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<第一巻:冷酷無慈悲の奴隷商人>
閑話2: 猫耳マリレーネの覚悟
しおりを挟む<マリレーネ視点となります>
久しぶりの水浴びでさっぱりしたのは良かったけど、部屋に戻ったら使用禁止って何なん!
「マリちゃん……私たち、これからどうなるのかな?」
「そりゃ、体を洗ったってことは、ついに売られるんじゃないか?」
アーヴィアが心細そうに手を繋いできたので、手を握り返す。
あの馬鹿息子の虐待から逃れられるのならそれでもいいか。しかし、仲良くなった子達と離れ離れになるのは寂しい。
見回すと、エルフも呆然と立ってるってことは、何も聞かされてないみたい。
「なぁ、この後ウチらってどうなると思う?」
オロオロとして目が泳いでるアーヴィアに聞くだけ無駄か。パオ姉さんは何か知ってるかも。
後ろを振り返ると、ちょうど水浴びから戻ってくる長身で金髪美人のパオリーアが見えた。
「パオ姉さん。これってどういうこと?」
「いったい何の騒ぎ?」
パオリーアは奴隷部屋のドアの貼り紙を見ると、口に手を当てて驚いている。
「どういうことかしら?」
「パオ姉さんも何も聞いてないんですか……」
アーヴィアも肩を落としてうなだれている。
せっかく気持ちよく水浴びして来たというのに、いっぺんに気分が落ちた。
その時、アルノルトの野郎が来たのでどうなってるのかと詰め寄ろうとしたら、アーヴィアとパオ姉さんにやめておきなさいと止められた。
どうやら馬鹿息子からの伝令があるようだ。
「ニート様からの伝令! 今から全員中庭に集合する。今着ているものは脱いで裸となれ!」
なに、また脱ぐのかよ。こっちは汚い服をイヤイヤ着たばかりだというのに。
とりあえず中庭に裸で集められたのはいいけど、今日は日差しが強くて立ってるだけで疲れる。
アルノルトも馬鹿息子もなかなか現れないし、何の嫌がらせだろう。
みんなは、辛抱強く立っているけれど、ちょっとくらい座ってもいいよな。
座って見ると、奴隷たちの尻が目の前にあった。みんないいケツしてるなあ。パオ姉さんなんて、腰が折れそうなくらい細いし、その割にバーンと尻が張ってて、ツンと上がってるし女の色気が滲み出てるな。
アーヴィアは、なんだか貧相な尻だけど小ぶりで可愛いケツしてるし、尻尾がフサフサしてて気持ち良さそうだぜ。
アザがある尻も多いから心が痛む。まあ、尻は叩かれてもダメージ少ないから、ウチはなんぼ叩かれても平気だけどな。エルフは綺麗にツルンと陶器のようなケツしててうらやましい限りだよ。
しばらくみんなの尻を眺めていたら、馬鹿息子が出て来やがった。
相変わらず気持ち悪い薄ら笑いを浮かべてやがる。命令するなら、さっさとしてくれよ。
なにやら、アルノルトと二人が揉めてるようだ。
何を話しているのかわからないけど、待っている間つい座ったまま考え事してしまった。
そんな時に限って、運悪くアルノルトに見つかってしまう。
「おい、きさま! こっちに来なさいっ!」
アルノルトに強く腕を掴まれて、みんなの前に引っ張り出された時は、こりゃ殺されるなって覚悟した。いくら私でも、この馬鹿息子の怖さは身に染みている。まったく慈悲ってもんがないんだから。
奴隷は人ではないと平気で言い放つヤツだし。
だから、どうせ殺されるのなら言いたいこと言わせてもらうよ。
「な、なんだよ。こんな所にいつまでも裸で立たせやがって、座ったっていいじゃねえか!」
「黙らんかっ!」
ガッと頬を殴られた感覚、思いもよらず横からアルノルトに殴られたので心の準備もできていなかった。おかげで、まともに食らって倒れてしまった。
「「なっ、何も殴らなくても!」」
ウチが抗議の声を上げたら、馬鹿息子も同じことを言う。
なんだ、こいつ。何を慌ててるんだよ。いつも真っ先に殴るのはあんたのくせに!
思わず息子を睨みつけたら、ニヤッと歯を見せて笑いやがった。胸くそ悪ぃ!
結局、罰はそれだけだったけど、やっぱりあの野郎は気が狂ってやがる。
その後は、屋敷の掃除をスッポンポンでさせられたり、大小便が溜まった壺を運ばされたり散々だった。
はやく売り飛ばされてぇ。
こんなところ早く出て、優しいご主人様に拾われたいよ。
屋敷は立派で、いかにもお金持ちの家。ウチが生まれたのは大森林の麓の村だったけど、こんな立派な建物はここに来るまで見たことなかった。
いつかこんなお屋敷に住めたらいいなぁって思ってたよ。
でも、掃除するのは勘弁してほしい。これだけ広い部屋だと、腰は痛いし、腕はだるいし。
今まで狭い小屋に閉じ込められて、出ていいのはご主人様やあいつの世話させられる時くらいだから、力が出ないんだ。
ウチはまだ獅子人族だから、力はあるほうだけどアーヴィアなんてヒョロヒョロの弱っちい女だから見てて不憫で仕方ない。
それなのに、あいつはやたらアーヴィアを呼びつけては体を弄ぶから、いつかぶっ飛ばしてやろうと思ってる。
掃除が終わると、なぜか廊下に正座して待たされた。野郎もアルノルトもいないんだから、正座しても意味ないんじゃないってパオ姉さんに言ったんだけど、あの人意外と堅物でさ。律儀に正座して待ってるの。
でも、パオ姉さんはみんなの憧れだし、年長者らしくみんなの母さんみたいで、安心するんだ。
ウチと、アーヴィアとパオ姉さんで、おしゃべりしながら待ってたらアルノルトたちが戻ってきたけど、ちゃんと部屋の掃除ができているか確認するって言いやがった。
こっちは真面目にしてるのに、どんだけ信用してないんだよ。
しかも、掃除したやつは出てこいと怒鳴るもんだから、もう生きた心地しなくてさ。
何が不満かわかんねえけど、とりあえず謝っとこうぜって事でアーヴィアと頭を下げたよ。
一日何回こんなことさせられるんだか。
部屋を使っていいとか、恩着せがましく言うアルノルトも腹が立つ。まるで、自分の手柄みたいに野郎に礼なんてしてて笑っちまったわ。
結局、自分で掃除した部屋に寝泊まりしろってことは、この部屋の掃除を毎日しておけってことだろ?
「ねえ、マリちゃん……お部屋を使ってもいいって言ったよね?」
「ああ、言ってたな」
「こんな綺麗なお部屋が私たちの部屋なの?」
「アーヴィア、あんな奴の言うことを額面通りに受け取ってどうするんだよ!」
「ええー、違うの? ど、どういうこと?」
「アーヴィアはおめでたい奴だからころっと騙されてるみたいだけど、野郎が『汚したらわかってるだろうな』って言ってただろ? ウチらが、喜んでベッドに乗ったりしたら、これ幸いと折檻が待ってるに決まってら!」
「そ、そうなの? じゃ、私たちはどこで寝たらいいの?」
「決まってるだろ、床だよ。この板の上で寝るんだよ。あいつら、どこまでもウチらをいじめる気だよ」
床をゴンゴンと足で小突いて、ここでみんなで寝ないと殺されるぞと教えてやった。
落胆が激しいアーヴィアと、その他三人の子たちも、疲れたのか床に寝転ぶ。まぁ、この部屋は広いし、綺麗だし、悪くはないな。
泣きそうな顔のアーヴィアの頭を撫でてやりながら、今夜あの野郎に呼ばれてることを思い出して憂鬱になった。
あいつ、ウチのおっぱいに鞭打って、泣くと喜ぶど変態だからなあ。痛いのは慣れたけど、なんか喜ばせるの癪なんだよなぁ。でもまぁ、今日は叩かれていないし水浴びもさせてもらったから、いいけどさ。
「マリちゃん、今夜は私がご奉仕頑張るから、マリちゃんは休んでてもいいから。お昼にニート様に逆らったから、きっと酷いことされるよ。だから、私が頑張ってモグモグしたらニート様も満足して眠られるだろうし……」
可愛いこと言って心配してくれるアーヴィアの頬にチュッとキスしてやる。
あわわわって、真っ赤になって照れるアーヴィアは本当にかわいい。
さて、アルノルトが来たみたいだ。憂鬱な夜になりそうだな。
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