マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

1、えっ、髪に触れてる?

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アンドレーヌ王国の王都アンゼルにある貴族学校。

その学校は学び舎しては無駄に広く、そして豪華で洗練されていた。

噴水広場などは広い空間となっており、噴水が作る水のカーテンは優美で、周囲の花壇に咲く花々も赤色や黄色と鮮やかな色が多い。

噴水広場の周囲にはベンチが複数あり、貴族学校に通う生徒達の憩いの場となっている訳だが。





その日の夕方。

正確には放課後である。それも授業が終わってから1時間後。

殆どの学生が送迎の自家用の貴族車で帰るか、学生寮に戻っている訳だが。

その噴水広場には一組の男女がベンチに腰を下ろしていた。

二人っきりなら恋人達の噴水広場での放課後デートとなる訳だが、その周囲を真っ赤なマントを羽織った鎧を装備した屈強な男達6人が直立で控えている。

貴族学校内で近衛騎士を従える事を学校側が許してる生徒は二人だけ。

アンドレーヌ王国の第1王子にして王太子、ハミル・アンドレーヌ。

ハミルの婚約者、エルゼーシア・マリーハルケン公爵令嬢。

この2人がベンチに座ってるにしては近衛騎士の数が合わない。

そうなのだ。

ベンチに座っている1人は確かに金髪長身の第1王子、ハミルだったが、もう1人は婚約者のエリゼーヌではなかった。

純白の貴族学校の学生服を纏った紅髪をツインテールにした女生徒である。

「こんな時間まで生徒会の雑務を手伝って貰ってすまなかったね、アンヌ嬢」

そう話しかけるハミルのアンヌ・ラリー子爵令嬢を見る目は優しい。

というかベンチに座ってベンチの背もたれの上側に腕を置いている。アンヌの背もたれの上側にもだ。なので遠目から見れば抱いてると誤解して見えなくもなかったが。

確かにこの距離感は近い。

だが、アンヌも指摘する様子もなく頬を染めてハミル王子を見ていた。

「いえ、生徒会の書記として当然の事ですから」

「まったく。生徒会の仕事などしなけらばならないとはな」

「王家の方が在籍時は高学年の1年間は優先的に生徒会長をする決まりですから」

「生徒会の運営が国家運営に練習になるとは思えぬがな」

と呟いてから思い出したように、

「アンヌ嬢は生徒会長をやりたかったか?」

ハミルがそう質問したのは王族が在籍していなければ「成績トップの生徒が生徒会長になる」のが通例だったからだ。つまりはハミルが居なければその学年の成績トップのアンヌが生徒会長になっていたのだ。

「少しだけ。文官の採用試験に有利に働くらしいですから」

アンヌは悪戯っぽく本音を明かした。

「素直で結構」

ハミルがそう笑った時、風が吹いた。

花壇の黄色い花びらが風に舞い、アンヌの髪に付く。

「おっと、アンヌ嬢の髪に花びらが」

ハミルがアンヌの背に回してる腕とは逆の手で花びらを取る。

「ほら」

「ありがとうございます。殿下、その花びらを貰っても」

「ん? どうしてだ?」

「記念に押し花の栞にしますので」

「1枚だけを?」

「殿下に取っていただいた大切な花びらですので」

頬を染めて照れながらアンヌは小さな声で言った。

見え透いた世辞を、と捉えるかと思いきや「愛い奴め」とハミルは満更でもなく、

「そうか?」

花びらを譲ったのだった。





その噴水広場の中庭での様子を本校舎2階の廊下の窓から一部始終見ていた女生徒がいた。貴族学校の生徒なので同じ純白の制服を纏っている訳だが。

古今東西、異性の髪に触れていいのは家族や恋人、それに理髪を生業にする職業だけである。

つまりは髪に触れてるのは恋人の証な訳で、その逢瀬を目撃したその女生徒は、

「た、大変だわ」

そう呟いて教室に向かったのだった。
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