112 / 131
4章 剣聖と獣人の国編
路地裏の鍛冶師
しおりを挟む
怪我をしてから5日、左腕はまだ少し痛むが添え木が外れ、肋骨の方は無茶な姿勢をしなければ気にならないぐらいになってきた。
「我ながら凄い肉体だな…。前世ならまだ病院のベッドから起き上がれないんじゃないか?」
これも女神様の加護の影響なんだろうな。
この調子なら師匠と再会する明後日にはある程度は動かせるようになってるはずだ。
「となると…やっぱ剣を買わなきゃだな。あのミスリルの剣、結構気に入ってたんだけどなぁ…。」
手に馴染んだ剣がもう使い物にならない現実に少しショックだが、新たな相棒を手に入れなければ修行も出来ないので今日は武器屋を探しに街へ行く事に決めた。
「オリビア、今日は新しい剣を探しに武器屋を見てこようと思うんだけど、一緒に行く?」
「行くっ!」
暇そうにベッドで寝転んでいたオリビアがすくっと立ち上がり、早速お出かけの準備を始めたのでそんなに暇だったかと笑いつつ、俺も相棒を探す為に街へ行く準備をする事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっ、あの煙は…鍛冶場があるからこっちが武器屋とか装備の店かな。」
鍛冶場の煙突から出る煙を目印に進むと、区画で分かれているのか通りは全て武器防具屋で統一されていて、多くの冒険者と思われる獣人が歩いていた。
「さて、どこから見るか。金が余裕あるし、出来れば予備も買っておきたい所だけど…。」
パッと見るだけで10軒近くあるので、全て周るのは時間が掛かりそうだが妥協はしたくない。
「ごめんオリビア、結構時間が掛かりそうだけど大丈夫か?」
「全然大丈夫っ!私はよくわかんないけど、見てるのは好きだよっ!」
うちの娘は本当に天使だよ…!
「ありがとな!お詫びに終わったら美味い物でも食べて帰るとしよっか!」
やったー!とバンザイするオリビアを撫でて、早速近くの店から見ていく事にした。
まず1軒目、惹かれる物はなかったので撤退。
次に2軒目、出来の割りに高いので論外。
気を取り直して3軒目、駆け出し向けの店らしく値段も安いが、俺の求めるレベルの剣はなかった。
ーー2時間後…
その後も何店か入ってみたが惹かれる剣は見つからず時間だけが過ぎていき、少し疲れた俺達は路地に入った所で一休みする事にする。
「ほらオリビア、果実水だ。…しっかしこれだけ見たけど、惹かれる剣が全く見つからないとはなぁ…少し理想が高過ぎたか?」
「ありがとー!でも、通りのお店はほとんど見ちゃったよ?」
そうなんだよなぁ…。
やっぱり師匠に相談してみるか…ん?路地にも武器屋があるのか。
水分補給と休憩をしていると、路地の先に小さな武器屋がある事に気付く。
「ああいうのが意外と良い店だったりするんだよな。オリビア、ちょっと入ってみよう。」
何故か妙に気になった俺は、ダメ元でその小さな店に入ってみる事にする。
ギイィィ…
古くなって音が出る扉を開いて店内に入ってみると、意外にも外から見た印象よりも広く感じ、色々な剣や盾が空いているスペースに並べられている。
「へぇ…表の店よりも良い剣ばかりじゃないか。」
近くにある剣を一本手に取ってみる。
うん、ただの鉄剣に見えるけど素晴らしい出来だ。
手入れもしっかりしてあって、これなら購入してすぐにでも使う事が出来るぐらいだ。
「ウルド、欲しいのあった?」
店内を珍しそうに見ていたオリビアが声を掛けてきた。
「うーん…どれも良い品物なんだけどなぁ…。」
これは…ちょっと軽過ぎるし、この剣は俺には大き過ぎるか。
