悪役転生した奴隷商人が奴隷を幸せにするのは間違っていますか?

桜空大佐

文字の大きさ
22 / 97
<第一巻:冷酷無慈悲の奴隷商人>

第十六話:奴隷商の息子は、下着採寸に立ち会う

しおりを挟む
 
 翌朝、親父には、店で勝手な指示を出したことを詫びたが、あっさりと許してくれた。
 怒られるかなと、ちょっぴり緊張していたから拍子抜けしてしまった。

「そういうところは、お前の爺さんに似ているな」

 親父は、祖父と俺が似ていると言って、ニコニコしていたが、誰ですか祖父って。
 あとでアルノルトに聞いたら、親父は二代目だそうだ。
 ということは、俺は三代目になるってわけか。

 不思議なもので、親父が仕事をしている姿をここ二ヶ月の間一度も見たことがなかった。
 家にいるのか出かけているのか、正直わからない。客が訪ねて来る様子もない。
ましてや奴隷を店へと送り出す指示をしている姿も見ていない。

 いったい、店に奴隷を送り出すのはどうしているのだろう?
 一人売れたら、一人補充するという形なのだろうか。どの奴隷を送り出すか、誰が決めているのか見当もつかなかった。
 わからなことは、直接本人に聞けばいいんだとのことで、親父に聞いてみる。

「ところ父さん、店に出す奴隷は父さんが決めているのですか?」
「ああ、それか……それはだな。これだよ、これ」

 親父が取り出したのは、紙の束を糸で綴じた物だった。ノート?
 俺は、以前そのノートに何やら書き込んでいる親父の姿を見ていた。
 やはり、帳面をつけているのか。

「拝見しても?」
「ダメだ、これは私のものでな。お前にいずれは譲ることになると思うが、今はダメだ」

 なんだそれ? 跡継ぎになったらそのノートが引き継がれるということか。それほどのものなのか。

「わかりました。跡継ぎになった時の楽しみにしておきます」
「そうか、そうか。ずいぶん物分かりがよくなって安心したよ。お前が、見せろと詰め寄ってきたらどうしようかと肝が冷えたよ」

 がははと笑った親父の言葉を聞いて、そっか、その手があったかと後悔した。
 いまさら、見せろと詰め寄っても、さっき俺が言った言葉を逆手にとって断られるのがオチだ。

 良い息子を演じてしまったことを後悔する。
 周りの者には、まだ以前の怖いニートがいつ顔を出すのかと戦々恐々としている者も少なくない。
 最近は奴隷たちも、少しは慣れてきたのか、以前ほどあからさまに怖がる者も少なくなっていた。

 俺は、自分の部屋に戻ると机の引き出しから紙を取り出し、眺めた。
 この先、俺がしたいことリストだ。

 この数ヶ月の間に、俺は多くの奴隷とは関わりを持たないように意識していた。
 名前すら知らない者たちばかりだ。名前を知っている奴隷は、三人だけだろう。
 犬人族のパオリーアに、獅子人族のマリレーネ、そして狐人族のアーヴィアだ。
 パオリーアは、俺の前ではおとなしいが奴隷たちには言うべきことをはっきりと言う。それでいて、奴隷たちから慕われていた。
 マリレーネは、ムードメイカーで奴隷たちの面倒見もよく、仕事もよくできた。最初の頃は反抗的だったが、俺に気軽に話しかけてくれるようになり、彼女と会話することをとても楽しんでいる。アーヴィアは見た目こそ幼女っぽいが、素直でいい子だった。
 この三人を俺は手放したくなかった。だから、誰が店に送り出す奴隷を決めているのか知りたかった。
 親父には、この三人は俺の手元に置いておきたいと言うべきなのだろうか。
 それとも、早く跡継ぎになるほうがいいのか。

 跡継ぎか……
 俺の性格では、奴隷商人としては甘いと思う。おそらく、現時点では俺のやり方では成功しないかもしれない。
 しかし、この世界から奴隷制度はいずれなくなるだろうと思っている。この国が成熟した時、奴隷制度廃止に目が向けられる時が来るはずだ。それは何十年後になるかもしれない。逆に数年後かもしれない……
 いずれにしてもその時、奴隷商人としての役割は終わることになる。その前に、ある程度の商売の方向性を考えておかなければならないのだ。

 その方法は、徐々に形となってきていた。絵図はできつつあった。
 それで成功するかどうか、その見極めが必要だった。そのために、奴隷商店で実験したいことがあった。
 つい、昨日は商店で助けを求め涙を流す奴隷を見て、カッとなった俺は、自分が描いた理想を押し付けてしまった。
 それによって、店主のジュンテ兄弟にも迷惑をかけてしまっただろう。
 だが、一歩踏み出すきっかけになったのも事実。

 できることなら、この屋敷にいる奴隷たち全員を手元に置いておきたい。
 しかし、そんなことをしては、商売にならず、いずれは廃業ということになりかねない。

 幸い、親父は俺の好きにしていいと言ってくれた。失敗しても、金はいくらでもあるという。
 チャレンジする時に金の心配をしなくて良いのだから、お金持ちの家庭に生まれて良かった。
 いつまでもすねかじるつもりはないが、今はありがたく齧らせてもらおう。

