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三度目①
目の前に隈の酷い目を見開いてこっちを見上げる白髪と、背後にある高そうな絨毯。そして白髪の顔の両側に置かれた俺の手……。
はたから見れば俺が白髪を押し倒したかのように見えるだろう。断じて違うからなっ!? 俺は好きで白髪を押し倒した訳ではない! 不可抗力だ‼
……時は少し遡る。
俺はいつもどおり畑で麦を刈っていた。だけど魔女の塔が視界の隅に入るたび白髪のことが頭をよぎり、ちゃんと解熱剤を飲んだのか、ベッドで寝たのかとか色々考えてしまいまったく作業に身が入らなかった。
大丈夫だったのかどうか知りたくても魔女の塔に行ける方法なんてない。唯一の方法はあの塔に飛ばされた時だけ。しかしそれが次あるのかどうかなんて分からない。実際あの日から十日は経っていた。
(だあああああっ!魔女は何がしたいんだああ!)
魔女の目的も分からずもやもやして思わずそう心の中で叫んだ。
その瞬間。
俺は魔女の塔……白髪の目の前に飛ばされ、受け身を取れなかった俺はそのまま白髪に体当たりして……冒頭に至るわけだ。
「えーっと、悪いな」
うん、一先ず白髪の上から退こうか俺。さっと白髪から距離をとった俺は辺りを見渡した。見た感じ前回と同じ部屋のようだ。
「おい」
ついまじまじと辺りを見渡していると、白髪に声を掛けられ「ん?」とそっちを振り向くと、目の前に白髪の顔があった。
「! うおわぁっ!」
俺はびっくりして後ろに仰け反った。
「うるさい」
「いや、そっちがビビらせたんだろうが」
眉間に皺を寄せる白髪に俺はちょっとだけムッとした。……ていうか。
「なんで俺の手首を掴んでるんだよ」
絨毯についていた俺の右手……正確には右手首を白髪が掴んでいた。
「俺の質問に答えろ」
おい、無視かよ。
「お前はヴァルアラ神の使者じゃないのか?」
白髪の言葉に俺は「は?」とぽかんとした。俺がヴァルアラ神の使者?
「……ぶはっ! いやいやいや、ヴァルアラ神の使者って。それは神殿の人たちのことだろ? 俺の服を見ろよ。平民! 平民の俺が使者っておこがましいにも程があるだろ!」
俺はケタケタ笑った。ヴァルアラ神とはセリオス帝国が信仰している神様で、この世界の創造神であり、治癒神とも言われている。……そう、治癒の神様だから治癒属性の人たちのことを‟ヴァルアラ神の使者„と呼んでいるのだ。でもそう呼ばれるのは神殿の人たちだけで、俺には縁のない呼び名だ。
「……なら、なんで……。俺は一体いつ許されるんだ……」
零すように吐かれた白髪の言葉に、俺は首を傾げた。許されるって……。
(そういや前にも……)
似たようなこと言っていたな。確か許されたのかとかどうとか……と、そこで俺はここに来たかった理由を思い出した。
「なあ、お前。この間ちゃんと解熱剤飲ん……」
解熱剤を飲んだのか、ちゃんとベッドで寝たのか聞こうとして白髪の顔を覗き込んだ俺はぎょっと目を見開いた。白髪の顔が真っ青なのだ。
「お、おい!大丈……っ‼」
声を掛けようとした俺は右手首に走った痛みに顔を歪めた。白髪が俺の右手首を爪が食い込むほどの力で握りしめてきたのだ。俺は咄嗟に左手を伸ばし白髪の額辺りに触れた。
「い、いたいの、いたいの、とんでいけ」
掌から淡い光が溢れ出す。白髪が真っ青になった原因は分からないし、俺の治癒魔法は痛みを和らげることしか出来ないから、効果があるかどうかは分からない。でも掛けないよりはずっとマシだ。
(どうか効きますように……)
そう願いながら白髪に治療魔法をかけた。
少しすると俺の右手首を強く握りしめていた白髪の手から力がふっと抜けた。効いたのか? と俺は白髪の額から手を離すと白髪がこっちを見てきた。 前回と同じく困惑した表情を浮かべて。
「……なんで、お前の……」
白髪はそれだけ呟くと、そのままその場に倒れ込んでしまった。
「えっ? お、おいっ!」
慌てて白髪の顔を覗き込むと、白髪は小さな寝息をたてていた。
「ね、寝ている……だけだよな?」
顔色は幾分良くなっているが、目の下の隈は酷いままだ。
「金髪……探すか」
俺は力の入らない足を𠮟咤して立ち上がった。
はたから見れば俺が白髪を押し倒したかのように見えるだろう。断じて違うからなっ!? 俺は好きで白髪を押し倒した訳ではない! 不可抗力だ‼
……時は少し遡る。
俺はいつもどおり畑で麦を刈っていた。だけど魔女の塔が視界の隅に入るたび白髪のことが頭をよぎり、ちゃんと解熱剤を飲んだのか、ベッドで寝たのかとか色々考えてしまいまったく作業に身が入らなかった。
大丈夫だったのかどうか知りたくても魔女の塔に行ける方法なんてない。唯一の方法はあの塔に飛ばされた時だけ。しかしそれが次あるのかどうかなんて分からない。実際あの日から十日は経っていた。
(だあああああっ!魔女は何がしたいんだああ!)