ガチャリ、と奥から誰か来る気配がする。
「…強盗か?いや、うちに盗む物なんかねーな。…なら客でいいのか?」
気怠そうに現れたのは無精髭を生やした恐らく店主であろう獣人のおっさんだった。
「悪いな、勝手に見させてもらってる。というか思ったより若いんだな?こんな良い剣を打つのは熟達した老人と思ってたよ。」
「そうかい、ありがとよ。まぁ何本か親父が打った剣も混ざってるがな。そういや随分と熱心に探してるが、表通りの店じゃ見つからなかったか。」
謙遜なのか照れ隠しか分からないおっさんの反応だが、少なくとも気を悪くはしてないはずだ。
「ほぼ全部の店を見たけどダメだ。いくつか良い店もあったけど、命を預ける相棒に妥協したくないからな。」
俺の話を聞いたおっさんは、何か琴線に触れたのか「ほう」と短く呟くと、先程の気怠そうな雰囲気から一変した。
「その考え方、俺は好きだぜ。俺達鍛冶師は剣を扱う者の一番しっくり来る相棒を作り上げる。その為に同じ鉄の剣でも重さや長さを微妙に変えてるしな。まぁ、駆け出しや低ランク帯だと表通りにあるような安い複製品みたいな剣を選んじまうのもわかるが、中堅から伸びないやつはそういう所を分かってねぇ奴が多い。」
「おっさん、根っからの職人気質だな。ならこの剣の重さで、出来れば魔力を通しやすいミスリル製の物はあるか?」
このおっさんが持ってくる剣なら間違いないだろうと思い、一本の剣を取りそれを渡す。
「誰がおっさんだ。俺はまだ30代だぞ?どれどれ、ミスリル製なら良いのが…待てよ?もう一本お前にピッタリな剣があるから持ってきてやるよ。少し待ってろ。」
…おっさん、意外と若かった。
さっきまで気怠そうだったおっさんが、早足で奥に去っていくのを見て少し可笑しくなって笑ってしまう。
「おじさん、楽しそうだったねっ!」
そんな感想を述べたオリビアの頭をひと撫でして、俺達はおっさんがどんな顔して戻ってくるか想像してもうひと笑いするのだった。
「我ながら凄い肉体だな…。前世ならまだ病院のベッドから起き上がれないんじゃないか?」
これも女神様の加護の影響なんだろうな。
この調子なら師匠と再会する明後日にはある程度は動かせるようになってるはずだ。
「となると…やっぱ剣を買わなきゃだな。あのミスリルの剣、結構気に入ってたんだけどなぁ…。」
手に馴染んだ剣がもう使い物にならない現実に少しショックだが、新たな相棒を手に入れなければ修行も出来ないので今日は武器屋を探しに街へ行く事に決めた。
「オリビア、今日は新しい剣を探しに武器屋を見てこようと思うんだけど、一緒に行く?」
「行くっ!」
暇そうにベッドで寝転んでいたオリビアがすくっと立ち上がり、早速お出かけの準備を始めたのでそんなに暇だったかと笑いつつ、俺も相棒を探す為に街へ行く準備をする事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっ、あの煙は…鍛冶場があるからこっちが武器屋とか装備の店かな。」
鍛冶場の煙突から出る煙を目印に進むと、区画で分かれているのか通りは全て武器防具屋で統一されていて、多くの冒険者と思われる獣人が歩いていた。
「さて、どこから見るか。金が余裕あるし、出来れば予備も買っておきたい所だけど…。」
パッと見るだけで10軒近くあるので、全て周るのは時間が掛かりそうだが妥協はしたくない。
「ごめんオリビア、結構時間が掛かりそうだけど大丈夫か?」
「全然大丈夫っ!私はよくわかんないけど、見てるのは好きだよっ!」
うちの娘は本当に天使だよ…!
