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15歳(2回目)
3、カーターの知らなかった裏設定が2回目には続々と
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◆
アイン王国の王都シケンラからアドの街までは獣車を走らせても10日間の距離である。
なので、アイン王国の幹部職である「第2王子ジョナサンの親衛隊長」リック・ビンセント侯爵令息が、わざわざ表向きは従妹となっているが、実のところは父親がメイドを孕ませた異母妹のアンの結婚式に顔を出す為だけに王都のシケンラから10日間もの日数を掛けてアドの街にやってくるなど当然あり得なかった。
リックがアンの結婚式に顔を出したのは隠れ蓑だ。もしくはついで。
リックがアドの街に訪れた本命はもちろんアドの街で春先に計画されていた第1 王子ウイリアムを失脚させる陰謀が露見した事に対する追跡調査だった。
何せ、1回目の記憶のあるカーターが毒茸の散布予定日までを言い当てているのだから黒幕である第2王子ジョナサン陣営からすれば陣営の情報がダダ漏れ過ぎて気味が悪過ぎる。
絶対に毒茸散布の情報が漏洩したルートを潰す必要があり、わざわざ実動部隊ナンバー1のリックがアドの街に出向いていた。
従妹(本当は異母妹)アンの結婚式に駆け付ける、との名目で。
結婚式の前夜、フードを被ったリックは秘密裏にアドの街の毒茸騒動を実行する責任者と面会していた。
その責任者とは冒険者が狩猟する素材で財をなした豪商のジョイロである。
そうなのだ。1回目の毒茸騒動の時、私財を投げ打って解決に尽力した事で男爵位を得て、アドの街の執政官にまで成り上がった男が1回目の毒茸騒動でアドの街の住民を殺しまくった実行犯だった。
つまりは1回目の男爵位の獲得は第1王子のウイリアム失脚によって第2王子のジョナサンが次期王位継承争いに勝利した事による前祝いの論功行賞の大盤振る舞いと口止め料だったのである。
もしこの事実を1回目の毒茸騒動のカーターが知ったら大激怒したに決まっている。ジョイロの事を「立派な人だ」と思っていたのだから「よくも騙したな」と言って。
裏切り者探しをしているリックはこのジョイロが裏切ったとは最初から思っていない。そもそも決行の日時をまだ教えていなかったので。
というのも毒茸騒動は第2王子ジョナサンがアドの街にお忍びで来訪に連動して暗殺目的に散布されたと周囲に思わせねばならず、第2王子ジョナサンのスケジュールなど流動的でどうなるか分からずまだ散布予定日は仮の状態で正式には決まっておらず、あの時点ではジョイロには日数までは伝えていなかったのだ。
「毒茸の情報を漏らした相手の報告書を貰ったがこの男で間違いないのだな」
「はい、殿下の来訪がなく今やアドの街で嘘つき扱いされておりますから」
上げられた報告書にあったその情報発信源は行商を営むイベリオだった。
何せ、カーターが流言の際にイベリオの名を騙った為に王子が来なかった事を受けて今や適当な情報を流した犯人とされていたのだから。
どうして父親の親友の名前をカーターが騙ったのかと言えば、当然、1回目の時に母親と妹を娼館に売られたからだ。
1回目の経験の記憶を持つカーターから言わせれば「こいつは信用ならない」どころではない。「絶対に地獄を見せてやる。オレのこの手でな」。それがカーターの偽りざる本音である。
だが、そんな表面的な情報だけではなく第2王子のジョナサンの許に上げられた報告書には他にも色々な事が記されていた。
例えば交流関係。このイベリオは明日結婚式を挙げるリックの異母妹アンの花婿のカータ一の父親ディーとの親友だと書かれていた。
これだけで大問題である。
何故ならば(1回目の時に辛酸を舐め、支援が一切なかったのでカーターは知る由もなかったが)アドの街の食堂でコックをやってるカーターの父親の系譜は、アイン王国の現騎士団長ジャック・トロンの三男だったのだから。
それが騎士団にも入団せずにトロン家を勘当されてコックをやっているのだ。
そんな奴、監視対象に決まっており、ビンセント侯爵家は長期間の計画によって落胤のアンをディーの息子のカーターと結婚するように仕向けて、この度、念願かなって結婚まで漕ぎ付けていた。
その騎士団長の三男ディーの親友など確実に騎士団の関係者に決まっている。
