええ、よろしく、ケンゴくん」
ソフィの返答に、ケンゴがペコリと頭を下げる。
「次、誰行く?」
「じゃあ、女子代表であたしから」
アリサがパッと手を上げる。
「はじめまして、ソフィさん。水無月有紗と言います。アリサと呼んでください」
「よろしくね、アリサちゃん」
「次は?」
「コータくん、先どうぞ」
アリサの言葉に、カナがコータに向かって手を差し出す。
コータは「えっ、ぼく?」とちょっと焦った様子でお辞儀した。
「じゃあ……コホン。始めまして、お世話になります。篠山高太と言います。みんなからはコータと呼ばれてます。どうぞよろしくおねがいします!」
「ええ、こちらこそよろしく、コータ君」
コータがちらりとカナを見ると、カナは軽く頷いてニッコリと笑って頭を下げた。
「あたしは一庫花菜です。カナと呼んでください。ソフィさん、カインさん、よろしくおねがいします」
「ああ、よろしく」
「よろしくね、カナちゃん」
おっとりと笑うソフィ。
夫がいきなり5人も子供を連れてきて「しばらく保護する」などと言われた割に、それをあっさり受け入れている。新婚の割に随分と寛大なことだ。
そのソフィが、俺の方に顔を向けた。
「じゃあ、次はあなたね」
「あー、いや、話がややこしくなるので、先にカインさんとソフィさんにお願いしていいですか? 俺も、最後にきちんと説明しますから」
「えーっ」
ソフィは俺の言葉に少し不満そうな声を上げる。
その様子を苦笑しつつ見ていたカインが仕方なく手を上げた。
「それじゃ、ぼくから行こう。すでに知っているとは思うが、ぼくはカイン。王国騎士団で騎士をしている。そして隣りにいる美女がソフィーリア、ぼくの妻だ」
「ソフィーリアです。気軽にソフィーと呼んでね?」
「はい、よろしくおねがいします!」
「お願いします!」
と、そこでカナが気遣わしげに言った。
「あの、もしかしてソフィーさんは……」
「ん? ああ……想像通りだと思うよ。見ての通り、ソフィーは目が見えない」
「やっぱり……」
ソフィーは、窓から顔を出していたときも、玄関の扉を開けたときも、そして自己紹介の間も、一度も目を開いていない。
目が細いわけではなく、本当に目を閉じているのだ。
「心配しないで。見えないと言っても、不便ではないのよ」
「どういうことですか?」
「目ではなく、魔力でものを見ているの。ただ、ちょっと見えすぎるのよね」
そういってソフィは手を頬に当てて、ハァと小さくため息を付いた。
「見えすぎるってどういう意味ですか?」
「ずっと目を閉じているでしょう?」
「はい……」
「目を開けると、見えすぎて処理しきれなくなっちゃうのよ。例えば、あなた達の顔だって、あたしはちゃんと解ってるわよ」
「え、見えないんじゃないんですか?」
「肉眼ではね。視力はほとんど残ってないわ。正確に言うとぼんやりとは見えるんだけど、目を開けるとそれ以外の情報が多すぎて理解できなくなっちゃうのよ」
「はぁ~」
千里眼。
この世に顕現するあらゆる事を見通す事のできる目。
その情報過多な視界は、肉眼で見える情報がちっぽけに見えるほどだという。
「そんなことより」
と、ソフィは言った。
「説明してくれるんでしょう? ――グレン」
靴のまま家に上がることに落ち着かない子どもたちに「大丈夫」と伝えると、また「なんでそんなことを知っているんだ!」と追求された。
うん、でもソフィと顔を合わせるのであれば、こうなることは解っていた。
「えーと、では、改めて自己紹介をさせてもらいます」
まだ騒いでいる子どもたちに代わって、俺は頭を下げた。
「では、まずリーダーから」
「え、俺?! あ、あー、えーと、俺は奥本健吾と言います! 十歳です! 特技は剣道! よろしくおねがいします!」
「ええ、よろしく、ケンゴくん」
ソフィの返答に、ケンゴがペコリと頭を下げる。
「次、誰行く?」
「じゃあ、女子代表であたしから」
アリサがパッと手を上げる。
「はじめまして、ソフィさん。水無月有紗と言います。アリサと呼んでください」
「よろしくね、アリサちゃん」
「次は?」
「コータくん、先どうぞ」
アリサの言葉に、カナがコータに向かって手を差し出す。
コータは「えっ、ぼく?」とちょっと焦った様子でお辞儀した。
「じゃあ……コホン。始めまして、お世話になります。篠山高太と言います。みんなからはコータと呼ばれてます。どうぞよろしくおねがいします!」
「ええ、こちらこそよろしく、コータ君」
コータがちらりとカナを見ると、カナは軽く頷いてニッコリと笑って頭を下げた。
「あたしは一庫花菜です。カナと呼んでください。ソフィさん、カインさん、よろしくおねがいします」
「ああ、よろしく」
「よろしくね、カナちゃん」
おっとりと笑うソフィ。
夫がいきなり5人も子供を連れてきて「しばらく保護する」などと言われた割に、それをあっさり受け入れている。新婚の割に随分と寛大なことだ。
そのソフィが、俺の方に顔を向けた。
「じゃあ、次はあなたね」
「あー、いや、話がややこしくなるので、先にカインさんとソフィさんにお願いしていいですか? 俺も、最後にきちんと説明しますから」
「えーっ」
ソフィは俺の言葉に少し不満そうな声を上げる。
その様子を苦笑しつつ見ていたカインが仕方なく手を上げた。
「それじゃ、ぼくから行こう。すでに知っているとは思うが、ぼくはカイン。王国騎士団で騎士をしている。そして隣りにいる美女がソフィーリア、ぼくの妻だ」
「ソフィーリアです。気軽にソフィーと呼んでね?」
「はい、よろしくおねがいします!」
「お願いします!」
と、そこでカナが気遣わしげに言った。
「あの、もしかしてソフィーさんは……」
「ん? ああ……想像通りだと思うよ。見ての通り、ソフィーは目が見えない」
「やっぱり……」
ソフィーは、窓から顔を出していたときも、玄関の扉を開けたときも、そして自己紹介の間も、一度も目を開いていない。
目が細いわけではなく、本当に目を閉じているのだ。
「心配しないで。見えないと言っても、不便ではないのよ」
「どういうことですか?」
「目ではなく、魔力でものを見ているの。ただ、ちょっと見えすぎるのよね」
そういってソフィは手を頬に当てて、ハァと小さくため息を付いた。
「見えすぎるってどういう意味ですか?」
「ずっと目を閉じているでしょう?」
「はい……」
「目を開けると、見えすぎて処理しきれなくなっちゃうのよ。例えば、あなた達の顔だって、あたしはちゃんと解ってるわよ」
「え、見えないんじゃないんですか?」
「肉眼ではね。視力はほとんど残ってないわ。正確に言うとぼんやりとは見えるんだけど、目を開けるとそれ以外の情報が多すぎて理解できなくなっちゃうのよ」
「はぁ~」
千里眼。
この世に顕現するあらゆる事を見通す事のできる目。
その情報過多な視界は、肉眼で見える情報がちっぽけに見えるほどだという。
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と、ソフィは言った。
「説明してくれるんでしょう? ――グレン」
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