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第二章~国持ち大名~
上洛への道2
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黙って聞いている定秀に対し刹那は話を続けた。
「家臣を大切にする主だからこそ家臣は命をかけて主のために忠義を尽くすことができる。定秀殿はこのままでいいとお思いですか?」
「確かにわしは先代の義賢様、先々代の定頼様には大層よくしていただいた。故に義治様にも同じように忠義を尽くしてきた。だが、義治様にとってはわしや賢豊殿は目の上のたんこぶに過ぎなかったのかの。賢秀、今の蒲生家の当主はお主だ。どうするかはお主が決めよ。わしはそれに従う。すまんな、神威殿、わしに六角家を裏切ると宣言する度胸はないようだ。」
「いえ、定秀殿が長くお仕えしてきた主家を悪く申しましたこと、お許しください。」
定秀に蒲生家のこれからについてを急にふられた賢秀は焦っていた。
「私が、どのようにするか。」
「わしと神威殿の話を聞いてお前が思ったことをそのままこれからの蒲生家の進む道とせよ。」
定秀にそう言われた賢秀は少し考えるそぶりを見せた後に刹那のほうを見つめ
「神威殿、我ら蒲生家は徳川に降ること致します。つきましては家康殿におとりなしをお願い申し上げる。」
「はい、お任せ下さい。」
こうして刹那は蒲生一族を徳川家に引き入れることに成功したのである。
刹那は賢秀を連れて家康の元に戻ることにした。定秀は話がまとまるまでの間、日野城にいて寝返りがバレないようにすることになった。
「殿、ただいま戻りました。」
「刹那、よく戻った。してその後ろに控えているのが蒲生家の者か?」
「お初にお目にかかります。蒲生賢秀と申します。このたびが謁見叶い、恐悦至極にございます。」
賢秀はそう言って頭を下げた。
「そうか、よく来てくれた。歓迎するぞ賢秀。ささ、頭を上げてこちらへ参られよ。」
家康はそう賢秀を席へと促してその後に六角氏攻略についての情報を賢秀に聞いた。その間刹那もその場で賢秀の話に耳を傾けていた。
一通り話が終わると忠勝に兵を預けて日野城へと向かわせた。その中には賢秀もおり、忠勝の兵が日野城に付き次第こちらへ寝返りを表明する形となったのである。
また、忠次に日野城をこちらで落としたことを信長に報告させに行かせた。
信長の元から戻った忠次はすぐにその結果を家康達に報告した。
「殿、織田殿に報告しましたところ日野城はそのまま蒲生殿の領地とし統治を任せて問題ないとのことでございました。」
「そうか、忠次よくやってくれた。」
「いえ、私は刹那殿に言われたように申してきたまででございますれば。それにこの軍の総大将の織田殿になにももうさずにいれば蒲生家の処分をあちらでしだすと申したかもしれませんし、ようございました。」
重臣である蒲生家の離反により六角氏は結束力をなくし次々に家臣が織田や徳川、浅井へと降伏してきた。
家臣の離反で戦う力をなくした六角義治は西へと逃げて行った。
これにより織田は南近江をも領地としたのである。
「皆、今回の六角攻めご苦労であった。3日後に我らは上洛する。」
「気を緩めずに参りましょう。京には三好勢がおります。」
「徳川殿、我らにかかれば三好など敵ではありますまい。」
「いや長政、家康殿の申す通りだ。最後まで気を抜いては我らが大軍と言えどどこで足をすくわれるかわからんからな。」
「はっ。徳川殿、申し訳ございません。」
「いえ、私も家臣達にそのように言われたことがありますので。」
「それを申したのは刹那ではないのか?」
信長はニヤリとしながら家康を見た。
「はい。その通りにございます。」
それに家康は苦笑いをしながら返す。
「あのように頭が切れるものが側にいて羨ましいぞ。」
「なんの、織田家の御家臣たちも皆優れた者ばかりではありませんか。」
当主三人だけの話し合いは賑やかなまま終わった。
家康が徳川の陣に戻ってくると刹那が待っていた。
「刹那どうした?何か用であったか。」
「はい。急な用ではなかったのですが、直盛殿から報せが参りましたのでご報告と。」
「ふむ。聞こう。」
「先ほど私のもとに忍びがやってきまして。筒井家が降伏してまいりました。」
「なにっ。それは誠かっ。」
「はい。はじめこそ抵抗を見せていた筒井家でしたが、市川城を1日で落城させると筒井城にて降伏を申し入れてきたとのことにございます。」
「そうか。良い知らせで良かったわ。して、その後はどうするつもりだ?」
「私としてはこれ以上に西へ領土を増やせば織田のいらぬ怒りを産むことにもなりかねませんので。ここで引き上げようかと思います。三好が攻めて来るようであれば返り討ちにして領土を広げるのも大義名分ができるので可能となりますが、織田が六角を破ったことにより三好は織田に目を向けるでしょうからこれ以上進むことは不可能かと。」
「そうか。では守りが薄くならないよう、兵を残しながらそのほかの兵は伊勢へ引かせよ。」
「承知致しました。」
刹那はそう言うと忍びに直盛への書状を渡してやった。