各地を飛び回る行商業ならば「騎士団の密偵」とみて間違いなかった。
リックが内心で舌打ちする中、
「こちらで身柄を押さえましょうか」
イベリオの正体をただの行商人だと思ってるジョイロが気軽に提案をするが、そんな事をすれば騎士団との全面対決は必至である。
騎士団長のジャックの現在の態度は国王の腹心の為、中立。どちらの王子にも味方をしていない。
その状態で下手に騎士団の密偵に手を出せば、第2王子陣営との敵対を選んで第1王子陣営に味方する可能性がある。「手を出す」事は決定事項だが「上手くやる」必要があった。
「いや、部隊を秘密裏にアドの街に連れてきているのでね。こちらでやろう」
「畏まりました。私めへの指示は?」
「今回の情報漏洩が片付くまではないな」
こうしてリックは密談を終えて、
◆
翌日の教会の結婚式で列席者のリックはイベリオを素知らぬ顔で見た。
別に自ら話し掛けるような嫌味な事はしない。
だが花婿のカーターが冷めた眼で父親の親友のイベリオを見てたので、世間話のように、
「あの男がどうかされたのですかな、花婿殿?」
「いえ、嘘つきが居るな~と思って」
「ああ、王子様がお忍びで視察するとかいう例の噂ですか?」
「ええ。それとこれはここだけの話ですが」
「?」
「(父は完全に騙されていますがオレは騙されませんよ。機会があればオレがこの手で排除しますから。従兄殿もあんなのとは商売をされませんように)」
カーターはリックの耳元で誰にも聞こえないように囁いたのだった。
リックは片眉を上げて、
(ほう、なかなか見どころがあるではないか)
「(物騒な事は言われませんように。それに行商の道中は危険が付きものですので)」
リックがそう囁き返すと、カーターはリックを見てニヤリと笑ったのだった。
◆
騎士団長のジャック・トロンが中立の姿勢を示している事で騎士団の8割は中立の姿勢を示したが、残り2割は違う。次期王位争いは出世のチャンスでもあるのだから。味方した王子が勝てば即位後に重用されて騎士団での地位が上がるのは確実だった。
そして騎士団の中にも当然、貴族家の出身者が居るのだから第2王子の味方をする騎士団幹部も当然居た。
つまり、どういう事かというと「騎士団の密偵を外部の者が殺すから問題になるのであって騎士団の内部で裁けば何の問題もない」という事となった。
逮捕理由だって、でっちあげるまでもなくある。
例の極秘来訪の噂だ。
機密扱いである第2王子の日程情報の漏洩。
はっきり言って騎士団が動くに値する罪状であった。
アドの街中で逮捕してもいいが、他の騎士団の幹部の耳に入るのは拙い。
なので結婚式から3日後にアドの街を出発したイベリオは、道中で待機していた騎士団に待ち伏せされて、
「行商人イベリオ、おまえを逮捕する」
「第2王子派の騎士団第2部隊、副長ウルー・モスリー殿が自ら御登場とはどういった事ですかな?」
「第2王子ジョナサン殿下の日程を外部に漏らした罪でのおまえには逮捕状が出ている。抵抗はするなよ」
「御冗談を。あれはオレじゃないですよ」
「それを取り調べるんだよ」
そうウルーに言われて、イベリオは「無駄な事を」と呆れながらも素直に従った。
素直に従ったのはイベリオの役職が本当に「騎士団の密偵」で御同業なので軽い問答で解放されると思ったからだったが、
その見通しは甘く、
騎士団が保有する秘密の取調室にて、イベリオは騎士団から重罪犯に施す拷問を受けていた。拷問器具のオンパレードだ。
それを既に10日は喰らって両手の指はとっくに全部無くなっていた。
もう苦痛で喋る事も出来ない。というか顔も形が変わるまで殴られて虫の息だった。
「いい加減、情報の入手経路を教えろよ。それとアドの街にジョナサン殿下の日程を流布した目的も」
拷問を担当したのはウルー・モスリー本人である。
日程漏洩の真相解明を第2王子のジョナサンに面と向かって頼まれている。
もし漏洩の真相を解明し、ジョナサンが国王に即位した際には、実家の子爵家の当主の椅子と騎士団の幹部である第4部隊の隊長の役職も保証されていた。
階級が1つ上がるだけなのだから逆に現実味がある。騎士団長とか言われたら嘘だと疑ったが。
なので情熱をもってこの拷問に望んでおり、
「――だ、だから、知らないと」
「やれやれ、さすがは密偵組、頑張るね~。やれ」
傷口に蠟燭の蝋を垂らされて、
「ぎゃあああああああああああ」
