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第三章:潮目
騎士団育成計画(1)
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馬車に揺られること二日。宿で睡眠をとれたことと高級馬車のおかげもあって大した疲労もなく辺境・バスティエ領にたどり着くことができた。
辺境ということもあって、雰囲気はディゼルド領に近い。隣国とは緊張状態でこそあれ、戦争状態ではないためか、ディゼルド領よりは穏やかな印象を受ける。
「このままディゼルド家の邸宅に向かいます」
クラリスの指示を受けた御者が、馬を操り街道を行く。市街地と思われる通りをゆっくりと進むと、クラリスを見つけた領民たちが声をかけてきた。
「さすがはクラリス、領民に人気があるのね」
領地へ着く前に、クラリスはドレスを身にまとっている。逆に私はメイド服を着て、バレないようごまかすことにした。
「そう思ってもらえるなら嬉しい限りです」
クラリスは控えめに笑う。その姿は間違いなく貴族家門の人間だった。
「バスティエ伯爵家当主、ディミトリという。此度はステラリア令嬢にご来訪いただき感謝する」
クラリスに案内されて邸宅を訪れた私は、ドレスに着替えるとさっそくバスティエ伯爵と面会することになった。
「ステラリアです。この度はお招きいただきありがとうございます」
バスティエ伯爵は四十後半の壮年で、第一線はすでに退いているとのこと。今は後進の育成に注力しているという。
「クラリスが令嬢には大変お世話になっていると伺っている。私が無理を言って帝都騎士団に送り出してしまったが、満足のいく仕事につながったと感謝されたときは本当にほっとした」
「いえ、こちらこそクラリスにはお世話になりっぱなしで……ただひとり帝国に送られて不安だったところ、クラリスが支えてくれているのはとてもありがたく思います」
私の言葉に伯爵は深い礼を示す。うちの父親と比べると穏やかな気性のようだ。粗暴よりはいいが、辺境を治めるには苦労しそうな……。
談話室に場所を移し、お茶をいただきながら軽く会話する。
伯爵は私がイクリプス王国の出身であるからと反感を持ってはいないようで(戦場が遠かったことと、同じルナリア王国と国境を接する国として仲間意識を感じていたことが理由らしい)、はじめて会話する相手にしては落ち着いて会話することができた。
そして、話が国境防衛におよんだところで伯爵がしばし沈黙して。
「……実は、今回ステラリア様をお招きしたのは、あなた様にバスティエ領の騎士団を鍛えなおしてほしいと思ったからだ」
「鍛えなおす、ですか」
「ああ。バスティエ領は野心の王を頂くルナリア王国と国境を接している。国境を守るためには、騎士団が国を守る意志を強く持って日々の鍛錬に励まなければならない。だが、最近はルナリア王国の挑発行為に騎士団が慣れはじめ、どうせ攻めてこないからと鍛錬にゆるみが見え始めている」
伯爵のいうところによると、引退して後進の指導にあたろうと決めた頃はルナリア王国からの挑発行為が激しかったらしい。いつ戦争になってもおかしくないと皆必死で鍛錬に励んでいたのだが、ここ数年で徐々にその行為が弱くなってきており、騎士団の中にはルナリア王国が侵攻を諦めたのではないかと思う者が出始めているようだ。伯爵や、息子たちもそれを正そうとはしているようだが、これまであまり厳しく接してこなかったこともあり、なかなか根元を叩き直すことができていないようだ。
「……それで、恥をしのんでステラリア様にご支援を求めた次第だ」
「なるほど、ご事情は理解できました」
国境を守ることだけを考えて必死で生きてきた人間として、言いたいことは山ほどあるけれど、過ぎたことを言っても仕方がない。
「私としても、国境の防衛が強化されることは望ましいことです。お引き受けいたしましょう」
私にできるのは、国境を防衛する騎士団をあるべき姿に整えることだけ。
これは……久しぶりに大暴れできそうね。
辺境ということもあって、雰囲気はディゼルド領に近い。隣国とは緊張状態でこそあれ、戦争状態ではないためか、ディゼルド領よりは穏やかな印象を受ける。
「このままディゼルド家の邸宅に向かいます」
クラリスの指示を受けた御者が、馬を操り街道を行く。市街地と思われる通りをゆっくりと進むと、クラリスを見つけた領民たちが声をかけてきた。
「さすがはクラリス、領民に人気があるのね」
領地へ着く前に、クラリスはドレスを身にまとっている。逆に私はメイド服を着て、バレないようごまかすことにした。
「そう思ってもらえるなら嬉しい限りです」
クラリスは控えめに笑う。その姿は間違いなく貴族家門の人間だった。
「バスティエ伯爵家当主、ディミトリという。此度はステラリア令嬢にご来訪いただき感謝する」
クラリスに案内されて邸宅を訪れた私は、ドレスに着替えるとさっそくバスティエ伯爵と面会することになった。
「ステラリアです。この度はお招きいただきありがとうございます」
バスティエ伯爵は四十後半の壮年で、第一線はすでに退いているとのこと。今は後進の育成に注力しているという。
「クラリスが令嬢には大変お世話になっていると伺っている。私が無理を言って帝都騎士団に送り出してしまったが、満足のいく仕事につながったと感謝されたときは本当にほっとした」
「いえ、こちらこそクラリスにはお世話になりっぱなしで……ただひとり帝国に送られて不安だったところ、クラリスが支えてくれているのはとてもありがたく思います」
私の言葉に伯爵は深い礼を示す。うちの父親と比べると穏やかな気性のようだ。粗暴よりはいいが、辺境を治めるには苦労しそうな……。
談話室に場所を移し、お茶をいただきながら軽く会話する。
伯爵は私がイクリプス王国の出身であるからと反感を持ってはいないようで(戦場が遠かったことと、同じルナリア王国と国境を接する国として仲間意識を感じていたことが理由らしい)、はじめて会話する相手にしては落ち着いて会話することができた。
そして、話が国境防衛におよんだところで伯爵がしばし沈黙して。
「……実は、今回ステラリア様をお招きしたのは、あなた様にバスティエ領の騎士団を鍛えなおしてほしいと思ったからだ」
「鍛えなおす、ですか」
「ああ。バスティエ領は野心の王を頂くルナリア王国と国境を接している。国境を守るためには、騎士団が国を守る意志を強く持って日々の鍛錬に励まなければならない。だが、最近はルナリア王国の挑発行為に騎士団が慣れはじめ、どうせ攻めてこないからと鍛錬にゆるみが見え始めている」
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「……それで、恥をしのんでステラリア様にご支援を求めた次第だ」
「なるほど、ご事情は理解できました」
国境を守ることだけを考えて必死で生きてきた人間として、言いたいことは山ほどあるけれど、過ぎたことを言っても仕方がない。
「私としても、国境の防衛が強化されることは望ましいことです。お引き受けいたしましょう」
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これは……久しぶりに大暴れできそうね。
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