最強の大魔導師は静かに隠居生活がしたい

がい

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12話 朝、そして

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「うーん…」

寝返りをしたメリルに布団を掛け直してあげる。
酒場を出て気付いたが、メリルの住んでいる拠点を知らなかったので、とりあえず僕の部屋のベッドに寝かせてあげた。

「あの頃に戻ったみたいだね。僕は親代わりとしては失格だったよ。マリーダ、君は僕をまだ師匠と呼んでくれるかな…」

王都観光の時に購入したワインを飲みながら、答えのない問いを呟く。
煙草に魔法で火をつけて紫煙を揺らすと、ファウストが影から現れた。

「貴方の愛情はあの子達に伝わっていますよ主人。だからこそ、マリーダは弟子を取ったのでしょう?」

「ふぅ…そうだといいな。僕は嫌になって逃げたのと変わらないけど、マリーダはあの後の世界から逃げずに戦い抜いた。あの子は本当に強くて、凛々しい自慢の娘だったよ」

灰皿に煙草を置き、ワインを喉に流す。
全てを捨てて隠居したつもりだったけど、やっぱり割り切れない気持ちは何百年経っても消えてはくれないようだ。

「やっぱり、酔えないや」

半分になったワインボトルとグラスを異空間に入れ、灰皿に置いた煙草を吸う。

「主人、いつまでもお側に」

僕を慰めるように足に擦り寄るファウストを撫でながら、僕はただ、この夜は紫煙を揺らし続けた。







「ふぁ…久々によく寝た…わ?」

朝、結局眠れなかった僕は昨日買った本を読んでいた。

「おはよう。君の家が分からなかったからとりあえず僕の部屋で寝かせたんだけど、昨日はちゃんと話出来ずにごめんね?」

「あ、あわ、あわわわ…」

何故かメリルは顔を真っ赤にして固まっているが、
僕は本を置いて煙草に火をつけると、ファウストが話しかけてきた。

「主人…未婚の年頃の少女の寝起きに同席するというのは…昔、子供達にも怒られたのをお忘れで?」

「ふぅ…懐かしいね。僕はそういう所に疎いから助かるよ。メリル、準備が出来たら下にいるから教えてね?」

そう言い残して僕は一階で待つ事にして、未だにあわあわしているメリルに伝えると部屋を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




陽の光が差し込んで来て目を覚ます。

「んん…朝…?」

昨日は信じられない事が起き過ぎて、まだ夢の中にいるみたいだわ…

昨日は確か、祝杯という事で初めてお酒を…あれ?
私、途中で寝ちゃって…それで…

「ふぁ…久々によく寝た…わ?」

そう、夢じゃなかった
マリーダ様が唯一、ずっと尊敬してお慕いしていた御方が、目の前にいらっしゃるのだ

「あ、あわ、あわわわ…」

頭が真っ白になった

ええええええーーー!?!?!?
なんで!?どういう状況!?

私が頭の中でパニックになっていると、テーブルで読書をしていた大師父様が私が起きたのに気付いたようだ。

「おはよう。君の家が分からなかったからとりあえず僕の部屋で寝かせたんだけど、昨日はちゃんと話出来ずにごめんね?」

あ、終わった
私、今から破門にされちゃうんだ
マリーダ様の異名を受け継いだのに、それに取り返しのつかない汚名を残しちゃうんだ

「……ル…」

「…い、…リル?」

「おい、メリル?聞いているか?」

それから数分、ショックで記憶がなかったけど私を
呼ぶ大師父様以外の声で、絶望の現実に戻る。

「あっ…貴方は大師父様の使い魔さん…?そっか、私は破門されて使い魔さんの餌になるんですね…マリーダ様ごめんなさい、私は…うっ…グスッ…」

「待て待て待て、主人がマリーダの育てた娘にそんな事する訳なかろう。それと俺は影狼シャドウウルフのファウストという。よろしくな」

大師父様の使い魔さんが丁寧に自己紹介して下さった。

「グスッ、これはご丁寧にありがとうございます、ファウストさん…手紙を出した時に覚悟は決めてました。さぁ、あまり痛くしないでいただけると嬉しいです…」

「だから待て、と言ってるのだメリル。なんで俺がお前を食う事になってる?下で朝食にするから、支度が出来たら一階に来てくれ、と主人から言伝だ。気分が優れないなら主人に伝えておくぞ?」

あれ?食べないの?
それとも、最後にご飯を食べさせていただく御慈悲を下さったのかな?

混乱する私を見て、ファウストさんは深い溜め息をついた。

「はぁ…お前は何か勘違いしているようだが、主人はこの程度で破門にするような方ではない。もしそうなら、俺をペット扱いしていたマリーダは百回は俺の餌になっているし、子供達、勿論マリーダも怖い夢を見たと主人のベッドに潜り込んだりしてたから千回は破門されているだろうな」

やだ、マリーダ様かわいい…ってそんな事考えてる場合じゃないわ!

「じ、じゃあ大師父様は御怒りじゃないんですね!?…うぅっ…良かったあ…」

私が人生最大にホッとしていると、ファウストさんは影に入りつつ話し出した。

「主人は強い。いや、強過ぎた。そのせいで主人の事をよく知らない人間は恐れるのだ。主人は降り掛かる火の粉は払うが、普段は穏やかな方というのは分かって欲しい」

使い魔使いは荒いがな、と言い残してファウストさんは影に消えた。

そっか…そうだよね
あんなに優しく育ててくれたマリーダ様の師匠が、そんな事するはずないわよね!

私は自分の頬を両手でパンッ!と勢いよく叩くと、先ずは涙や冷や汗で酷い顔を洗いに行く事にした。
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