騎士団の密偵で拷問の訓練もされているイベリオは外聞もなく絶叫を上げたのだった。
アイン王国の王都シケンラからアドの街までは獣車を走らせても10日間の距離である。
なので、アイン王国の幹部職である「第2王子ジョナサンの親衛隊長」リック・ビンセント侯爵令息が、わざわざ表向きは従妹となっているが、実のところは父親がメイドを孕ませた異母妹のアンの結婚式に顔を出す為だけに王都のシケンラから10日間もの日数を掛けてアドの街にやってくるなど当然あり得なかった。
リックがアンの結婚式に顔を出したのは隠れ蓑だ。もしくはついで。
リックがアドの街に訪れた本命はもちろんアドの街で春先に計画されていた第1 王子ウイリアムを失脚させる陰謀が露見した事に対する追跡調査だった。
何せ、1回目の記憶のあるカーターが毒茸の散布予定日までを言い当てているのだから黒幕である第2王子ジョナサン陣営からすれば陣営の情報がダダ漏れ過ぎて気味が悪過ぎる。
絶対に毒茸散布の情報が漏洩したルートを潰す必要があり、わざわざ実動部隊ナンバー1のリックがアドの街に出向いていた。
従妹(本当は異母妹)アンの結婚式に駆け付ける、との名目で。
結婚式の前夜、フードを被ったリックは秘密裏にアドの街の毒茸騒動を実行する責任者と面会していた。
その責任者とは冒険者が狩猟する素材で財をなした豪商のジョイロである。
そうなのだ。1回目の毒茸騒動の時、私財を投げ打って解決に尽力した事で男爵位を得て、アドの街の執政官にまで成り上がった男が1回目の毒茸騒動でアドの街の住民を殺しまくった実行犯だった。
つまりは1回目の男爵位の獲得は第1王子のウイリアム失脚によって第2王子のジョナサンが次期王位継承争いに勝利した事による前祝いの論功行賞の大盤振る舞いと口止め料だったのである。
もしこの事実を1回目の毒茸騒動のカーターが知ったら大激怒したに決まっている。ジョイロの事を「立派な人だ」と思っていたのだから「よくも騙したな」と言って。
裏切り者探しをしているリックはこのジョイロが裏切ったとは最初から思っていない。そもそも決行の日時をまだ教えていなかったので。
というのも毒茸騒動は第2王子ジョナサンがアドの街にお忍びで来訪に連動して暗殺目的に散布されたと周囲に思わせねばならず、第2王子ジョナサンのスケジュールなど流動的でどうなるか分からずまだ散布予定日は仮の状態で正式には決まっておらず、あの時点ではジョイロには日数までは伝えていなかったのだ。
「毒茸の情報を漏らした相手の報告書を貰ったがこの男で間違いないのだな」
「はい、殿下の来訪がなく今やアドの街で嘘つき扱いされておりますから」
上げられた報告書にあったその情報発信源は行商を営むイベリオだった。
何せ、カーターが流言の際にイベリオの名を騙った為に王子が来なかった事を受けて今や適当な情報を流した犯人とされていたのだから。
どうして父親の親友の名前をカーターが騙ったのかと言えば、当然、1回目の時に母親と妹を娼館に売られたからだ。
1回目の経験の記憶を持つカーターから言わせれば「こいつは信用ならない」どころではない。「絶対に地獄を見せてやる。オレのこの手でな」。それがカーターの偽りざる本音である。
だが、そんな表面的な情報だけではなく第2王子のジョナサンの許に上げられた報告書には他にも色々な事が記されていた。
例えば交流関係。このイベリオは明日結婚式を挙げるリックの異母妹アンの花婿のカータ一の父親ディーとの親友だと書かれていた。
これだけで大問題である。
何故ならば(1回目の時に辛酸を舐め、支援が一切なかったのでカーターは知る由もなかったが)アドの街の食堂でコックをやってるカーターの父親の系譜は、アイン王国の現騎士団長ジャック・トロンの三男だったのだから。
それが騎士団にも入団せずにトロン家を勘当されてコックをやっているのだ。
そんな奴、監視対象に決まっており、ビンセント侯爵家は長期間の計画によって落胤のアンをディーの息子のカーターと結婚するように仕向けて、この度、念願かなって結婚まで漕ぎ付けていた。
その騎士団長の三男ディーの親友など確実に騎士団の関係者に決まっている。
各地を飛び回る行商業ならば「騎士団の密偵」とみて間違いなかった。
リックが内心で舌打ちする中、
「こちらで身柄を押さえましょうか」
