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大也、アルバイト禁止なのにアルバイトを受ける

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 ムーンリング機関。

 それはアメリカ合衆国の政府組織である。

 その結成は世界大戦時に甲賀の流れを汲む日本国の月輪忍軍46人が日本国の玉砕に付き合わず、ごっそりとアメリカ合衆国に寝返った事に始まる。その後、アメリカ人に忍法を教えた忍者組織がムーンリング機関なのだ。今やアメリカ合衆国の暗部の代名詞でCIAを上回る組織として根付いていた。

 だが日本の古い思考の年寄りからは、今でも寝返った月輪忍軍の46人は『この裏切り者が』という事になっていた。

 大也は気にしなかったが。





 アメリカ大使館の一室で、大也が面会したのは別に在日アメリカ大使などではない。

 在日アメリア大使館の幹部職員だった。

 つまりはアメリカ忍者のムーンリング機関所属の50代の銀髪白人系ナイスミドルの男、ラジオス・フォードが姿を見せていた。

「おっと、アメリカの在日部隊のトップ自ら。お久しぶりです」

 さすがに大也も気を引き締めた。

 実際に強いからだ。双方の誤解から沖縄県で一度、1合だけやりあったが『クソ、格上だ』と大也が思う程の実力者だった。

「うむ。久しぶりだな、ダイヤ。座りたまえ」

「了解」

「さてキミへの任務だが――」

「チョイ待った。スパイ映画の指令みたいに言ってますけど、オレはまだ『やる』なんて一言も言ってませんからね」

「やれ、3年前の件でまだまだ貸しがあるんだからな」

「あれはオレ悪くないのに」

「返事」

「は~い」

 大也が仕方なく答えると、ラジオスが持ってる写真を指で弾いた。

 さすがは忍者。ちゃんと大也の手に写真が収まる。大也が見ると20代でツーブロックリーゼントの黒人系の血が薄まった肌の好青年が写っていた。

「ジョニー・ナダギ。日系4世だ。殺せ」

抜け忍ですか? どうなってるんです、ムーンリングの統制は? さすがは訴訟大国ですよね。誰もが胸に熱い正義の心を持ってる」

「無駄口はいい。出来るか?」

「忍法は?」

「水中系、半魚人だ。日本では河童というんだったか?」

 『嘘つけ』と思いながら大也は、

「・・・水中戦だと勝てる気がしないな」

「私もだ」

「条件は?」

「絶対に死んだ確証が欲しいから遺体を引き渡す事」

「やってみます」

「よろしくな。報酬はいつものようにスイスの隠し口座に」

「お願いします」

「では、パートナーを選べ」

 ラジオスがそう言うと、大也の背後の壁際に居た人員の中から4人が前に出た。

 全員が若い女だった。アメリカ合衆国なので西洋系、アフリカ系、南米系、中東系と揃ってる。パッと見、一番強いのは南米系だが。

「単独の方が楽なんですが? ほら、オレって人見知りが激しいシャイボーイですし」

「ふざけるなよ。パートナーを付けないとオイシイどこ取りして、ジョニーの死を偽装して逃がすだろ、ダイヤなら?」

「そんな事する訳がーー」

「選べ。任務達成の確認もあるから」

「ったく、水系の忍法の使い手は?」

「4人ともだ」

「一番、息を長く止めれるのは?」

「シャカリ・ロビンマンだな」

 大也が一番強いと思った南米系が更に1歩前に出た。

 19歳、金髪小麦色肌でラテン系の陽気な美人でナイスバディーだ。現在の服装はスーツだったが。

「では、その人で。パートナー候補が全員女でしたが、オレの能力テストとか、オレや標的の子供を宿すとかの裏の任務はないんですね?」

「ないな。他に質問は?」

「いつものように装備を下さい」

「用意してある。では、すぐに取りかかって貰おう」

「えっ、居場所が分かってるんですか?」

「ムーンリングを何だと思ってる?」

「さすがはアメリカの忍者。日本でも我が物顔ですね」

 こうして更衣室で大也はムーンリング仕様の黒色に青筋が入った全身タイツの認識スーツに着替えたのだった。





 ◇





 風使いは何でもありだ。

 『手塚流忍法かまいたち・大跳躍(高速)』を使い、地上からアメリカ大使館の上空200メートルを通過した軍用ヘリにパートナーのシャカリを抱えてジャンプして飛び乗るくらい大也には朝飯前だった。

「噂以上にメチャクチャね」

 シャカリが呆れる中、大也はさらっと、

「日本の忍者は優秀だからね」

 そう笑って目的地に向かったのだった。
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