最強の大魔導師は静かに隠居生活がしたい

がい

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16話 大魔導師、覚悟を決める

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少々トラブルもあって重い雰囲気にもなったけど、その後は絡まれる事なく研究室に辿り着いた。

「あの、こちらが私達マリーダ様にお世話になった弟子達の研究室です!どうぞ!」

「ありがとう。おや?マリーダの研究室にしては綺麗じゃないか?あの子はよく読み終わった魔導書などを積み上げて返却しないから、よくお尻を叩いてお説教したからさ!あっはっは!」

僕が研究室に入りながらメリルに昔話すると、あははと苦笑いして、師匠の名誉の為に聞かなかった事にしますと言って扉を閉めた。

「あらメリル?ランドルフの顔を見たくないから暫くは顔を見せないって…」

弟子の一人だろうか?
メリルと違い長身だが、紺色の長髪に眼鏡をかけて如何にも実戦より研究が好きそうなタイプに見える女性だ。

「紹介致します。彼女は私が同門で最も信頼している魔術師で、サリアと申します。こちらは…」

メリルが僕を紹介しようとしたが、僕がそれを止めた。

「マリーダの弟子で君が一番信頼しているなら、僕も嘘はつけないよ。初めまして、サリア。僕は君達の師匠マリーダの親と師匠をしていた、マルク・フォーチュンだ。よろしくね?」

「きゅう」

僕が右手を出して握手を求めると、知的な雰囲気をしていたサリアはメリルと全く同じように気絶した。

「わわっ!サリアーーーーーーっ!!」

三人しかいない広い研究室に、メリルの絶叫が響き渡った。










「…ハッ!?私は一体何を…確かメリルが来て…」

10分後、メリルが用意してくれたお茶を飲みながら一服していると、サリアが目を覚ましたようだ。

「おはようサリア。ビックリさせちゃったみたいで悪かったね。もう大丈夫かい?身体は回復魔法で治せるけど、精神までは僕でもむりだからね」

「あ、あわ、あわわ…」

驚くぐらいメリルと同じ反応で、メリルは優しい目でサリアを見ていた。

「サリア、安心して。大師父様はマリーダ様と同じでとてもお優しい方だから。私も昨日、同じ反応だったしね!」

どうやらメリルはもう大丈夫なようだ。
先程の事もあったので怖がらせたかと思ったが、自分の心の中で道中整理したのだろう。

「僕の子供達の弟子なら僕の子供同然だからね。後、その大師父様ってのはやめない?なんかむず痒くなるからマルクでいいよ?」

「いやいやいやいや!!!流石にマリーダ様の師匠で世界に三人しか存在しない魔導師様にそれは!」

む、これはまだダメだったか。
しかし、それならこっちも考えがあるのだ!

「そっかぁ…僕は娘だと思ってたけど、名前で呼んでくれないんだね…悲しくて老けてしまうよ…」

よよよ、と悲しむ振りをすると、二人が慌てて立ち上がった。

「えええーー!?ちちちょっと待って下さい!?流石にそれは不敬というか心の準備が!?ねっ!!サリア!?」

「は、はい!!貴方様のような魔術師の目指す到達点の先にいらっしゃる方に向かっていきなり御名前でお呼びするのは!!そうよね!!メリル!?」

二人の慌て様に流石にイジメ過ぎたかな?と思った瞬間、影からファウストが現れた。

「主人…戯れが過ぎますよ。マリーダも…いやあの子なら笑ってそうですが…」

「あっはっは!そうだねファウスト!さて、二人共揶揄ってごめんね?ただ、僕は本当にマルクで構わないからね?」

そう言って二人の頭を撫でてあげると、はい!と元気なお返事が聞けた。

「その、改めまして自己紹介を。私はサリアと申します。マリーダ様に拾っていただいてから、日々魔術の研鑽に励んでおります。よろしくお願い致します。」

「はいはいよろしくね!さぁサリアもこっちに座って一緒にお茶しよう!それに…君にも聞いてもらった方がいい話だからね」

酒場でメリルのやった挨拶をサリアからも受けて、何回やられても慣れない僕は、仰々しい挨拶をとっとと流してサリアを着席させた。

「それで、あの、私も聞いた方がいいお話というのは…?」

「とりあえずはメリルの話から聞こうか。僕を探し当てた程だから、大事な話があるんだろう?」

不安そうなサリアにそう返しメリルを見ると、生唾を飲み込み何やら緊張しているようだ。

「わ、分かりました…。こんな事、マリーダ様に破門にされるかもしれません。…でも!私にはもうこれしかありませんでした!お願い致します!私を導いて下さい!私に、この場所を守る力をどうか!どうか…!」

メリルが涙を浮かべながら懇願する姿に、如何に思い詰めていたかが伝わる。
サリアも、ここまでメリルが思い詰めていたと初めて知ったようで、悲痛な面持ちで親友の今まで他人に見せた事ない姿と覚悟を見守っていた。

「メリル、魔術は積み重ねだ。一朝一夕で力を得られるなら、僕ら三魔公はとっくに追い抜かれているし、死んでるだろう。それはわかるね?」

メリルが俯きながら頷く。

そう、僕ら三魔公と呼ばれる三人の魔導師は常に命を狙われている。

魔族に分類されている者達、魔導師を目指す者、三魔公の力が邪魔な貴族や国家魔術師達、僕らを殺す事が出来れば自分がそこに代わって立てると考えている連中だ。

「僕らはその全てを払い除けてきた。それぞれの力でね。魔導師として決闘を挑まれて拒んだ事はないし、誰かに助けを求めた事は一度もない。何故か分かるかい?」

僕の問いに答えたのはサリアだった。

「魔導師としての覚悟、でしょうか…?」

僕は微笑み、新しい煙草に指で火を着けて答えた。

「魔導師だからさ。魔を導く師が助けを求めるなんて論外だろ?そんな奴は魔導師と認められるべきじゃないんだ。さて、メリル?」

メリルの肩がビクッと震えた。

「君はマリーダの弟子だ。そしてその師匠である僕にそのお願いは適切じゃないよね?」

僕がメリルの頭を撫でてあげると、不安そうな顔を覗かせたので幼い少女を諭すように接する。

「そこは“助けて”だよ?君達はまだ独り立ち前の雛鳥なんだから、大人に頼っていいんだ。その為に僕が来たんだから、ね?」

家族愛なんて僕には分からない。
人間・・の親がいなかったから、子供に向ける愛情表現は間違っていたかもしれない。

でも…

僕は子供達の育て方を間違えたとは微塵も思っていない。
そして子供達への愛情も、血の繋がりよりも更に深く大きいと自負している。

「言ったろ?降り掛かる火の粉は払わなきゃってね。それにどうやら、魔族も関わっているようだしさ?」


『魔族』


その言葉が出た瞬間、メリルとサリアは驚きの表情へと変わった。
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