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44話 初めての 4
しおりを挟む南原さんは怖い。
怖いんだけど、こんな風に不意に優しさを見せてくるから、俺は違和感を覚えていた。
初めてここでお仕置きされそうになって泣いたときも、体調を崩して熱を出したときも、そうだった。
普段の横暴な独裁者といった風格は消えて、一瞬、別人みたいに紳士になる。
何故?
南原さんは、自分のためにしか行動しないと言っていたし、実際その言動は自己中で我が儘だと思う。けれど、まれに感じる暖かさには、自分のためとかそういう計算みたいなものは含まれていない気がする。確信はないから、俺の勘違いの可能性もあるけれど。
...もしかして、なにか事情があるのか...?
だとしたら、自力で徹底的に調べて、南原さんの弱みとか見つけられないかな...。
「わっ!!!」
そんなことを考えていると、南原さんがぐっと顔を近づけてきて、我にかえった。俺は飛び退く勢いで驚いた。しかし、腰に手をまわされているし、飛び退くなんてことはできるわけもなく、息がかかるほど近い距離に心音が早まるのが分かる。
「坂北くん?どうしたんだ?泣き止んだと思ったら突然ぼーっとして。ひょっとして、俺の顔に見とれてたのか?」
どうやら俺は、無意識に南原さんを見つめてしまっていたらしい。
顔を覗きこまれ、しまったと思い視線をそらす。しかし、顎を捕らえられ強引に南原さんの方へ向かされた。
「一体何を考えていた?」
「え!!えっと...」
南原さんの弱みを見つけたいとか考えてました、なんて言ったらどうなるか分からないので、少し間を置いて慎重に答える。
「み、南原さんが、珍しく優しいなと思ってました...。」
かといって嘘をつくとあとが怖い。無難な感じで答えてみた。
南原さんの反応に少し身構える。
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