チートな家臣はいかがですか?

織田っち

文字の大きさ
36 / 157
第三章~筆頭家老としての行動 関東編~

関東遠征3

しおりを挟む
「まだだ、まだ引き付けよ。皆焦るなよ私を信じろ。」

左近が緊張をしていたのはその指揮下にいた兵たちにも伝わっていた。ふだんなら私を信じろなどとわざと口にしない左近がそれを言ったことがその証拠であった。
しかし、兵たちからしたらそんなことは言われなくてもと言うことであった。兵たちは皆「左近様の指示を信じて戦うのみ。」そう思っていたからである。

上杉軍の先頭が空堀に入ろうか

「今だっ。放てっっ。」

そんなタイミングで左近は砲撃の指示を出した。

神威軍の鉄砲が一斉に火を吹いた。

その轟音から1秒とかからずに上杉軍の先頭を走っていた騎馬隊が次々と倒れていった。

生き残った先頭の者も目の前にある深い空堀に足を止めた。
だが、それはもう格好の的でしかなく次々と打ち倒されていく。

後ろのほうで前が進まなくなったのを気にした景家が

「次の斉射が来る前に馬防柵など壊してしまうのだっ。」

そう声をかけた。
しかし、前の兵たちは鉄砲に恐れているわけではなく空堀のために進めないのでそう声をかけられても無闇に進むことは出来なかった。
中には空堀を下り馬防柵まで来ようとする者もいたが、左近は率先してその者から倒して行ったためなかなか後には続けなかった。

「上杉の兵さん達、そんなところで立ち止まってたら鉄砲の餌食になるだけだぞ。早いとこ撤退をしたらどうだ。」

左近がそう上杉軍を挑発した。

するとそれに怒りを覚えた上杉軍が空堀に次々と侵入してきた。
それを見た左近はニヤリとすると鉄砲玉の雨を更にお見舞いするのであった。

「このままではまずい。皆、一時撤退だ。」

これ以上の被害を避けるべきと考えた景家は撤退命令を出し、本陣へと戻って行った。

それを確認した左近は兵達を労い、見張りの兵以外に休むように命を出した。

「左近殿、うまくいきましたね。」

「ええ、昌幸殿もこのような策を出せるようにならなければなりませんよ。」

「はいっ。」

一方、謙信は景家から報告を聞いていた。

「お館様、申し訳ございません。おめおめとやられてしまいました。」

「いえ、被害を最小限に抑えたのは景家の手柄でしょう。良い判断でした。して、詳細を伝えてください。」

それから謙信は馬防柵の下に空堀があること、止まることのなかった銃撃、統率の取れた動き、そして武田の兵ではなく、徳川の兵であったことなどを知った。

「今回、徳川と武田が組んで北条を攻めているのは知っていましたが、まさか武田の守りに徳川の兵が使われていようとは。」

「いかがなさいましょう。」

「騎馬隊を中心とした編成である我らに鉄砲を中心とする編成である軍を相手にするのは不利でしかない。」

「お館様、ここは様子を見るのが上策かと思います。徳川の兵であると言うことはこちらが攻めなければあちらから攻撃をしかけてくることはないでしょう。殿だけを残し迂回して沼田あたりを攻めるのがよろしいのではないでしょうか。」

沼田への迂回を提案したのは上杉の知恵袋である家老、直江景綱であった。

「そうですね。景家、お主にここの殿を任せます。」

謙信は沼田への迂回を決めるとその夜には海津城付近から姿を消した。

翌朝、それを確認した左近は全軍に撤退を命じた。

「左近殿、撤退してよろしいのですか?いつまた上杉が来るとも限らぬのでは。」

「いや、上杉がいなくなったと言うことは沼田あたりにでも兵を迂回させた証拠でしょう。それならばまたこちらに向かってくることはありませんな。」

「沼田に向かったのであればそちらに向かわなくてよろしいのでしょうか。」

「沼田は先日、武田が落としたばかりの城、武田の兵が守りを固めているでしょう。我らが向かう必要はありません。それに殿からは海津城付近に現れた上杉軍を撤退させた後はそこを離れるようにと指示されています。」

「なぜに殿はそのような指示を?」

「同盟を組んでるとは言え縁組を交わしているわけではないのでその軍が長々と領地深くにいることで波風を立てないためでしょうな。」

左近の意見を聞いてなるほどと頷くばかりの昌幸であった。
後に神威家にとってなくてはならない人物になる昌幸もこの時はまだ様々なことを学ぶ若人であった。

玉縄城攻めを担当していた刹那は玉縄城を完璧に包囲すると降伏勧告を促すことにした。

「北条方は乗ってくるだろうか。」

「義父上、ここは間違いなく乗ってこないでしょう。しかし、この降伏勧告で揺らぐ者も城兵の中には少なからず現れます。その者達と連絡を取り城内で内乱を起こさせます。そうすれば我らが攻めるだけにございます。」

「しかし、玉縄の城主は北条家一門の北条綱成だ。そんなに易々と策に引っかかるとは思えぬが。」

「それを見極めるためでもあります。殿のためにも北条家の有能な人材は生かして配下にしたいですから。もし、この策が成功するようであれば北条綱成はそこまでの男です。」

そう言う刹那の顔を見た直盛は息子がこのような冷めた目をするのを初めてだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...