悪役転生した奴隷商人が奴隷を幸せにするのは間違っていますか?

桜空大佐

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<第一巻:冷酷無慈悲の奴隷商人>

第二十一回:奴隷商の息子は牛を買う

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 翌日、牛を一頭引いたおっさんがやってきた。

「牛を食べるって本当だべか? ちょうど、この牛がもう乳が出なくなったので処分するところじゃったんじゃ。乳の出なくなった牛を買ってくれるのはありがたいです」
「そうなのか? また、頼むよ」

 後で知ったことだが、この国が肉を食べない食習慣だということではないらしい。冒険者が集まる店では普通に牛肉の料理はあるそうだ。理由としては、乳牛がほとんどだから、あまり流通していないということらしい。

「肉が食べたいのならウサギや犬、鳥にしたらいいんだが。まぁ、また必要になったら言ってくれ」
「ありがとう。助かったよ」

 おっさんは庭先に打ち込んだ杭に牛をつなぐと、とっとと帰って行った。
 あれれ? 解体してくれるんじゃなかったの?

 ◆

 牛の解体ができる職人を頼むのを忘れたアルノルトは平身低頭している。
 さて、どうしたもんか?

「アルノルト。牛の解体はお前たちでやってみろ」
「あっ、やったことはありませんが……はいっ、やってみます」

 俺が怒っていると思ったのか、アルノルトもやってみると言っているが難しいだろう。
 コイツも俺も知識がない。やはり、誰かに頼むべきか。

「奴隷たちの中で、動物の解体ができる奴がいるか聞いてみろ」

 アルノルトへ指示を出す。もしかしたら、マリレーネあたりは牛を日常的に食べていたかもしれない。なにしろ獅子人族だ。牛の踊り食いでもしていそうだ。


「わー、ムリムリムリー!」

 アルノルトに連れられてきたのは、やはりマリレーネだった。

「お前、解体したことがあるのか?」
「ないですよー! 牛の肉が食えるからって騙されて来たら、解体しろとか、できるわけないじゃん」

 牛を見て、尻込みするマリレーネの背中を押すアルノルト。

「アルノルトさん、これはどういうことかな?」
「あ、あの……それが、その……」

 冷や汗をかきながら、口ごもるアルノルトの足元の地面に、ビシッと鞭を叩きつける。
 鞭の乾いた音を聞き、アルノルトとマリレーネがビクッと跳ねる。
 ごめん、マリレーネちゃん。君は悪くないよ。

 しばし無言の圧力……

「も、申し訳ありません! 申し訳ありません」

 そんなに謝られると、こっちが悪者みたいじゃないか。だいたい俺はそこまで怒っていないぞ。

「解体できる者がいなかったという事か?」
「はい……」
「それで、牛の肉を食ったことがあるかを聞いて、マリレーネを連れてきたと?」
「はい、その通りです」

 俺は、はぁと溜息をついて頭を抱える。しかも、食べさせてやると嘘までついて連れてくるとは……
 まぁ、いいか。こうなったら、奴隷たちでやらせるか。

「獣人族の者を集めろ!」
「はっ!  すぐに! エルフはどうしましょう?」
「それはいい。屋敷の掃除でもさせておけ」

 マリレーネは嫌そうに俺を見たが、大丈夫だ、みんなでやればなんとかなると言うと、頷く。
 素直でよろしい。

 ゴミの焼き場が、グランドのように広いので、そこで牛の解体をした。
 そのままゴミを捨てられるのもいいが、血で庭の芝を汚すのが気が引けたからだ。

 集められた、奴隷たちはキャーキャー騒ぎながら、アルノルトが仕留めた牛を解体した。
 若い牛ではないし、乳牛だから美味しくないかもしれないが、これだけの肉があればしばらくは焼肉三昧だ。

 この世界には、電気式の冷蔵庫はないが、呪文紙という魔法が付与されたお札を使って食品を凍らせたり、冷やして腐らないようにすることができるので、肉を解体しても保存には心配ない。

