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<第三巻:闇商人 vs 奴隷商人>
第七話:エルフに会いにいく
しおりを挟む夕刻にマーティの街にたどり着いた俺たちは、門番に保護されたエルフたちがいる場所を尋ねた。
知らなかったのか、慌ただしく小部屋の中に入ったり出たりした門番は、治安官のところだという。
この国では、王都に衛兵や騎士などがおり、その他の街には王都から派遣された治安官が配属されている。
その下に街の自警団がいるのが普通だ。
治安官は、裁判官を兼ねているのでそれぞれの街で大きな権限を持っていることになる。
「旦那様。治安官はどちらに行けば会えるのでしょうか?」
パオリーアは遠征は初めてで、おそらくダバオの街以外に出たことはないはず。
だから、治安官といってもピンとこないのだろう。
街の貴族が住む一角に住んでいるのはたしかだが、実は俺も知らなかった。
わからなければ、自警団に聞けばいいだろうということで自警団の元へと向かう。
「パオリーア。あそこが自警団の詰所のようだ。あそこで聞いて来てくれ」
「わかりました」
くるんと丸まった尻尾が左右に振れている。
用事を頼まれてうれしい感情がダダ漏れだ。
しばらくするとパオリーアは、浮かない顔をして戻って来た。
「旦那様。私には教えられないと言われました。私の身分を尋ねられて奴隷って答えたので、仕方がないのかもしれませんが。お役に立てなくて申し訳ありません」
「いいや、俺が悪かった。では、俺が聞いてくるとしよう」
俺は馬車を降りると、自警団の詰所に入った。
二人の自警団が何やら書類作成をしている。まだこの国では紙は一般的ではないが、役人は紙を使用している。
一人の男が顔を上げ、俺の姿を確認すると言った。
「なんの用件だ! こっちは今忙しいんだ」
「それは悪かったな。教えて欲しいことがあるんだが、さっき俺の侍女が来ただろう?」
「ああ、さっきの犬人族の女の主人か、あんたは。で?」
不遜な態度に腹が立ったが、ぐっと我慢だ。
喧嘩しても、勝てそうにないし、得なことなど何もない。
「俺は奴隷商人ニート・ソレだ。奴隷商会ギルドの者だが、聞きたいことがある」
「奴隷商会……って、あなたがソレ様でしたか」
二人は、ペンを放り投げるようにして立ち上がると、敬礼した。
そんなに敬われるような立場ではないのだが、どういうことだろう?
「大変失礼な態度を取ってしまい、申し訳ありません。えっと、たしか闇商人に捕らえられていたエルフの所在でしたね。お話はお聞きしています」
自警団の一人は、そう言うと一枚の紙を取り出した。
そこに、居場所の地図を書いて渡してくれた。親切にありがたいことだが、地図がざっくりしすぎてよくわからない。
「現在地はどこだ? この道はこの前の道か?」
俺は、ひとつひとつ謎を解決し、地図が理解できるように書き足した。
もう少し、絵心がある自警団だといいのだが……
俺は、パオリーアを伴ってエルフたちが保護されているという神殿へと向かった。
◇ ◇
元は白い建物であっただろう神殿は、少し灰色がかり薄汚れているが厳かな雰囲気を醸していた。
入ると正面にステンドグラスがあり、色とりどりの光を散らしている。
正面に天使のような翼を持つ女の石像が立っていた。
「わあ、すごくきれいですね! あっ、あの方が女神様でしょうか?」
パオリーアが、お上りさんのようにキョロキョロと神殿内を見て驚いている。
俺にとっては王都の神殿に比べたらしょぼくて、元いた世界で近所にあった教会くらいにしか見えない。
だが、パオリーアは初めて神殿を見たようで、たえず感嘆の声を上げていた。
「あれが女神様だな。この国の女神は豊穣の女神様だから、おっぱいが大きいだろ」
「うはっ、旦那様、そんな、大きな声で……女神様に失礼ですよっ」
信仰心の厚い人が聞いたら卒倒するだろう、俺の女神へのセクハラ発言にパオリーアは諭した。
大きいおっぱいにと聞いてパオリーアは、まるで女神に対抗するかのように胸を持ち上げて見せる。
「パオリーアも大きいから、俺にとっては女神のようなものだ」
俺は、そう言いながらツンと尖った先端を指で弾いた。
「いやんっ、女神様だなんて、そ、そんな……」
恥ずかしそうにうつむくと、頬を赤らめる。当然、尻尾はブンブンと左右に揺れている。
元いた世界でこれやったらセクハラで訴えられてもおかしくないが、今は逆に喜ばれるとは……
「どなたでしょうか?」
突然、背後から声をかけられ、振り返ると神官の衣装を着た若い女性が立っていた。
「ニート・ソレと言う者ですが、こちらにエルフを保護していると聞きました」
「はい、そうですが……なにか?」
俺は、事の経緯を話しエルフと話がしたい旨を伝えた。
あんがい、すんなりと許可がおり俺とパオリーアは別棟へと案内された。
神殿の裏手に二階建ての小さな家が建っていた。
神官長の家だったそうだが、今は神官長はおらず神官のあの女性が代行を務めているらしい。
その神官に頭を下げてお礼を言うと、建物内に入った。
「ソレ様。この者たちが保護しているエルフになります」
屋敷の一階の応接間に集められた奴隷たちは十数人ほど。
男も女もいるが、顔に生気がなく頬がこけてしまっている。
「ずいぶんと痩せているようだが、食事は取っていないのか?」
「いいえ、そんなことはありません。ささやかながらも食事は与えています」
失礼なことを言うなと言わんばかりに口をとんがらせて、神官の女は言った。
俺は、エルフたちを一人一人顔を見ていくと、驚くほどの美形エルフがいた。
エルフは総じて男女共顔立ちが整っているので、元いた世界の基準では美男美女揃いだが、一人飛び抜けて美しい。
「お前たちをさらった闇商人ジルダについて知りたい。だれか教えてもらえないだろうか?」
俺は、わざとらしく頭を深々と下げた。
奴隷商人と聞いたエルフたちは、身を固くしていたからだ。
「そのことなら、ヴィヴィが一番詳しいんじゃねえか? なんてたってジルダの側女だったんだからな」
エルフの男は吐き捨てるように言うと、目を釣り上げて横を見る。
その視線の先には、あの飛び抜けて美しいエルフがいた。
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