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大也、とっくの昔に草薙部隊とつるんでた

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 草薙部隊ーー防衛省自衛隊の忍者部隊。系統はなし。寄り合い所帯の統合型。

 部隊の審査に合格した時点で出身母体の忍者組織から切り離されて任務に就く。草薙部隊に所属した時点で出身母体へ情報を流せば内通行為として粛清される。

 そして死亡するまで引退はなし。負傷して戦闘力を失っても草薙部隊所属扱いでとどられ、抜ければ『抜け忍』扱いとなる。

 その為、強い組織形態を持つ忍軍ほど草薙部隊に忍者を出さない傾向にある。





 ◇





 大也が目覚めるとリノは消えており、どっかの来賓室に居た。

 ソファーに座らされてる。別に拘束はされていない。

 睡眠薬を盛られた所為で身体が少し重たい程度で、毒を盛られた形跡はない。

 そして対面のソファーには80代の老人、村上次郎が座っていた。

 仙人のような白髭の爺さんだ。恰好はラフな背広姿だったが。ネクタイはしていない。代わりにループタイをしていたが。

 出身は黒脛巾くろはばき組からの派生『赤巾せききん組』で、水系統の妖怪憑きの忍者でもある。

「おはよう、手塚君。眼が覚めたかね?」

 との友好的な挨拶を受けて、大也は不機嫌そうに

「釣り仙人? アンタがあの美女にシャンパンでオレを眠らせるように指示してたのか。つまり草薙部隊とオレの不戦協定は『そちら側が破棄した』でいいんだな?」

 顔見知りを睨んだ。

 大也は沖縄県の手塚島出身だ。

 そして沖縄県は対中国の国防の最前線。

 当然、自衛隊の忍者、草薙部隊も常駐している。

 何より沖縄県では3年前のアメリカ、中国の暗部の全滅以降、手塚大也は『火薬庫』扱いだ。

 草薙部隊のトップである村上次郎が直々に(釣り狂いの隠居爺のフリをして)出向いて手塚大也を品定めし、ちゃんと不戦協定を結んでいた。

 大也が中国スパイを相手に暴れて、草薙部隊がその後始末をして捕虜や情報を貰う。それが沖縄県での構築された関係性である。

 よって大也と次郎は完全な顔見知りだったのだ。 接触時の印象が強過ぎたのか『釣り仙人』との呼び名が定着してしまっていたが。

「待て、違うぞ。ワシらは助けてやったんじゃからな」

「・・・そうなの?」

「そうじゃよ。そもそもおまえさんを呼び出すのにそんな面倒臭い手続きは必要ないじゃろ。ワシの電話一本で手塚君なら来てくれるのに」

「えっ? 出向かないけど? 何が悲しくて釣り仙人の呼び出しなんかで出向かないとダメなんだよ」

ムーンリング機関アメリカのお願いならホイホイと聞く癖に草薙部隊にほんのお願いは聞かない? おまえさんはいつからそんなアメリカかぶれになったんじゃ?」

「アメリカかぶれじゃなくて、ムーンリングはちゃんと分かってて美人と大金を使ってオレにお願いしてくるからだよ。そっちも美人の使いを送ってきてよ。それと依頼料」

「ふざけるなよ、エロガキ。女くらい自力で口説け。後、金なら犯罪組織や中国系の暗部の活動資金を散々巻き上げてもう金持ちだろうが?」

 と次郎がそう断固拒否してから、

「おまえさん、昨日何をした? 詳しく報告を頼む」

「はあ? そんな事の為に助けてくれたの?」

「そうじゃよ。小森と駿河が妙な動きを見せておるのでな。連中がおまえさんに返り討ちに遭って全滅したら日本国の防衛戦力がズタボロになる。それだけは避けねばならん。助けてやったんじゃから教えて貰うぞ」

 マジ顔で次郎が言ったので大也は渋々と美女も居ないのに昨日の行動を順を追って話し始めた。





 話の度に地図や衛星画像や道の写真を大也に見せ、更には殴った奴の数も確認してたので、長々と1時間30分も大也の昨日の行動を確認した次郎の総括は、

『ラッキー、これで次の総理はワシが好きに決めれる』

 だったが、そんな事は億尾にも出さずに、

「大活躍じゃったな、手塚君。後、昨日の事、誰にも言うでないぞ」

 そう答えたのだった。

 大也の方は靴を脱いで長ソファーで仰向けに寝転んでスマホで秘書系のエロ画像を見ながら、

「あのパンティー仮面、総理の息子だったのかよ? そうか、それで姫美さん、慌てて席を立った訳ね。お陰でヤリ損なった、と。ふ~ん、今度会ったら念入りにパンティー仮面の顔を潰さないとな」

「これこれ、もう許してやれ。それよりも黒崎譲一と嘉門かもん兵衛べえの2人だ。アヤツラは潰した方が良いぞ? 日本国に巣食った害虫だから」

 いつものように悪そうな顔で次郎が大也に標的を勧め、ソファーで寝転ぶ大也は、

「釣り仙人は相変わらずだな。潰して欲しいなら潰して欲しいと素直にオレに頭を下げろよ」

「潰してくれ。その礼に花井財閥との橋渡しをしてやるから」

「別にそんなのしてくれなくてもいいけど? 花嫁姿の美人とむさい黒服、どっちに味方するって言ったら当然、花嫁に決まってるし」

「いやいや、花井財閥なら年間10億円でおまえさんと不戦協定を組みたがるじゃろうて」

 それを聞いて初めてスマホを止めて座り直した大也が、

「そうなの? なら釣り仙人に橋渡しして貰おうかな? でも行動制限されるのは嫌だからね、オレ」

「分かった。代わりに黒崎譲一と嘉門兵衛の2人の始末を頼む」

 タブレッドで2人の顔写真や現在の居場所を見せてくる。

「今から?」

「そうじゃ」

「殺すの?」

「いつものように顔を潰して半殺しにするだけでいい」

「こっちは素性がバレずに?」

「いや、バレた方が都合が良いんじゃ。『何、小森を動かしてくれてるんだぁ~? 全面戦争でいいんだよな?』的な事を言って」

「ついでに資産を貰っても?」

「まあ、よしとしよう」

 信じられない悪巧みが2人の間で当たり前のように交わされたのだった。





 ◇





 敷地内に侵入してるところを捕まるところか客として案内されて隣の部屋に通されて、大也と次郎の会話を聞かせて貰っていた金馬リョウはヤバ過ぎる内容の数々に青ざめながら、

「聞いてないからなっ! オレはこの部屋の会話を一切聞かなかったっ! だよな?アンタら?」

 そう室内に居た4人に言ったが、その中の1人、不三豪が、

「それは通らないだろ、金馬リョウ?」

「何でおまえらはそんなに冷静なんだ? あいつは柴楽鯖男を昨日総理から引退させてるんだぞ?」

「いや、アイツが総理を引退させたのは今回で3人目でもうさすがに慣れてたし」

 豪がさらっと言った言葉にリョウはもはや気持ち悪くて吐き気すら覚え、

「はあ? 待て。喋るな。それ以上は聞きたくない」

「手塚大也はまだガキだが、おまえが想像してる以上にヤバイから覚悟した方がいいぞ。何ならこれまで沖縄県で『何をやらかしたか』教えてやろうか?」

「いらんわ」

 などと喋り、リョウが(現場の判断で)大鳥忍軍に嘘の報告をした事からこのあとの2時間、大也の行動はリミット解除となった。
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