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271話 夜
しおりを挟む風呂から上がった俺は、置いてあったTシャツと短パンを身に付ける。星のネックレスは、万が一に備え、つけたまま入浴した。
綺麗なスカイブルーの星を、大事に服の下にそっとしまう。
下着などは洗濯機に放り込んだが、制服は洗濯機でまとめて洗うわけにはいかないので、それだけ手に持って洗面所を出た。
さて...変な気は起こすなって言われたけど...。あの程度のお仕置きじゃ、俺は折れたりしない。
まだ逃げる算段はない。けれど、作戦を考えるためにも、下見はしておいて損はないはず。今行動できるところはチェックしておきたい。
俺は、すぐに自分の部屋へは向かわず、階段の様子を身に行った。
あー...やっぱりというか、なんというか...。
静かで人気はないが、階段は消灯されて真っ暗。多分下の階の廊下や階段もそうだろう。暗闇が怖い俺には、ここを進むのは難しい。その上、監視カメラやセンサーに引っ掛かれば桂本さんにすぐ通知されることを俺は知っている。
本館の廊下は夜中でも真っ暗になることはないが、渡り廊下は一階にしかないし、もしそこまでたどり着けたとしても、正面の出入り口は施錠されてしまっている。
かといって、客の目がなく、あからさまに俺を閉じ込められるこの別棟からの脱走は無理だ。
昼間なら、廊下も階段も明るいし、セキュリティのセンサーも切ってあるだろうけど、俺は部屋から出られない。
うーん...どうしよう...。
今の状況じゃ、脱走は不可能。
それでも諦める訳にはいかない。何か方法はないものかと、頭を悩ませながら、俺は大人しく部屋に戻ろうと廊下を歩いた。
「もう上がられたのですか。」
「わっ! えっと...はい...。」
途中、桂本さんとすれ違い、反射的にビクッと体が震える。
うぅ、やっぱり怖い...。
「あれ...? 」
桂本さんの手には、なぜか俺の亜奈月高校の指定鞄が持たれているのに気づいた俺は、首を傾げた。
「あ、あの、なんで鞄...」
「もう使わない不要物ですので、処分させていただきます。あぁ、その制服も処分しますので、今お渡し下さい。」
「え...」
処分って...。
亜奈月の鞄と制服が、処分されてしまうなんて考えもしなかった。まだ転校が決まった訳ではないのに、なんで。
まるで、これが当然のことだと言うような桂本さんの態度に、俺は戸惑いを隠せなかった。
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