前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい

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4章 剣聖と獣人の国編

決意を新たに

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「よし、合格!流石に一ヵ月掛かったか。それじゃ次行くぞー?そら。」


ズズン!と聞きたくなかった重々しい音を一ヵ月振りに聞き、地面で倒れ込んでいた俺は嫌な予感を感じて気力を振り絞り上半身を起こす。


「ゼェ……ハァ……ま、まさか…?」


「今回はそれぞれ100kgで合わせて400kgだ。それを着けて30分耐えろ。これを合格すれば新しい修行だから頑張ってクリアしてくれよ?」


ニコッと笑顔の師匠に反論した所でやる事は変わらないので、諦めた俺は手足の修行用の重りを新しく渡された物と付け替えて、物理的に重くなった身体を引きずって屋敷へ戻った。





──それから3ヵ月





「よしいいぞ、合格だ!私の予定よりも半年は早く基礎を終わらせるとはやるじゃないか!」


「やっ…と…ゼェ……ゼェ……終わった……!」


この3ヵ月間、死ぬ気で鍛練してきてようやく合格を貰う事が出来たぞ…。


修行開始から5ヵ月近く続けてきた基礎鍛練で、両手足の重りを着けたままでも以前よりずっと動きが良くなったし、この地獄を乗り切ったという謎の自信もついた。


「さて、下地が出来たからここから本番だ…と言いたいんだが、これまで見てきたお前の弱点についてだ。」


弱点…?
俺、基礎鍛練しかやってなかったよな?


俺がポカンとした顔で師匠を見ると、俺が疑問をぶつける前に師匠は話を続けた。


「お前、自分の命を軽く見過ぎだ。これまでの経験もあるんだろうが、お前より強い者は大勢いるし、まだお前が生きているのは運が良かっただけなのを覚えておけ。…もし、お前がのたれ死んだらオリビアはどうなる?」


ぐうの音も出ないとはこの事なんだろう。
俺が何も言い返す事が出来ず押し黙っていると、師匠は厳しい表情で更に続ける。


「生き方を変えられないのであればお前はオリビアと離れた方がいい。明日は休みにするからよく考えろ。」


俺にそう告げて師匠は屋敷に振り返る事なく戻っていく。
俺は少しの間、この場で仰向けになったまま空を見つめて師匠の言葉を思い出してオリビアの事を考えていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ウルドおかえりっ!あれ?ウルド元気ないけど、どうしたの?師匠に怒られた?」


「ただいまオリビア。そうだね…少し怒られた。」


珍しいと笑うオリビアを見て、師匠の言葉を思い出す。


『生き方を変えられないのであればお前はオリビアと離れた方がいい。』


俺は生き方を変えられるだろうか?
オリビアは俺と一緒にいて幸せだろうか?
もし俺が死んだらオリビアは…1人でも生きてくれるだろうか?


胸をギュッと締め付けるような、焦燥感にも似た感覚を覚える。
オリビアだけじゃなく両親やルル、里のみんなや今まで出会った人達の顔が浮かんで、前世では俺が死んでも爺ちゃんしかいなかったが、今はこんなにも繋がりが出来たのかと感慨深くなった。


「ウルド?どこか痛いの?ほら、しゃがんで?」


言われるがまま心配そうに顔を覗き込むオリビアの前にしゃがみ込むと、そっと抱きしめられ俺は突然の行動に驚き、ゆっくり顔を上げた。


「オ、オリビア…?」


「私がウルドに出会ったばかりの頃、よくこうしてくれたでしょ?あの時の私と同じ顔してるから、お返しだよっ!どう?元気出た?」


…ああ、俺が考えてるよりずっとこの子は立派に成長していたんだ。


「ありがとう、元気出た。元気出たら腹減ったし、夜ご飯にしよっか。」


そうだ、俺は自由の為に強くなるんだ。
何を悩む事がある?もし俺が負けるような強者が沢山いるなら、そいつらより強くなればいい。


「…明日からまた頑張らないとな。」


食卓に器を並べながら、師匠の言葉で改めて自分の目指す頂を再確認して独り言を漏らした。
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