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165話 本性 7
しおりを挟む「う、うぅ、せめて声、聞かせてくださ...! おねが...! 」
「っ...声? 」
「ん、ん、桂本さんの...教育係の人の声が...頭で響いて怖いっ! うぅ、あっ! 」
俺と繋がっているのは南原さんだ。でも、時折聞こえる恐ろしい幻聴のせいで、桂本さんに犯されているような錯覚に陥る。
俺はそれが堪らなく怖かった。
「俺の、名前呼んで...! 助けて、南原さん! 」
「っ......いや、俺はお前に痛い目を見させなければならな...」
「ふっ、えっ...みなみはらさんっ...! 」
目から溢れた涙がそこを覆う南原さんの手を濡らす。
俺は震える手を南原さんがいるはずの方へフラリと伸ばした。
「ぅ...俺、怖くても頑張るから...手、握っ、て...?」
「っ...くそっ! 」
「んあっ!! 」
なんだか余裕が無い南原さんの声が聞こえたと思ったら、伸ばした手が荒々しく握られて、顔の横へ押し付けられた。
快楽を求める動きも加速し、弱点に狙いを定めて擦り上げられる。
「坂北くん、っ、坂北くん! 」
「ひ、あ、南原さんっ! 」
手、握ってくれてる。
名前を呼んでくれてる。
この手は、この声は、間違いなく南原さんのもの。
その時、桂本さんの声の幻聴は、スゥッと聞こえなくなった。
「みな、はらさっ...も、出るっ...! あ、あっ...! 」
「っく、俺、も...! 」
「んああああぁっ!! 」
グッと一際強く最奥を突かれ、俺は背を仰け反らせ、本日二度目の絶頂に達する。
きゅううと南原さんのモノを締め付けると、ほぼ同時に南原さんも俺のナカで果てた。
「...はぁ、はぁ、はぁ...う、ぐすっ...ひっく...」
...怖かった。思っていた程ではなかったけれど。
精神的にも肉体的にも、もう限界だ。
弱々しく息継ぎをする俺から、南原さんは自身をそっと引き抜いた。
「...坂北くん...」
顔に、生暖かく柔らかな風があたる。南原さんの顔が、息がかかるほどすぐそばにあるのだと分かり、緊張する。
キス、される?
「.........。 」
「っえ...? 」
しかし、予想に反して何もせずに離れていく南原さんに、思わず声が漏れた。
顔を覆っていた手も退かされて、光に目をパチパチと瞬かせる。
「はは、これで分かっただろう。俺の本性。」
俺を見下ろして自嘲気味に微笑む南原さんは、なんだかとても切なく見えた。
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