 この呪文紙は俺の部屋の天井にも貼ってあり、夜になると照明として点灯する優れものなのだ。
 他にも湯を張ったりすることもできる。
 ちなみに水を張ることもできるので、井戸から運ぶ必要はないことに、デルトは気付いていない。
 無駄な経費は省くに限る。しばらくは、奴隷に働いてもらうのも良いだろう。

「ニート様! 体の解体はほぼできました」
「アルノルト、牛の舌はどうした?」

 キョトン顔で俺を見るので、自分の舌を出して指差した。

「この舌だ。牛の舌は大きいだろう? あれがうまいんだ」

 疑うような目をしているアルノルト。舌も食べられるのかと喜ぶマリレーネ。性格がモロにわかるね。

「疑うのなら、アルノルトは食べなくていいからな。マリレーネは食べるよな?」
「食べます! ニート様が美味しいと言うのなら、絶対美味しいはずです」
「さすがマリレーネだ。主人への絶対的な信頼がなせる言葉。どこかの誰かさんのように主人を疑うなどもってのほかだ」

 顔を真っ赤にしたアルノルトは、両膝をつき胸の前で手を合わせて、そんなつもりではなかったんですなんて言い訳しているが、聞こえていないふりをした。

「マリレーネには一番おいしいタンを焼肉にしてやるぞ!」
「本当に? ありがとうニート様!」

 ムニュっと腕におっぱいを押し付けて喜ぶ獅子娘マリレーネ。可愛すぎかよ。
 つい、鼻の下が伸びる。
 チラッと視線の端にパオリーアが目に入る。やばい、これはもしかして怒るかな?

「マリレーネちゃん。そんなに馴れ馴れしくニート様に引っ付いてはいけません」

 パオリーアが、こちらに向かいながらマリレーネを叱る。これって、何気にマリレーネを叱りながら俺に抗議してるんじゃない?

「さぁ、マリレーネは作業に戻って。ニート様もこちらへ」

 そう言うと、俺の腕を、両乳で挟み込みながら引っ張った。
 ふんわり柔らかい感触。マリレーネの弾力たっぷりのおっぱいとは違ったテイストに、俺は若干前屈みになって歩く。

 おっぱいに腕を引かれて牛を見に行くと、すでに骨だけになりつつあった。なんとも見事に肉を削いだもんだ。
 意外とこの娘たちは優秀だぞ。

「見事なもんだな。誰がやったんだ?」

 奴隷たちはおずおずと手をあげる。マリレーネだけ、ハイハイハイ!ウチウチとうるさい。

「みんなよくやった。今夜はみんなでバーベキューをしよう。アルノルト、バーベキューの用意だ!」
「あの、バーベキューとは……」
「なんだ、知らないのか?」

 俺は炭と網とトングを用意させた。
 簡易のバーベキューコンロも作ると、奴隷たちはキャッキャと喜びながら手伝ってくれる。

「パオリーアとマリレーネは下ごしらえをしてくれるか?」
「はい、教えてください」

 巨乳の二人はおっぱいを揺らして、素直に分からないことは分からないと言って教えてくださいと頭を下げる。

「いいよ。教えてあげよう。アルノルトには教えてやらないぞ」
「そ、そんなニート様ぁー!私にも教えてください」

 アルノルトは情けない声を出す。とりあえず、親父も誘ってみてくれと頼み、塩と胡椒を持ってくるように言った。

 デルトにニンニクなど薬味を頼むと、すぐにもってきてくれた。この世界の調味料は、元いた世界のものと大差ない。むしろ精製されすぎていないのでおいしいとさえ思う。
 醤油がないのが残念だが焼肉のタレに近い味のタレもできた。
 コラウスに頼んだレタスに似た野菜が来る。

 包丁さばきはアーヴィアがなかなかのもんだ。

「アーヴィアは包丁を使い慣れているが、料理の経験があるのか?」
「はい。家では小さな弟がいたので、よく手伝っていました」

 マリレーネが負けじと包丁を持つ。
 待て、待て、お前は危ないから刃物を持つな!

