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第五章~近畿大波乱~
織田包囲網始動7
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「それ以外にも飛騨の姉小路を攻めると言う策もあるはずだが?」
「それはないと思いました。謙信公は私欲のために戦をする者ではないとある方から聞いておりましたので。」
「ほう、そのある方という者はずいぶん私に詳しいのですな。そのように断言するとは。」
「はい。それはもう詳しいと思います。そこの情報筋に間違いはないと思っておるほどです。」
「良ければそのある方の名を聞かせてもらえぬかな?」
「わしじゃよ。」
謙信が聞いてくると後ろに控えて平伏していた海玄が頭を上げ顔を隠すためにつけていた包帯を取った。
「そっ、そなたは信玄っ!!信玄ではないかっ!!なぜにお主がここにおる。死んだはずではないのか。」
謙信は予想だにしなかった人物が目の前に現れて驚きを隠せない。
互いに好敵手と認め合うほど何度も戦場で雌雄を決して来たが、何度も引き分け、死の知らせを聞いた時は一人空に向かい悲しみを覚えたはずの相手が今、目の前にいる。この状況に謙信であろうと驚かないほうが無理な話である。
「驚いておるようだな。わしもあの時死ぬと思っておったがな、ここにいる刹那のおかげで命を長らえたのよ。そのため今は信濃海玄と名乗り刹那を殿と仰ぎ仕えておる。」
「神威殿、お主は何者なのだ。あの甲斐の虎を飼いならすとは。」
「私は徳川家康の家臣。それだけに過ぎませんよ。」
そう言うと驚いて刹那を見ている謙信に対して刹那は微笑みを返すのであった。
「謙信公、改めてお聞き致します。こたびの織田包囲網。本当に望んで織田包囲網に参加されたのですか?ご本心をお聞かせ願いたい。」
刹那は改まると再度質問を謙信に投げかけた。
謙信は当主の顔に戻った。
「私はこの包囲網に心から賛同しているわけではない。しかし、織田のことを好意的に思っていないのもまた事実だ。」
「好意的に思っていないとはどうしてでしょうか。」
「信長は将軍家という威を借る狐だ。義昭殿を将軍にするという大義名分の元上洛をしたのにも関わらず、今ではその将軍家を蔑ろにしているそうだ。その行為は義に反する。それゆえに義を重んじる当家はこの包囲網に参加した。だが、賛同していないと言うのはほかの包囲網に参加している大名家が己のために動いているように見えるからだ。」
「それは誠だと思います。将軍家の名の元に包囲網に参加している他の大名家が考えているのはこの期に乗じて領土を増やすことでしょう。大名家の呼びかけに参加したという大義名分があれば織田を攻めることになんの支障もございません。そして今や強大となった織田家に単身で挑むことはできなくともほかの大名家も各地で織田の戦力を減らすとなれば皆喜んで参加します。」
「そうだ。その者らとともにあらねばならんと思うと包囲網に賛同ができん。ゆえに我らはこうして動かずにいる。」
謙信の本心を聞いた刹那は謙信に一つの質問を投げかけた。
「謙信公は織田家と我が徳川家は同じ大名家だと思いますか?」
その問いに謙信は少し考えた。
刹那はどのような意味で同じであると聞いてきたのか。それがわからなかったためである。
「同じとはどのような意味で聞かれておるのかな?」
「同じ志の元領土を広げていると思われるかという意味でございます。」
「ふむ。己の野望のために領土を増やしているように織田は見える。だが、徳川はそれとはまた違うとは思う。徳川の噂はよく聞く。神威殿、お主の名とともにな。」
「私の噂ですか。」
「あぁ。徳川では神威殿の名の元に様々改革が行われており、そのすべてが領民のために行われておるという噂をな。」
「謙信よ、その噂はな。すべて本当じゃ。殿は己の私欲を肥やすことなど考えてはおらんこの時代にはおかしな方だ。謙信、お主と同じじゃよ。すべて領民、そして大殿、徳川家康の天下のためじゃ。」
「私と同じですか。」
「いえ、謙信公と比べられては足元にも及びませんが、私はただ、自分を支えてくれる存在である
家臣や慕ってくれる領民達のために自分ができることをなんでもしてあげたいと思っているだけにございます。彼らがいなければ私が今こうしていることもありえないのですから。」
「謙信公、殿は誰よりも家臣や民に優しい方だと思いますよ。だからこそ今まで誰の元にも仕えることなく傭兵稼業をしていた我々雑賀衆がこうして生涯の主と仰ぎお仕えしているんですからね。」
今まで黙っていた孫市がそう謙信に伝えた。
「当家に仕えることをあれほど拒んだ孫市が申すのであればその言葉は真実なのでしょうね。」
「孫市、謙信公と知り合いだったのか?」