「ありがとな!お詫びに終わったら美味い物でも食べて帰るとしよっか!」
やったー!とバンザイするオリビアを撫でて、早速近くの店から見ていく事にした。
まず1軒目、惹かれる物はなかったので撤退。
次に2軒目、出来の割りに高いので論外。
気を取り直して3軒目、駆け出し向けの店らしく値段も安いが、俺の求めるレベルの剣はなかった。
ーー2時間後…
その後も何店か入ってみたが惹かれる剣は見つからず時間だけが過ぎていき、少し疲れた俺達は路地に入った所で一休みする事にする。
「ほらオリビア、果実水だ。…しっかしこれだけ見たけど、惹かれる剣が全く見つからないとはなぁ…少し理想が高過ぎたか?」
「ありがとー!でも、通りのお店はほとんど見ちゃったよ?」
そうなんだよなぁ…。
やっぱり師匠に相談してみるか…ん?路地にも武器屋があるのか。
水分補給と休憩をしていると、路地の先に小さな武器屋がある事に気付く。
「ああいうのが意外と良い店だったりするんだよな。オリビア、ちょっと入ってみよう。」
何故か妙に気になった俺は、ダメ元でその小さな店に入ってみる事にする。
ギイィィ…
古くなって音が出る扉を開いて店内に入ってみると、意外にも外から見た印象よりも広く感じ、色々な剣や盾が空いているスペースに並べられている。
「へぇ…表の店よりも良い剣ばかりじゃないか。」
近くにある剣を一本手に取ってみる。
うん、ただの鉄剣に見えるけど素晴らしい出来だ。
手入れもしっかりしてあって、これなら購入してすぐにでも使う事が出来るぐらいだ。
「ウルド、欲しいのあった?」
店内を珍しそうに見ていたオリビアが声を掛けてきた。
「うーん…どれも良い品物なんだけどなぁ…。」
これは…ちょっと軽過ぎるし、この剣は俺には大き過ぎるか。
ガチャリ、と奥から誰か来る気配がする。
「…強盗か?いや、うちに盗む物なんかねーな。…なら客でいいのか?」
気怠そうに現れたのは無精髭を生やした恐らく店主であろう獣人のおっさんだった。
「悪いな、勝手に見させてもらってる。というか思ったより若いんだな?こんな良い剣を打つのは熟達した老人と思ってたよ。」
「そうかい、ありがとよ。まぁ何本か親父が打った剣も混ざってるがな。そういや随分と熱心に探してるが、表通りの店じゃ見つからなかったか。」
謙遜なのか照れ隠しか分からないおっさんの反応だが、少なくとも気を悪くはしてないはずだ。
「ほぼ全部の店を見たけどダメだ。いくつか良い店もあったけど、命を預ける相棒に妥協したくないからな。」
俺の話を聞いたおっさんは、何か琴線に触れたのか「ほう」と短く呟くと、先程の気怠そうな雰囲気から一変した。
「その考え方、俺は好きだぜ。俺達鍛冶師は剣を扱う者の一番しっくり来る相棒を作り上げる。その為に同じ鉄の剣でも重さや長さを微妙に変えてるしな。まぁ、駆け出しや低ランク帯だと表通りにあるような安い複製品みたいな剣を選んじまうのもわかるが、中堅から伸びないやつはそういう所を分かってねぇ奴が多い。」
「おっさん、根っからの職人気質だな。ならこの剣の重さで、出来れば魔力を通しやすいミスリル製の物はあるか?」
このおっさんが持ってくる剣なら間違いないだろうと思い、一本の剣を取りそれを渡す。
「誰がおっさんだ。俺はまだ30代だぞ?どれどれ、ミスリル製なら良いのが…待てよ?もう一本お前にピッタリな剣があるから持ってきてやるよ。少し待ってろ。」
…おっさん、意外と若かった。
さっきまで気怠そうだったおっさんが、早足で奥に去っていくのを見て少し可笑しくなって笑ってしまう。
「おじさん、楽しそうだったねっ!」
そんな感想を述べたオリビアの頭をひと撫でして、俺達はおっさんがどんな顔して戻ってくるか想像してもうひと笑いするのだった。
61
あなたにおすすめの小説
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
英雄の孫は今日も最強
まーびん
ファンタジー
前世では社会人だったが、死んで異世界に転生し、貧乏貴族ターセル男爵家の3男となった主人公ロイ。
前世のギスギスした家庭と違い、家族の皆から愛され、ロイはすくすくと3歳まで育った。
中でも、毎日一緒に遊んでくれるじいじは爺馬鹿全開で、ロイもそんなじいじが大好き。
元将軍で「英雄」と呼ばれる最強のじいじの血を引いたロイは、じいじ達に見守られながら、今日も楽しく最強な日々を過ごす。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる