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<第三巻:闇商人 vs 奴隷商人>

第二話:襲撃!涙のエルフの村

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 鬱蒼と茂った森を進むと、小川のせせらぎが聞こえて来る。
 もう少しでエルフの集落だ。
 この一帯でエルフの集落は二つあり、その一つに向かっていた。

 先日、街で獣人族の女を取り逃がすヘマをやらかした。

 奴隷商人アロルドにバカにされたのも気にくわない。
 あの男は山賊だった頃、いくつかの村を襲撃し略奪の限りを尽くしていたんだ。
 だが、いつの間にか奴隷商人になり、さらに許可証まで発行してもらっている。
 どうやったらそんな顛末になるのか、知りたいものだ。

 だいたい、アロルドというやつは自分が一番強いと思っている男だ。誰かの下につくとは思えなかったが、あっさりと奴隷商人ギルドの傘下に入っている。

 奴隷商ニート・ソレという男がかなりのやり手で、ボロ儲けしていることは聞いている。
 さらに、自分たちの儲けを取りこぼさないために、貴族を丸め込め法律で守られるように仕組んでいるという。
 よほどのやり手なのだろう。
 だが、俺たちも食っていかなければならない。細々とでも手下たちを養う必要があるんだ。

「ジルダ様。もう少しでエルフの村です。おそらく結界が張られていますので、準備をお願いします」
「ああ、わかった。エルフたちに気づかれないように、ここからはゆっくり行くぞ」

 道無き道を行き、草木を手で押しのけ、剣で払って前に進む。
 この辺りには、猛獣がいるが獣の匂いはしないが十分な警戒が必要だ。

「探索板は何か表示されているか?」

 配下の一人が、手元の石板に目を落とす。
 探索魔法が掛けられた魔法道具で、自分の周囲に魔物や動物がいると黒い点で表示される。
 板には同心円が描かれ、中心が自分たちで探索板の上部が進行方向だ。
 魔物の位置は自分たちを中心に、東西南北のどちらかに点が現れる。

「いえ、何も出ておりません。このまま進みましょう」

 手下は十五名。どいつも手練れで腕力も武力も優れている。
 勢いだけは裏社会の連中で一番と自負している。エルフの集落くらいなら十五名あれば一刻もかからず制圧できるだろう。

「結界です」

「ああ、わかっている。お前ら下がっていろ」

 ジルダは、魔法袋から一つの指輪を取り出した。
 魔族に作らせた闇魔道具だ。結界を破壊する力があり、目の前の半透明の膜を一瞬にして取り去ることが可能だ。
 だが、使うには相応の魔力が必要だった。そのためジルダにしか扱えない。

 指輪をはめ、軽く結界の膜に触れると意識を集中させる。

「ぬぁあああっ! 結界破壊バリアーディストラクション!」

 指輪が一瞬光ると、半透明の膜が吸い込まれるように指輪に集まって行く。
 みるみると、周囲から結界の膜が取り除かれて行くのが肉眼でもわかり、手下たちは息を飲んだ。
 いつ見ても、この闇魔道具はすごいと呟く。

「おい、もたもたするな。行くぞ!」

 そこからは早かった。
 一気に、集落に近づくと木と木の葉で出来た家屋に次々と火を放つ。
 逃げ惑うエルフに縄を投げ、捕まえると縛り上げて行く。
 何人かの戦士らしいエルフが、風魔法を放ち行く手を阻もうとするが、闇魔道具をつけたジルダには傷一つ付けることはできなかった。
 エルフの精霊魔法を無効化し、手下が剣で一刀両断して行く。いつもの通りだ。

 気づけば、少しの時間であっという間に集落全員を制圧できた。
 闇商人ジルダの名声は、この手際の早さにあった。ジルダが現れると何も残らないと言われるほど、綺麗に略奪され尽くす。
 エルフは女が十人、男が八人。老人は全て斬り殺した。
 泣き叫び許しを乞うエルフにも容赦しない。全て売り払うんだ。

「お前たちには、奴隷環をつけた。逃げようとしても無駄だ。俺の側から離れるとドカーン! だからな! お前たち、そいつらを素っ裸にしろ」

 ジルダの号令に、男たちは卑猥な笑いを浮かべながらエルフたちの服を剥ぎ取って行く。
 抵抗する女には容赦のない張り手がバシバシと飛ぶ。いつ見てもこの光景は快感だ。
 男エルフも手足を縛られているため、抵抗むなしく全て剥ぎ取られて行く。

「おぉ、いつ見ても壮観だな、おい。やっぱりエルフは肌が綺麗だ。こいつら毎日水浴びしているし、肉を食わないからえぐい体臭もねぇからうまそうだぜ!」

 ひゃっひゃっヒャと、手下たちは面白がって笑うと、エルフたちは絶望の表情を浮かべうなだれた。
 女エルフたちは、縛られた手でなんとか胸を隠そうと身を屈めるが、尻を叩かれヒィと悲鳴をあげる。

 どうだ! 見たか、俺の力を。奴隷商人みたいにまどろっこしいことしなくても、こうやって奴隷なんぞ手に入るんだ。
 ジルダは満足そうに高笑いすると、戦利品であるエルフたちの縄を引っ張った。

「さあ、引き上げるぞ。金目のものは全て魔法袋に入れろ!」

 次々と、エルフの集落にあった金になりそうなものを袋に入れて行く。
 これだけエルフがいたら大儲けだ。これは、ひさしぶりに奴隷市場を開くとするか。



◇ ◇ ◇


 新しく設置したユルトに戻ると、奴隷たちを縄で一列に縛り上げると、檻の中に押し込む。
 街の自警団たちに追われたため、場所は山間に移している。
 移動式テントをアジトとしている闇商人は、フットワークが軽いのも特徴だった。

 檻に入れたエルフたちを一瞥し、戦果に満足したジルダは一人のエルフに目をつけた。
 涙を流しているが、ひときわ美しい金髪のエルフが立っている。過去最高の極上の女だ。
 女のすすり泣きがずっと耳に残るが、これも快感だった。支配欲が満たされる。
 そのひときわ美形のエルフを檻から引っ張り出すとユルトへ引き入れた。
 今夜の慰みものにするためだ。


「ジルダ様、あっしらもどれか貸してもらっていいですか?」
「ああん? そうだな。お前たちにも一人くらいくれてやろう。ただし売り物だからな、ほどほどにしろ。一人だけだぞ!」
「おぉ、ありがとうございやす!」

 頭を下げた男は、左右の仲間の肩を叩くと急いでユルトを出て行った。
 十数人もの男たちの相手をさせられる女も大変だろうが、どうせ売られた先ではもっと酷い目にあうのだ。
 殺されなかっただけ感謝するだろう。

「おい、いつまで突っ立っている。さっさとそこに跪け!」

 エルフはわなわなと唇を震わせ、恐怖に顔を歪める。
 美しい顔を恐怖のどん底に落とす快感にジルダは身震いした。
 やっぱりやめられんな。

 しゃがんだ女の背後に回ると、縄で縛られた手を縄ごと持ち上げる。
 両手を上げさせられた女は、痛いと声にしたが髪を後ろに引っ張られ顔を上に向けられた。
 なかなかの上玉だ。高く売れるだろうから、できれば殴りたくはない。

「おい、お前は俺がしばらく面倒を見てやる。名前は? 名前があるんだろ?」
「ヴィヴィ……です」


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