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第二章:浸透
変えるべきもの(1)
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私が毎日(毎日のように、ではなく)お茶会を開き、ポーラニア帝国の貴族令嬢と会話をするようになってから二週間ほどが過ぎた。
令嬢と対面で言葉を交わすことで、令嬢たちとの距離がいくらかは縮まったという確信はある。
しかし、私は徐々に不安を覚えはじめていた。
「令嬢たちの怯え、ですか」
いつものレイジ殿下への報告を終え、自室で部屋着に着替えた私は、クラリスに私の抱えている不安を伝える。
「そう。彼女たちに敵意は持っていないし、平穏に会話ができるよう努めたつもりなのだけど。どうしても最後まで歩み寄ってもらえないというか、ひとつ大きな壁を感じるというか」
会話が弾まないわけではない。
令嬢の近況を聞き、家門の現状について語り合い、領地発展のヒントになる情報を提供する。
その流れはうまくいっているはずなのだけど、逆に言えばそれ以上の話が出てこない。
「たとえば、今度私の主催する社交パーティーに参加してほしいとか、うちの領地の特産品を見てほしいとか、そういう歩み寄りを見せてくれる令嬢がいてもおかしくないと思っていたのよね。だけど結果はゼロ」
普段ほかの令嬢とどんな話をしているのか、というのは、私が令嬢の人となりを知るために毎回質問しているものだ。
社交パーティーや邸宅でする趣味について語る令嬢が多く、私も「ご存じのとおりずっと戦場にいたので社交界には不慣れで色々教えてほしい」と伝えたりするのだが、それに対して「じゃあ今度~」という話にはどうしても発展しない。
「想像ですが……ポーラニア帝国の仇敵である戦姫令嬢だから恐ろしいのではなく、婚約披露パーティーで圧倒的な剣の実力を見せつけたことが大きいのではないかと」
「あの一件ね……最初にインパクトが必要だったことは間違いないのだけど、少し強すぎたかしら」
お茶会中は当然ながら剣を持っておらず、丸腰だとアピールしていた(クラリスが背中に小剣を隠しているのは別として)。
令嬢に対して危害を加えるつもりはないと示していても、内心の恐れを拭い去ることはできない。そういうことだろう。
「もしかして……」
「なんでしょう?」
私のつぶやきにクラリスが首をかしげる。
そのしぐさは完全に小動物系のそれで、彼女が背中に小剣を忍ばせた手練れだということを忘れそうになる。
「……と思うんだけど、クラリスはどう思う?」
「その可能性は高そうですね。でも、それってどうにもならないんじゃないですか?」
私の仮説にクラリスは賛同してくれた。
それなら、やりようはあるかもしれない。
「明日のお茶会相手がちょうど関係ありそうだから、どうにもならないかどうかは彼女に聞いてみましょうか」
「明日って……ああ、そういうことですか!」
クラリスが私の意図に気づいてぽんと手をたたく。
私は大きくうなずいて、
「そう。明日のお茶会の相手はセルジュの妹。帝国宰相ノーステッド公爵家のサブリナ嬢よ」
勢いよく立ち上がった私は本棚に向かい、一冊の本を手に取った。
そう、帝国法が網羅された法律書を。
令嬢と対面で言葉を交わすことで、令嬢たちとの距離がいくらかは縮まったという確信はある。
しかし、私は徐々に不安を覚えはじめていた。
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会話が弾まないわけではない。
令嬢の近況を聞き、家門の現状について語り合い、領地発展のヒントになる情報を提供する。
その流れはうまくいっているはずなのだけど、逆に言えばそれ以上の話が出てこない。
「たとえば、今度私の主催する社交パーティーに参加してほしいとか、うちの領地の特産品を見てほしいとか、そういう歩み寄りを見せてくれる令嬢がいてもおかしくないと思っていたのよね。だけど結果はゼロ」
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「想像ですが……ポーラニア帝国の仇敵である戦姫令嬢だから恐ろしいのではなく、婚約披露パーティーで圧倒的な剣の実力を見せつけたことが大きいのではないかと」
「あの一件ね……最初にインパクトが必要だったことは間違いないのだけど、少し強すぎたかしら」
お茶会中は当然ながら剣を持っておらず、丸腰だとアピールしていた(クラリスが背中に小剣を隠しているのは別として)。
令嬢に対して危害を加えるつもりはないと示していても、内心の恐れを拭い去ることはできない。そういうことだろう。
「もしかして……」
「なんでしょう?」
私のつぶやきにクラリスが首をかしげる。
そのしぐさは完全に小動物系のそれで、彼女が背中に小剣を忍ばせた手練れだということを忘れそうになる。
「……と思うんだけど、クラリスはどう思う?」
「その可能性は高そうですね。でも、それってどうにもならないんじゃないですか?」
私の仮説にクラリスは賛同してくれた。
それなら、やりようはあるかもしれない。
「明日のお茶会相手がちょうど関係ありそうだから、どうにもならないかどうかは彼女に聞いてみましょうか」
「明日って……ああ、そういうことですか!」
クラリスが私の意図に気づいてぽんと手をたたく。
私は大きくうなずいて、
「そう。明日のお茶会の相手はセルジュの妹。帝国宰相ノーステッド公爵家のサブリナ嬢よ」
勢いよく立ち上がった私は本棚に向かい、一冊の本を手に取った。
そう、帝国法が網羅された法律書を。
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