イベリオの正体をただの行商人だと思ってるジョイロが気軽に提案をするが、そんな事をすれば騎士団との全面対決は必至である。
騎士団長のジャックの現在の態度は国王の腹心の為、中立。どちらの王子にも味方をしていない。
その状態で下手に騎士団の密偵に手を出せば、第2王子陣営との敵対を選んで第1王子陣営に味方する可能性がある。「手を出す」事は決定事項だが「上手くやる」必要があった。
「いや、部隊を秘密裏にアドの街に連れてきているのでね。こちらでやろう」
「畏まりました。私めへの指示は?」
「今回の情報漏洩が片付くまではないな」
こうしてリックは密談を終えて、
◆
翌日の教会の結婚式で列席者のリックはイベリオを素知らぬ顔で見た。
別に自ら話し掛けるような嫌味な事はしない。
だが花婿のカーターが冷めた眼で父親の親友のイベリオを見てたので、世間話のように、
「あの男がどうかされたのですかな、花婿殿?」
「いえ、嘘つきが居るな~と思って」
「ああ、王子様がお忍びで視察するとかいう例の噂ですか?」
「ええ。それとこれはここだけの話ですが」
「?」
「(父は完全に騙されていますがオレは騙されませんよ。機会があればオレがこの手で排除しますから。従兄殿もあんなのとは商売をされませんように)」
カーターはリックの耳元で誰にも聞こえないように囁いたのだった。
リックは片眉を上げて、
(ほう、なかなか見どころがあるではないか)
「(物騒な事は言われませんように。それに行商の道中は危険が付きものですので)」
リックがそう囁き返すと、カーターはリックを見てニヤリと笑ったのだった。
◆
騎士団長のジャック・トロンが中立の姿勢を示している事で騎士団の8割は中立の姿勢を示したが、残り2割は違う。次期王位争いは出世のチャンスでもあるのだから。味方した王子が勝てば即位後に重用されて騎士団での地位が上がるのは確実だった。
そして騎士団の中にも当然、貴族家の出身者が居るのだから第2王子の味方をする騎士団幹部も当然居た。
つまり、どういう事かというと「騎士団の密偵を外部の者が殺すから問題になるのであって騎士団の内部で裁けば何の問題もない」という事となった。
逮捕理由だって、でっちあげるまでもなくある。
例の極秘来訪の噂だ。
機密扱いである第2王子の日程情報の漏洩。
はっきり言って騎士団が動くに値する罪状であった。
アドの街中で逮捕してもいいが、他の騎士団の幹部の耳に入るのは拙い。
なので結婚式から3日後にアドの街を出発したイベリオは、道中で待機していた騎士団に待ち伏せされて、
「行商人イベリオ、おまえを逮捕する」
「第2王子派の騎士団第2部隊、副長ウルー・モスリー殿が自ら御登場とはどういった事ですかな?」
「第2王子ジョナサン殿下の日程を外部に漏らした罪でのおまえには逮捕状が出ている。抵抗はするなよ」
「御冗談を。あれはオレじゃないですよ」
「それを取り調べるんだよ」
そうウルーに言われて、イベリオは「無駄な事を」と呆れながらも素直に従った。
素直に従ったのはイベリオの役職が本当に「騎士団の密偵」で御同業なので軽い問答で解放されると思ったからだったが、
その見通しは甘く、
騎士団が保有する秘密の取調室にて、イベリオは騎士団から重罪犯に施す拷問を受けていた。拷問器具のオンパレードだ。
それを既に10日は喰らって両手の指はとっくに全部無くなっていた。
もう苦痛で喋る事も出来ない。というか顔も形が変わるまで殴られて虫の息だった。
「いい加減、情報の入手経路を教えろよ。それとアドの街にジョナサン殿下の日程を流布した目的も」
拷問を担当したのはウルー・モスリー本人である。
日程漏洩の真相解明を第2王子のジョナサンに面と向かって頼まれている。
もし漏洩の真相を解明し、ジョナサンが国王に即位した際には、実家の子爵家の当主の椅子と騎士団の幹部である第4部隊の隊長の役職も保証されていた。
階級が1つ上がるだけなのだから逆に現実味がある。騎士団長とか言われたら嘘だと疑ったが。
なので情熱をもってこの拷問に望んでおり、
「――だ、だから、知らないと」
「やれやれ、さすがは密偵組、頑張るね~。やれ」
傷口に蠟燭の蝋を垂らされて、
「ぎゃあああああああああああ」
騎士団の密偵で拷問の訓練もされているイベリオは外聞もなく絶叫を上げたのだった。
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