魔女の目的も分からずもやもやして思わずそう心の中で叫んだ。
その瞬間。
俺は魔女の塔……白髪の目の前に飛ばされ、受け身を取れなかった俺はそのまま白髪に体当たりして……冒頭に至るわけだ。
「えーっと、悪いな」
うん、一先ず白髪の上から退こうか俺。さっと白髪から距離をとった俺は辺りを見渡した。見た感じ前回と同じ部屋のようだ。
「おい」
ついまじまじと辺りを見渡していると、白髪に声を掛けられ「ん?」とそっちを振り向くと、目の前に白髪の顔があった。
「! うおわぁっ!」
俺はびっくりして後ろに仰け反った。
「うるさい」
「いや、そっちがビビらせたんだろうが」
眉間に皺を寄せる白髪に俺はちょっとだけムッとした。……ていうか。
「なんで俺の手首を掴んでるんだよ」
絨毯についていた俺の右手……正確には右手首を白髪が掴んでいた。
「俺の質問に答えろ」
おい、無視かよ。
「お前はヴァルアラ神の使者じゃないのか?」
白髪の言葉に俺は「は?」とぽかんとした。俺がヴァルアラ神の使者?
「……ぶはっ! いやいやいや、ヴァルアラ神の使者って。それは神殿の人たちのことだろ? 俺の服を見ろよ。平民! 平民の俺が使者っておこがましいにも程があるだろ!」
俺はケタケタ笑った。ヴァルアラ神とはセリオス帝国が信仰している神様で、この世界の創造神であり、治癒神とも言われている。……そう、治癒の神様だから治癒属性の人たちのことを‟ヴァルアラ神の使者„と呼んでいるのだ。でもそう呼ばれるのは神殿の人たちだけで、俺には縁のない呼び名だ。
「……なら、なんで……。俺は一体いつ許されるんだ……」
零すように吐かれた白髪の言葉に、俺は首を傾げた。許されるって……。
(そういや前にも……)
似たようなこと言っていたな。確か許されたのかとかどうとか……と、そこで俺はここに来たかった理由を思い出した。
「なあ、お前。この間ちゃんと解熱剤飲ん……」
解熱剤を飲んだのか、ちゃんとベッドで寝たのか聞こうとして白髪の顔を覗き込んだ俺はぎょっと目を見開いた。白髪の顔が真っ青なのだ。
「お、おい!大丈……っ‼」
声を掛けようとした俺は右手首に走った痛みに顔を歪めた。白髪が俺の右手首を爪が食い込むほどの力で握りしめてきたのだ。俺は咄嗟に左手を伸ばし白髪の額辺りに触れた。
「い、いたいの、いたいの、とんでいけ」
掌から淡い光が溢れ出す。白髪が真っ青になった原因は分からないし、俺の治癒魔法は痛みを和らげることしか出来ないから、効果があるかどうかは分からない。でも掛けないよりはずっとマシだ。
(どうか効きますように……)
そう願いながら白髪に治療魔法をかけた。
少しすると俺の右手首を強く握りしめていた白髪の手から力がふっと抜けた。効いたのか? と俺は白髪の額から手を離すと白髪がこっちを見てきた。 前回と同じく困惑した表情を浮かべて。
「……なんで、お前の……」
白髪はそれだけ呟くと、そのままその場に倒れ込んでしまった。
「えっ? お、おいっ!」
慌てて白髪の顔を覗き込むと、白髪は小さな寝息をたてていた。
「ね、寝ている……だけだよな?」
顔色は幾分良くなっているが、目の下の隈は酷いままだ。
「金髪……探すか」
俺は力の入らない足を𠮟咤して立ち上がった。
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