40 / 157
第三章~筆頭家老としての行動 関東編~
関東遠征7
しおりを挟む
「父上っ、城門が突破されましたっ。父上だけでもお逃げください。」
義弘がそう義堯の元に避難を促すために来るとそこには丹波の姿はなく、外を見る義堯がいるだけであった。
「こっ、これはどうゆうことだっ。丹波殿は一人で逃げられたと言うのかっ。これだから忍びは信用できんのだっ。」
怒りを現わにする義弘のほうを向いた義堯の顔は普段と変わらない落ち着いた顔であった。
「義弘、どうしてここにおる。お主には指揮を任せたはずだが。」
「城門を突破された故、父上にお逃げいただくために参ったのでございます。」
それを聞いた義堯は義弘のほうに近づくと
「馬鹿者がっぁぁぁ。」
と言いながら義弘の頬を殴った。
「家臣が必死に戦っている最中にその場を離れるのが総大将のやることかっ。」
父からの叱咤に言葉が出てこない義弘。
「なぜに佐竹があのように勢いを増したかわかるか。」
「いえっ・・・・。」
「当主である義重が前線に出てきたからだ。家臣よりも前に総大将が出ていれば家臣達は主を死なせるわけにはいかんと奮起する。義重は鬼義重と言われ戦に強いということばかりが噂されるが領内でも義重を慕う領民がほとんどだそうだ。」
「それは義重が内政にも優れた名君だと言うことですか。」
「いや、違う。義重は人をうまく使う。自らにできぬと判断したことは家臣の才ある者に任せ実行させる。家臣を信じる。それに家臣も応える。だからこそこれだけ戦場でも兵がついてくるのだ。お前にはそこがまだ足りぬ。それが佐竹と里見の差だ。」
義堯がそう言うと義弘は礼をすると自分の持ち場に戻っていった。
「なかなかの演説でしたな。」
屋根裏から姿を現した丹波がそう一言言った。
「なにっ。これでも北条相手に安房を守ってきた里見家の当主なのでな。」
「殿には知らせを入れた故そろそろ来る頃であろう。だが、ここまで粘ってよかったのか?」
「あぁ、義弘はここまでにならねばこれ以上の成長はできぬからな。刹那殿には後でお礼を申し上げなければな。わしのわがままで援軍の到着を遅らせてしまったからな。」
そう、刹那の援軍がここまで来なかったのは丹波を通して義堯が期が来るまで援軍を待ってほしいと頼んでいたからである。
「後は殿の援軍と義弘殿が挟撃して佐竹軍を包囲し終いじゃ。」
「では、それまでまた茶でもしますかな。」
そう言ってまたお茶を飲む出す義堯と丹波。
順調に進んでいたかに見えた攻城だったが、ひとつの知らせにより義重から笑みが消えた。
「伝令、後方より徳川軍襲来っ!!」
「なっ、なんだとっ!!それはまことかっ!!」
「はっ、もう目前に迫っております。」
「昭為、まだ来ぬはずではなかったのかっ!!」
「申し訳ございませぬ。まさかここまで早いとはっ。」
それから1時間後、前方の里見軍と後方の神威軍を相手に抵抗を見せていた佐竹軍も次第に数を減らしこれ以上の抵抗は無駄に兵を死なせるだけだと判断した義重は降伏した。
佐竹の名だたる武将は皆捕縛され、神威は久留里城に入城した。
大広間には義堯を始め里見家の面々が刹那の到着を待っていた。
上座に座っていた義堯は神威が来たのを見ると上座を譲り自らは下座へと座り直した。
「今回は援軍かたじけのうございました。」
「いえ、遅くなり申し訳ありませんでした。よう佐竹の猛攻を耐えてくださいました。」
「息子の義弘が家臣をよくまとめ佐竹を抑えてくれましたので。」
「そうですか。義弘殿、お見事でございますな。」
「はっ。ありがとうございます。」
「当家にとっても里見家は関東の要所を抑える大事な家です。困ったことがあればなんなりと言ってください。」
「ありがたきお言葉ありがとうございます。」
義弘がそう答えると刹那は捕縛した義重を連れてこさせた。
「あなたが佐竹義重殿ですね。」
「ああ。そう言うお前は誰だ。なぜお主のような若造がそこにいる。俺を愚弄しておるのか!!」
「これは失礼致しました。私は徳川家の筆頭家老を務めております、神威刹那と申す者でございます。里見家は当家の傘下故、義堯殿ではなく私がここに座っているわけです。ご理解いただけましたか?」
「なっ、お主が徳川の筆頭家老だとっ。」
「はい、殿より伊勢、志摩、大和、紀伊、伊賀を任されております。」
それを聞いて更に言葉を失う義重。
その義重を見て笑いをこらえる義堯。
「私の紹介も終わったところで本題に入りましょうか。佐竹義重殿、あなたは徳川に降る気はありますか?」
「はっ?」
義重は自らの命を持って家臣や兵の助命を願うつもりでいた。それなのに刹那から予想だにしない提案が出てきたため、混乱した。