それから徳川軍は織田の上洛軍と共に京へと入った。
京に入る途中に三好の攻撃に遭うも先陣を勤めていた柴田勝家が見事に返り討ちにし京は織田の支配下に収まった。
「家臣を大切にする主だからこそ家臣は命をかけて主のために忠義を尽くすことができる。定秀殿はこのままでいいとお思いですか?」
「確かにわしは先代の義賢様、先々代の定頼様には大層よくしていただいた。故に義治様にも同じように忠義を尽くしてきた。だが、義治様にとってはわしや賢豊殿は目の上のたんこぶに過ぎなかったのかの。賢秀、今の蒲生家の当主はお主だ。どうするかはお主が決めよ。わしはそれに従う。すまんな、神威殿、わしに六角家を裏切ると宣言する度胸はないようだ。」
「いえ、定秀殿が長くお仕えしてきた主家を悪く申しましたこと、お許しください。」
定秀に蒲生家のこれからについてを急にふられた賢秀は焦っていた。
「私が、どのようにするか。」
「わしと神威殿の話を聞いてお前が思ったことをそのままこれからの蒲生家の進む道とせよ。」
定秀にそう言われた賢秀は少し考えるそぶりを見せた後に刹那のほうを見つめ
「神威殿、我ら蒲生家は徳川に降ること致します。つきましては家康殿におとりなしをお願い申し上げる。」
「はい、お任せ下さい。」
こうして刹那は蒲生一族を徳川家に引き入れることに成功したのである。
刹那は賢秀を連れて家康の元に戻ることにした。定秀は話がまとまるまでの間、日野城にいて寝返りがバレないようにすることになった。
「殿、ただいま戻りました。」
「刹那、よく戻った。してその後ろに控えているのが蒲生家の者か?」
「お初にお目にかかります。蒲生賢秀と申します。このたびが謁見叶い、恐悦至極にございます。」
賢秀はそう言って頭を下げた。
「そうか、よく来てくれた。歓迎するぞ賢秀。ささ、頭を上げてこちらへ参られよ。」
家康はそう賢秀を席へと促してその後に六角氏攻略についての情報を賢秀に聞いた。その間刹那もその場で賢秀の話に耳を傾けていた。
一通り話が終わると忠勝に兵を預けて日野城へと向かわせた。その中には賢秀もおり、忠勝の兵が日野城に付き次第こちらへ寝返りを表明する形となったのである。
また、忠次に日野城をこちらで落としたことを信長に報告させに行かせた。
信長の元から戻った忠次はすぐにその結果を家康達に報告した。
「殿、織田殿に報告しましたところ日野城はそのまま蒲生殿の領地とし統治を任せて問題ないとのことでございました。」
「そうか、忠次よくやってくれた。」
「いえ、私は刹那殿に言われたように申してきたまででございますれば。それにこの軍の総大将の織田殿になにももうさずにいれば蒲生家の処分をあちらでしだすと申したかもしれませんし、ようございました。」
重臣である蒲生家の離反により六角氏は結束力をなくし次々に家臣が織田や徳川、浅井へと降伏してきた。
家臣の離反で戦う力をなくした六角義治は西へと逃げて行った。
これにより織田は南近江をも領地としたのである。
「皆、今回の六角攻めご苦労であった。3日後に我らは上洛する。」
「気を緩めずに参りましょう。京には三好勢がおります。」
「徳川殿、我らにかかれば三好など敵ではありますまい。」
「いや長政、家康殿の申す通りだ。最後まで気を抜いては我らが大軍と言えどどこで足をすくわれるかわからんからな。」
「はっ。徳川殿、申し訳ございません。」
「いえ、私も家臣達にそのように言われたことがありますので。」
「それを申したのは刹那ではないのか?」
信長はニヤリとしながら家康を見た。
「はい。その通りにございます。」
それに家康は苦笑いをしながら返す。
「あのように頭が切れるものが側にいて羨ましいぞ。」
「なんの、織田家の御家臣たちも皆優れた者ばかりではありませんか。」
当主三人だけの話し合いは賑やかなまま終わった。
家康が徳川の陣に戻ってくると刹那が待っていた。
「刹那どうした?何か用であったか。」
「はい。急な用ではなかったのですが、直盛殿から報せが参りましたのでご報告と。」
「ふむ。聞こう。」
「先ほど私のもとに忍びがやってきまして。筒井家が降伏してまいりました。」
「なにっ。それは誠かっ。」
「はい。はじめこそ抵抗を見せていた筒井家でしたが、市川城を1日で落城させると筒井城にて降伏を申し入れてきたとのことにございます。」
「そうか。良い知らせで良かったわ。して、その後はどうするつもりだ?」
「私としてはこれ以上に西へ領土を増やせば織田のいらぬ怒りを産むことにもなりかねませんので。ここで引き上げようかと思います。三好が攻めて来るようであれば返り討ちにして領土を広げるのも大義名分ができるので可能となりますが、織田が六角を破ったことにより三好は織田に目を向けるでしょうからこれ以上進むことは不可能かと。」
「そうか。では守りが薄くならないよう、兵を残しながらそのほかの兵は伊勢へ引かせよ。」
「承知致しました。」
刹那はそう言うと忍びに直盛への書状を渡してやった。
それから徳川軍は織田の上洛軍と共に京へと入った。
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