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エレベーター
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窓から見た景色は、特段おかしなものは無かった。
点滅する赤色を除いて。
「どうして警察は奴を押さえないんだ?一人だったら、なんとかなるだろうに……」
誰かがそう言った。
確かに、相手は一人だ。いくら警察が世間からひどい評価を受けようとも、一人の男を差し押さえるくらいのことはできるだろう。
しかし、それが出来ていればとっくに救急隊の人が上がってきて、怪我人である後輩を運んでいってくれるだろう。
だが、現に後輩は連れていってもらえず、救急隊の人も来ていない。
連れていかれてしまった上司もどうなったことか……。
何がどうなっているのかは検討もつかないが、このままでは後輩がヤバイということだけは分かる。
「せ、せんぱい……」
かすれた声で後輩が、俺を呼ぶ。
「どうした!?具合が悪いのか?」
顔色の悪い後輩は一生懸命に指を指していた。
指が指す方角はエレベーターだった。
だが、エレベーターが動く様子はない。
いや、そんなはずはない。
だって、あんなに楽しそうな顔をしていた男が、一人連れていっただけで終わるなんてことがあるだろうか?
目の前に立ったからこそ、俺は確信を持って言える。
絶対にそんなことは無い。
その証拠に、今まさにエレベーターが動き出した。
こうなってしまえば、対策もできやしない。
そう覚悟した俺は、必死に身構えた。
チンという音と共に、エレベーターがこの階に到着する。
到着したエレベーターはゆっくりと、扉を開来はじめた。
汗が頭から流れ落ちるのが分かる。
エレベーターの中を凝視をしてはいるが、中々扉が開ききらない。
相当長いかと思われた、エレベーターの扉が開ききった後には、何もなかった。
空っぽ。
誰も、何も乗っていなかったのだ。
ホッとしたのは確かだ。だが、同時に不気味に思った。
絶対に奴が乗っていると思ったのだ。というよりも、乗っているのが当たり前だ。それが、乗っていなかった。
その事実に、無性に寒気がした。
「とりあえずは大丈夫そうだ。それより、お前をなんとか……」
そう言いかけて、言葉に詰まった。
さっきまで、力の限り指さしていた後輩の腕は力なく落ちていた。
それに続くように肩、首、全身が力を失っていた。
「おい!しっかりしろ!しっかりするんだ!」
力の入っていない後輩の体を揺するが、返事はない。
辛うじて息はしているようだが、これがいつまで続くか……。
何より、傷が塞がるどころか、むしろ広がっている。
このままでは、後輩の命が本当に不味い。
正直、この後どうするかはもう決まっている。
確かに、問題ばかり起こすし、悩み事の種のような奴だが、なんだかんや言って俺が一から育てた後輩だ。
こんなところでみすみす見殺しにするようなことはできない。
「君たち、手伝ってくれ!こいつを病院まで運ぶ!」
俺は、先ほど一緒に乗った彼らを指名した。
一度は助けようとしてくれたのだ、二度目だって助けてくれる。そう願って。
「そっちを持ってくれ」
「分かりました!」
物怖じもせず、彼らは快く引き受けてくれた。
「しっかりしろ!俺たちがお前を病院まで連れて行ってやるからな!」
そう言って、俺たちは後輩の体を抱え上げた。
点滅する赤色を除いて。
「どうして警察は奴を押さえないんだ?一人だったら、なんとかなるだろうに……」
誰かがそう言った。
確かに、相手は一人だ。いくら警察が世間からひどい評価を受けようとも、一人の男を差し押さえるくらいのことはできるだろう。
しかし、それが出来ていればとっくに救急隊の人が上がってきて、怪我人である後輩を運んでいってくれるだろう。
だが、現に後輩は連れていってもらえず、救急隊の人も来ていない。
連れていかれてしまった上司もどうなったことか……。
何がどうなっているのかは検討もつかないが、このままでは後輩がヤバイということだけは分かる。
「せ、せんぱい……」
かすれた声で後輩が、俺を呼ぶ。
「どうした!?具合が悪いのか?」
顔色の悪い後輩は一生懸命に指を指していた。
指が指す方角はエレベーターだった。
だが、エレベーターが動く様子はない。
いや、そんなはずはない。
だって、あんなに楽しそうな顔をしていた男が、一人連れていっただけで終わるなんてことがあるだろうか?
目の前に立ったからこそ、俺は確信を持って言える。
絶対にそんなことは無い。
その証拠に、今まさにエレベーターが動き出した。
こうなってしまえば、対策もできやしない。
そう覚悟した俺は、必死に身構えた。
チンという音と共に、エレベーターがこの階に到着する。
到着したエレベーターはゆっくりと、扉を開来はじめた。
汗が頭から流れ落ちるのが分かる。
エレベーターの中を凝視をしてはいるが、中々扉が開ききらない。
相当長いかと思われた、エレベーターの扉が開ききった後には、何もなかった。
空っぽ。
誰も、何も乗っていなかったのだ。
ホッとしたのは確かだ。だが、同時に不気味に思った。
絶対に奴が乗っていると思ったのだ。というよりも、乗っているのが当たり前だ。それが、乗っていなかった。
その事実に、無性に寒気がした。
「とりあえずは大丈夫そうだ。それより、お前をなんとか……」
そう言いかけて、言葉に詰まった。
さっきまで、力の限り指さしていた後輩の腕は力なく落ちていた。
それに続くように肩、首、全身が力を失っていた。
「おい!しっかりしろ!しっかりするんだ!」
力の入っていない後輩の体を揺するが、返事はない。
辛うじて息はしているようだが、これがいつまで続くか……。
何より、傷が塞がるどころか、むしろ広がっている。
このままでは、後輩の命が本当に不味い。
正直、この後どうするかはもう決まっている。
確かに、問題ばかり起こすし、悩み事の種のような奴だが、なんだかんや言って俺が一から育てた後輩だ。
こんなところでみすみす見殺しにするようなことはできない。
「君たち、手伝ってくれ!こいつを病院まで運ぶ!」
俺は、先ほど一緒に乗った彼らを指名した。
一度は助けようとしてくれたのだ、二度目だって助けてくれる。そう願って。
「そっちを持ってくれ」
「分かりました!」
物怖じもせず、彼らは快く引き受けてくれた。
「しっかりしろ!俺たちがお前を病院まで連れて行ってやるからな!」
そう言って、俺たちは後輩の体を抱え上げた。
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