 ――――コンコンコン

 ドアをノックする音がする。俺が入れと声をかけると、アルノルトが入って来た。

「下着屋の女将がいらっしゃいました」

 昨日、奴隷たちが身につける下着の採寸を頼んだのだ。

「わかった。大広間にお通ししろ。それと、奴隷たちも大広間に集めてくれ」

 アルノルトにそれだけ指示をすると、俺は女将に挨拶するため部屋を出た。

 ◆

 大広間に入って、女将に挨拶していると奴隷たちが次々と広間へと入ってきた。
 俺の姿を見て、目を伏せている。これから、何をするのか聞かされていないようだった。
 俺も言っていないし、指示もしていないのだから当然か。
 昨日、パオリーアに下着を買ったことを知らない者がほとんどなのだろう。

 ふと、入り口に立つパオリーアに目がいく。俺が近づくと、ぺこりと頭を下げたパオリーアがにこりと笑った。
 いい表情だ。いつもより魅力的に感じる。

「悪いが、お前は他の者の採寸を手伝ってくれ」
「かしこまりました」

 大きく開いた貫頭衣の胸元に、大きくてすばらしい谷間がのぞいていた。
 これって、もしやブラをしているのでは……やっぱり、買ってよかった。

 いかんいかん、俺は妄想モードに入りそうなので頭を振って、気持ちを切り替えた。
 奴隷たちは、列を作り立っている。ざわざわと私語をする者が増えてきたところでアルノルトが一喝する。
 しーんと静まった。なかなかやるじゃないか、アルノルトさん。

 おもむろに、パオリーアが貫頭衣を脱ぎ捨てると下着姿になった。
 おぉーっと歓声が上がる。俺も、一緒におぉーと歓声をあげた。美しい肢体に純白の下着。
 尻の半分までしか布が覆っていないローライズなパンツは、腰の横で紐を結ぶようになっている。

 大きくせり出した尻にピタリと張り付く布は、神々しく輝いていた。
 思わず、手を合わせている自分に気づく。ありがとう、パオリーア。

 パオリーアが、自分の下着姿を見せて、この下着を作るための採寸をするから、順番が来たら服を脱ぐように指示を出す。うん、なかなかリーダーっぽいじゃないか。
 年長者だけのことはある。

 静かに並んでいる奴隷たちの中で一人ごそごそと服を脱ぎ捨てた奴隷がいた。誰だよ、気の早い奴は。
 よく見るとマリレーネが、さっさと服を脱いですっぽんぽんになっていた。大きなおっぱいがブルンブルンと左右に揺れる。
 蝶の羽ばたきは竜巻を起こすなんて言葉があるが、この異世界ではマリレーネのおっぱいが世界の果てで嵐を起こしているかもしれない。
そんなことを、俺はマリレーネの豊かなおっぱいを見ながら考えていた。

 約三十人ほどの奴隷たち。全員が華奢な体つきで、豊満な奴隷が一部を除き見当たらない。エルフは特に細身で、俺のイメージとは大きくかけ離れていた。
 巨乳エルフというのはこの世界にはいないのかな。

 それにひきかえ、マリレーネは腹筋は割れ、腕にも筋肉が浮かび上がっている。いったい、何を食ったらそんな体になるんだ。しかも、巨乳だし。
 巨乳トップスリーは、マリレーネをトップに、パオリーアが来て、もう一人は名前は知らないが赤い髪の奴隷だ。

 ふと、アーヴィアがこちらを向いていることに気づき、目が合った。だが、すかさずプイッとそっぽを向く。まだあの子には嫌われているようだ。

 俺は、全員の採寸が終わるのを眺めていた。裸になった女の子が次々と採寸されているのを眺めていると、瞬きを忘れていたのか、目がシバシバする。つい、前のめりで見てしまった。
 これじゃ、まるで変態オヤジだな。



 女将を迎えに来た馬車の前で、女将は俺に感謝の言葉を言った。こちらこそだ。

「はじめて奴隷商人のお屋敷を拝見しましたが、想像と違っていました。あの……失礼ながら、私もっと奴隷たちが酷い扱いを受けていると想像していました。でもこちらの奴隷たちは、みなさん楽しそうに笑顔で驚きました」
「いいんだ。酷い扱いをしていた時期もある。だが、今はそんなことはないのだ。もし、女将のように勘違いしている人がいたら、教えてあげてほしい。奴隷商人ソレの奴隷たちは大切にされて幸せそうだったと」
「ええ、ぜひ。では、納品の時にまたお伺いします」

 その後、王都ダバオではおしゃべりな女将が、奴隷商人のお屋敷には美人の奴隷たちばかりいて、とても大切にされて過ごしていたと言いふらしたという。
 おかげで、店の方の売り上げが上がっていくことになる。


 
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...