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213話 期末テスト 9
しおりを挟む「坂北はさ、南原のこと、もう怖くねぇの? 」
「え? 」
さっきまで睨み付けていた問題集をパタリと閉じて、不意にそんな質問をしてくる高橋に俺は、目を丸くした。
「お前、散々酷いことされてたじゃねーか。それなのに今は、恋人になって一緒にいる。正直今でも信じらんねぇよ。あいつと付き合ってるなんて。だから、どんな感じなのかなーと...。」
きっと高橋も、東山さんには随分と酷い目に遭わされたから、自分と俺を重ね合わせているのだろう。
ちょっと気まずそうにしながらも、俺にそんなことを聞いてくるのは、多分真面目に東山さんのことを考えているからだ。
...照れるけど、ちゃんと答えてあげたい。
そう思った俺は、おもむろに口を開いた。
「怖いよ。今でも怖いときは結構たくさんある。でも、前に感じてた怖さとは違うっていうか...」
「怖さが違う?」
怪訝そうに首を傾げる高橋。
うーん...なんて言ったらいいんだろう...。
「意地悪されるのは怖いんだけど、前と違って今はそこに愛情が見え隠れしてるから、その...その怖さは嫌じゃないっていうか...怖くて優しいのが、南原さんだから...。」
話しながら、かぁっと顔に熱が上るのがわかる。
な、何言ってるんだろう俺...!
だんだん自分が何を言ってるのか分からなくなってきた。
「と、とにかく、怖くても大丈夫なんだよ! 」
「は、はぁ...」
あー、ごめん高橋。上手く言えなくて...。
申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
「はーっ...わかんねぇんだよな、好きとかそういうの。今まで色恋沙汰とは無縁だったし、ましてや男同士なんて...。」
「高橋? 」
高橋は、大袈裟にため息をつくと、煩わしそうにガシガシと頭を掻いた。
「東山が本当に俺のこと好きなのかも分からねぇし。からかって遊んでるだけなのか、それとも本気で俺のこと好きなのか...もしそうだとしたら俺は...? そもそも好きって何? 自分の気持ちも、あいつの気持ちも、何も分からねぇよ...。」
「高橋...」
くしゃりと顔をしかめて呟く高橋に、俺は何も言えなかった。
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