「以前傭兵として雇われたことがありますのでね。」
孫市はそう言いにやりとした。
「それはないと思いました。謙信公は私欲のために戦をする者ではないとある方から聞いておりましたので。」
「ほう、そのある方という者はずいぶん私に詳しいのですな。そのように断言するとは。」
「はい。それはもう詳しいと思います。そこの情報筋に間違いはないと思っておるほどです。」
「良ければそのある方の名を聞かせてもらえぬかな?」
「わしじゃよ。」
謙信が聞いてくると後ろに控えて平伏していた海玄が頭を上げ顔を隠すためにつけていた包帯を取った。
「そっ、そなたは信玄っ!!信玄ではないかっ!!なぜにお主がここにおる。死んだはずではないのか。」
謙信は予想だにしなかった人物が目の前に現れて驚きを隠せない。
互いに好敵手と認め合うほど何度も戦場で雌雄を決して来たが、何度も引き分け、死の知らせを聞いた時は一人空に向かい悲しみを覚えたはずの相手が今、目の前にいる。この状況に謙信であろうと驚かないほうが無理な話である。
「驚いておるようだな。わしもあの時死ぬと思っておったがな、ここにいる刹那のおかげで命を長らえたのよ。そのため今は信濃海玄と名乗り刹那を殿と仰ぎ仕えておる。」
「神威殿、お主は何者なのだ。あの甲斐の虎を飼いならすとは。」
「私は徳川家康の家臣。それだけに過ぎませんよ。」
そう言うと驚いて刹那を見ている謙信に対して刹那は微笑みを返すのであった。
「謙信公、改めてお聞き致します。こたびの織田包囲網。本当に望んで織田包囲網に参加されたのですか?ご本心をお聞かせ願いたい。」
刹那は改まると再度質問を謙信に投げかけた。
謙信は当主の顔に戻った。
「私はこの包囲網に心から賛同しているわけではない。しかし、織田のことを好意的に思っていないのもまた事実だ。」
「好意的に思っていないとはどうしてでしょうか。」
「信長は将軍家という威を借る狐だ。義昭殿を将軍にするという大義名分の元上洛をしたのにも関わらず、今ではその将軍家を蔑ろにしているそうだ。その行為は義に反する。それゆえに義を重んじる当家はこの包囲網に参加した。だが、賛同していないと言うのはほかの包囲網に参加している大名家が己のために動いているように見えるからだ。」
「それは誠だと思います。将軍家の名の元に包囲網に参加している他の大名家が考えているのはこの期に乗じて領土を増やすことでしょう。大名家の呼びかけに参加したという大義名分があれば織田を攻めることになんの支障もございません。そして今や強大となった織田家に単身で挑むことはできなくともほかの大名家も各地で織田の戦力を減らすとなれば皆喜んで参加します。」
「そうだ。その者らとともにあらねばならんと思うと包囲網に賛同ができん。ゆえに我らはこうして動かずにいる。」
謙信の本心を聞いた刹那は謙信に一つの質問を投げかけた。
「謙信公は織田家と我が徳川家は同じ大名家だと思いますか?」
その問いに謙信は少し考えた。
刹那はどのような意味で同じであると聞いてきたのか。それがわからなかったためである。
「同じとはどのような意味で聞かれておるのかな?」
「同じ志の元領土を広げていると思われるかという意味でございます。」
「ふむ。己の野望のために領土を増やしているように織田は見える。だが、徳川はそれとはまた違うとは思う。徳川の噂はよく聞く。神威殿、お主の名とともにな。」
「私の噂ですか。」
「あぁ。徳川では神威殿の名の元に様々改革が行われており、そのすべてが領民のために行われておるという噂をな。」
「謙信よ、その噂はな。すべて本当じゃ。殿は己の私欲を肥やすことなど考えてはおらんこの時代にはおかしな方だ。謙信、お主と同じじゃよ。すべて領民、そして大殿、徳川家康の天下のためじゃ。」
「私と同じですか。」
「いえ、謙信公と比べられては足元にも及びませんが、私はただ、自分を支えてくれる存在である
家臣や慕ってくれる領民達のために自分ができることをなんでもしてあげたいと思っているだけにございます。彼らがいなければ私が今こうしていることもありえないのですから。」
「謙信公、殿は誰よりも家臣や民に優しい方だと思いますよ。だからこそ今まで誰の元にも仕えることなく傭兵稼業をしていた我々雑賀衆がこうして生涯の主と仰ぎお仕えしているんですからね。」
今まで黙っていた孫市がそう謙信に伝えた。
「当家に仕えることをあれほど拒んだ孫市が申すのであればその言葉は真実なのでしょうね。」
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孫市はそう言いにやりとした。
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