「マリレーネはタンを持ってきてくれ」
「タンってちょっと気持ち悪い牛の舌ですよね。すぐに持ってきます」

 他の奴隷たちの数人がマリレーネについていく。
 俺が一人一人指示を出さなくても、三人の奴隷はうまく役割を振り、共同でやっている。
 エルフとの溝はまだ解消されていないが、エルフも数人がマリレーネの後ろを行っている。
 何だかんだと、マリレーネはエルフたちにも一目置かれているようだ。

 パオリーアは、俺のそばに来てジッと見つめてくる。
 な、なんだろ? この視線。熱いまなざし……

「私にも何か指示をいただければ」

 そ、そう言うことか! 思わず勘違いしてしまったよ。

「パオリーアは俺のそばにいろ」
「はいっ!」

 満面の笑みで俺に引っ付くように立つ。近い、近い……
 でも、可愛いな、おい!

 ◆

 網の上に肉を置いていく。それを見た奴隷たちも、自分たちで肉を焼いていく。
 人数が多いため、バーベキュー台を四箇所作った。

 親父が、アルノルトと一緒に庭へ出てきた。
 奴隷たちは一斉に膝を地面に付け、胸に手を当てて礼を取る。

「よいよい、今日は礼を取らなくてもいいから。好きに肉を焼きなさい」

 親父、分かってるじゃないか! 空気の読める親父、さすが俺の親だ。本当の親ではないけど、今の俺の肉体にはこの親父の血も流れている。

「肉をみんなで焼くなど初めてじゃな。奴隷たちも私たちを気にせずに食べれば良い」
「「ありがとうございます」」

 奴隷たちも、アルノルトたちも、肉を焼き、タレにつけて食べる。
 シンプルだが、これが一番うまい!牛肉も久しぶりに食べた。

 マリレーネにタンをカットさせると厚すぎたので、アーヴィアに頼んで薄く切ってもらう。
 この娘は、意外と料理が得意そうだ。それにひきかえ、獅子娘は食い意地だけは張っている。
 ふと見ると、マリレーネはヨダレを垂らしそうになりながら、肉が焼けるのを凝視している。

「ほれ、マリレーネ焼けたからこれを食え」

 俺はレモンに似た果実の果汁を垂らしてマリレーネに取り分ける。
 アーヴィアも、真似してレモン汁をかける。この世界ではこの酸っぱい系果実がレモンってことでいいよ、同じ味だし。

「うわっ、これおいしいです! 牛の舌ってこんなにうまいんだ!」
「マリちゃん、そんなに何枚も一度に口に入れたら喉に詰まっちゃうよ」
「大丈夫だよ、うぐっ、ゲホゲホ」

 ゴホゴホ咳き込みながら、さらにタンを二、三枚をまとめて口の中へ。
 まだ食う気かい!

「肉は逃げない。ゆっくり噛んで食べろ」
「はい……申し訳ありません」

 デルトが摘んだこの世界のレタスを、焼いた肉に巻いて食べる。
 真似をして奴隷たちも同じことをする。
 バーベキューは初めてだから、食べ方がわからないんだろう。
 親父も俺がするのを見てから食べている。うん、みんなえらい、えらい。
 でも自由に食べた方が美味しいよ。

「ニート様、こんなおいしい肉を食べたの初めてだよ。ありがとうございますっ!」

 マリレーネが肉を飲み込むと、感激しているのか目がウルウルしている。
 よっぽど肉が好きなんだな。だから、そんなにおっぱいが大きいのかな?

「さあ、肉はまだある。食べられるだけ食べていいぞ!」

 奴隷たちは、返事すると思い思いに肉を焼いて食べた。
 肉のストックはまだ当分あるだろう。しっかりと、筋肉を育てようと。


「ニート様。今夜のご奉仕は誰か要望はありますか?」
「今夜……俺はいいよ。奴隷の中で来たいという子がいたら、その子で。いなかったら、別に今夜はいらないから」
「わかりました。奴隷たちに尋ねてみましょう」

 結局、俺はエールまで飲みまくって酔いつぶれてしまい、アーヴィアとパオリーアが介抱してくれたという……申し訳ない。
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