義弘がそう義堯の元に避難を促すために来るとそこには丹波の姿はなく、外を見る義堯がいるだけであった。
「こっ、これはどうゆうことだっ。丹波殿は一人で逃げられたと言うのかっ。これだから忍びは信用できんのだっ。」
怒りを現わにする義弘のほうを向いた義堯の顔は普段と変わらない落ち着いた顔であった。
「義弘、どうしてここにおる。お主には指揮を任せたはずだが。」
「城門を突破された故、父上にお逃げいただくために参ったのでございます。」
それを聞いた義堯は義弘のほうに近づくと
「馬鹿者がっぁぁぁ。」
と言いながら義弘の頬を殴った。
「家臣が必死に戦っている最中にその場を離れるのが総大将のやることかっ。」
父からの叱咤に言葉が出てこない義弘。
「なぜに佐竹があのように勢いを増したかわかるか。」
「いえっ・・・・。」
「当主である義重が前線に出てきたからだ。家臣よりも前に総大将が出ていれば家臣達は主を死なせるわけにはいかんと奮起する。義重は鬼義重と言われ戦に強いということばかりが噂されるが領内でも義重を慕う領民がほとんどだそうだ。」
「それは義重が内政にも優れた名君だと言うことですか。」
「いや、違う。義重は人をうまく使う。自らにできぬと判断したことは家臣の才ある者に任せ実行させる。家臣を信じる。それに家臣も応える。だからこそこれだけ戦場でも兵がついてくるのだ。お前にはそこがまだ足りぬ。それが佐竹と里見の差だ。」
義堯がそう言うと義弘は礼をすると自分の持ち場に戻っていった。
「なかなかの演説でしたな。」
屋根裏から姿を現した丹波がそう一言言った。
「なにっ。これでも北条相手に安房を守ってきた里見家の当主なのでな。」
「殿には知らせを入れた故そろそろ来る頃であろう。だが、ここまで粘ってよかったのか?」
「あぁ、義弘はここまでにならねばこれ以上の成長はできぬからな。刹那殿には後でお礼を申し上げなければな。わしのわがままで援軍の到着を遅らせてしまったからな。」
そう、刹那の援軍がここまで来なかったのは丹波を通して義堯が期が来るまで援軍を待ってほしいと頼んでいたからである。
「後は殿の援軍と義弘殿が挟撃して佐竹軍を包囲し終いじゃ。」
「では、それまでまた茶でもしますかな。」
そう言ってまたお茶を飲む出す義堯と丹波。
順調に進んでいたかに見えた攻城だったが、ひとつの知らせにより義重から笑みが消えた。
「伝令、後方より徳川軍襲来っ!!」
「なっ、なんだとっ!!それはまことかっ!!」
「はっ、もう目前に迫っております。」
「昭為、まだ来ぬはずではなかったのかっ!!」
「申し訳ございませぬ。まさかここまで早いとはっ。」
それから1時間後、前方の里見軍と後方の神威軍を相手に抵抗を見せていた佐竹軍も次第に数を減らしこれ以上の抵抗は無駄に兵を死なせるだけだと判断した義重は降伏した。
佐竹の名だたる武将は皆捕縛され、神威は久留里城に入城した。
大広間には義堯を始め里見家の面々が刹那の到着を待っていた。
上座に座っていた義堯は神威が来たのを見ると上座を譲り自らは下座へと座り直した。
「今回は援軍かたじけのうございました。」
「いえ、遅くなり申し訳ありませんでした。よう佐竹の猛攻を耐えてくださいました。」
「息子の義弘が家臣をよくまとめ佐竹を抑えてくれましたので。」
「そうですか。義弘殿、お見事でございますな。」
「はっ。ありがとうございます。」
「当家にとっても里見家は関東の要所を抑える大事な家です。困ったことがあればなんなりと言ってください。」
「ありがたきお言葉ありがとうございます。」
義弘がそう答えると刹那は捕縛した義重を連れてこさせた。
「あなたが佐竹義重殿ですね。」
「ああ。そう言うお前は誰だ。なぜお主のような若造がそこにいる。俺を愚弄しておるのか!!」
「これは失礼致しました。私は徳川家の筆頭家老を務めております、神威刹那と申す者でございます。里見家は当家の傘下故、義堯殿ではなく私がここに座っているわけです。ご理解いただけましたか?」
「なっ、お主が徳川の筆頭家老だとっ。」
「はい、殿より伊勢、志摩、大和、紀伊、伊賀を任されております。」
それを聞いて更に言葉を失う義重。
その義重を見て笑いをこらえる義堯。
「私の紹介も終わったところで本題に入りましょうか。佐竹義重殿、あなたは徳川に降る気はありますか?」
「はっ?」
義重は自らの命を持って家臣や兵の助命を願うつもりでいた。それなのに刹那から予想だにしない提案が出てきたため、混乱した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
437
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる