25人の怪人、日本の覇権を賭けてバトルロイヤルす

竹井ゴールド

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本編

3、6試合連続ホームランの25歳のプロ野球選手

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 翔は自分と同じ25歳の有名人を検索して絶句した。

 これまでそんな事に興味すらなかったのだが(億万長者になって浮かれていたので)、調べてみたらそれはもうウジャウジャ居たので。

 3年前に開催されたオリンピックで金銀銅のメダル獲得の選手だけで、男子柔道1人、男子陸上1人、男子水泳1人、男子バトミントン1人、男子体操1人、男子フェンシング1人、女子マラソン1人、女子レスリング1人、女子柔道1人、女子水泳1人と10人も居た。

 日本の獲得メダル数はもっとあったが25歳のメダリストに限定すれば10人だ。

 更にはメダルに届かなかったがバスケ、卓球、バレー、ビーチバレー、ウエイトリフティングにも25歳の選手は紛れている。

 夏だけでこれだ。冬季オリンピックにも25歳の選手が当然紛れ込んでおり5人は居た。

 国技相撲でも前頭以上の25歳は3人。

 野球やサッカーなんて25歳で活躍する国内選手だけで30人以上いる。

 マイナーと言っては失礼だが、プロバスケットやラグビーにも当然25歳の選手は複数いる。

 競馬のジョッキーにもいた。ボートレーサーにもだ。

 スポーツ界だけで余裕で50人を越えている。

 2人の怪人を倒したので翔以外の残る怪人は22人のはずなのに。

 更にはTV業界だ。

 日本はアイドルグループやバンドが主流だ。というか芸能界はどこまでを人気者と呼ぶかが微妙で、もしインディーズで歌を出した人間までを含めたら数が多過ぎてその中から25歳の人間を探すなんて最早不可能だった。

 雑誌のモデルもだ。正直ピンキリなので把握は難しい。1ページだけでも乗ってたらモデルとなるのか?

 各局のアナウンサーはどうだ。都内に居るので地方のアナウンサーなんて翔には分からない。人気があるかも不明だ。毎年1人を採用しているはずなので25歳の地方アナウンサーも居るに違いない。

 伝統芸能もある。歌舞伎は有名だが、能楽などはさっぱり分からず、生け花や日本舞踊、和楽器の各種となればもうお手上げだ。

 芸能界なら小劇団も存在する。そんなの都内だけでどれだけの数あるのか。25歳の役者が居ない訳がない。

 ネットの配信業界ってのもある。

 検索すれば出てくる出てくる。25歳も当然居る訳だが探すのも面倒だ。

 他にも25歳と言えば選挙に立候補出来る年だ。

 最年少で当選した議員も当然居た。国政、地方議会の両方で。

 官僚や一流企業や銀行のエリート社員も居るはずだ。

 後は芸術家。クラッシックの音楽家。翔の専門外過ぎて想像も出来ない。

 ゲームクリエーターやアニメクリエーターも25歳なら頭角を現している可能性がある。それらは表に出ないので分からない。表に出ないで言えば小説家や漫画家もそうだ。

「多過ぎる。どうしろってんだ、こんなの?」

 スマホで検索してた翔は途中でコスモインフルエンス核の所有者候補を探すのを諦めてスマホをテーブルの上に置いたのだった。





 ◇





 億万長者となった翔の現在の行動原理は「モテたい」だ。

 モテる為に英会話を習得して(もちろん金髪美女と付き合う為だが)今はフランス語が喋れるように講師を雇って勉強していた(フランス美女とも付き合いたいので)。

 それと体型の維持。いくら金持ちでもぽっちゃりだとモテない。スポーツジムに通っていた。筋肉は多少あった方がモテるらしいので。

(そう言えばボディービルダーって職種も居たな。いや、そいつらよりも格闘家か。ボクサー、シュート、プロレス、空手家。最近は女格闘家ってのまでいるからな)

 そしてもう1つ問題が。

 そんな事を翔がスポーツジムでのトレーニング中に考えられたのはトレーニングしている他の客達を観察したからで、どうして観察出来たのかと言えばトレーニングが余裕だったからである。

 普段は四苦八苦している80キロのベンチプレスを15回やっても。

 おそらくは「宇宙人の力の源」のコスモインフルエンス核を体内に取り込んだからだろう。地球人ながら怪人化出来るようになったのだ。肉体の構造が「地球人の規格から外れた」と考えていい。

「もしかしてトレーニングをする必要がなくなった? 何をしなくても体型が維持出来る?」と自問しながら、

(あっ、なるほど、つまり成績が著しく伸びたスポーツ選手を探せばいい訳か。待てよ。オレが突然ジムを辞めたら不自然で怪しまれる? このままオレはジムに通わないと駄目って事か?)

 などと考察していると、

「今日は随分と調子がいいですね、高杉さん」

 バーを持つ補助のインストラクターが声を掛けてきた。

 拙い、と感じた翔が露骨に苦しそうな演技をして、

「そう思ったけど、もう限界だよ」

「なら、後1回で終わりにしましょう」

「ええ~(実は余裕)」

 翔は全然余裕なのに苦しそうにバーを上げてベンチプレスのトレーニングを終えたのだった。





 ◆





 探すとパリーグの関西球団の8番バッターに怪しいのがいた。

 橋本鴨。25歳。ポジションはレフト。右投げ左打ち。推定年俸は2200万円。

 この男が8番バッターの癖に3試合連続でホームランを打っていたのだ。全打席ホームランなら「宇宙人の代理支配のバトルロイヤルの参加者」で確定だが3試合連続ホームラン程度なら「調子が良かった」でも通る。

 と、でも偽装しているつもりだろうか、この男は?

 そんな訳があるか。

 バレバレなんだよ。

「調子が良ければ3試合連続ホームランくらいあるかも」なんて言い分は野球を知らない女子の妄想だ。

 翔のように野球よりもサッカーの方が好きな男でも「これ」が異質な事はちゃんと理解していた。

「万年Bクラスの球団で8番レフトの男が3試合連続でホームラン? あり得ない」と。

 それが現実なのだよ。

 アメリカのワールドシリーズで1試合に2ホーマー5四球の二刀流のメジャーリーガーとは違うのだ。

 年俸だって2200万円。毎年Bクラスの8番レフト。ホームラン本数は20本。当然、 生涯成績だ。

 高卒で入団して2軍スタート。21歳の時に1軍デビューをしているので(今年は数えず)3年でホームラン20本。つまりは1年で7本ペースの実力な訳だ。

 25歳でその成績なら、間もなく戦力外通告のはず。

 そんな選手がいきなり野球が上手くなって3試合連続でホームラン?

 あり得ない訳だよ。





 ◇





「さすがにこいつは確定だよな? でも、どうしてこんなプロ野球選手のレベルで言ったら雑魚な奴にコスモインフルエンス核が与えられているんだ? オレの世代の高校野球の甲子園で優勝もしてないのに? もしかして違う? 本当に運が良かっただけか、この3ホーマー? う~ん。だとしたら確証もないのにわざわざ関西まで出向きたくないかも。他の奴と遭遇するかもしれないし。となると、この関西球団が関東圏にやってくる・・・日程だと福岡で3連戦をしてそれから千葉にやってくる訳ね、その時にでも確認するか」

 そう呑気に構えた翔だったが。





 この橋本鴨という男は野球漬けの人生を送っていたらしく相当な「おバカ」だった。

 福岡の3ゲームでもやりやがったのだから。

 つまりは6試合連続ホームランを継続して関東圏の千葉に乗り込んできていた。

 6試合連続なら例え万年Bクラスの8番バッターでもスポーツ紙がそろそろ新聞に書き始める。

(クソ、もう他の奴も注目してるよな? ってか出向いたらオレもヤバイ?)

 それでも翔は千葉に向かった訳だが。





 ◇





 関西球団が遠征先に使っている千葉のホテルはさすがに借りられない。

 その橋本鴨を襲う算段をしていたのだから。

 翔も実は25歳の有名人なので。

 バレたら翔も「コスモインフルエンス核の所有者だ」と気付かれる恐れがある。

 ハイヤーで千葉に向かった。

 無論、夜だ。それも23時。

 ハイヤーの運転手は国守という50代の男で口が堅かった。何せ、翔がハイヤー会社を通さないチップを私的に弾んでいたので。もう翔の言いなりだった。なので野暮な詮索などはしない。23時という時間帯なのだ。「女のところだろう」と思われていたので。

 翔はハイヤーの窓は開けてなかったが不意に大気の震動を感じた。音はしなかったが確実に大気が揺れた。おそらくは怪人が起こした衝撃波だろう。

「国守、停めてくれ」

「畏まりました」

 路肩にハイヤーが止まる。当然、慣れてる国守は防犯カメラが無さそうなところで停車した。

「適当に流しててくれ。スマホで呼ぶから」

「ご宿泊ではないのですか?」

「・・・ビジネスの方だよ。信じられない事に」

 翔はどうにかそうやり過ごしてハイヤーを降りた。ハイヤーが走り去るのを見送って物影に入って怪人に変身した翔は今も何回も大気が振動する方角に急いだのだった。

 夜なので多少の怪人姿の目撃の危険は度外視して。
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