4 / 50
卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
2、王太子の行動はその日の内に国王に
しおりを挟む
アンドレーヌ王国の騎士団長はカークス・アリストンである。
アリストン家は建国からの武門の出で、アンドレーヌ王国での爵位は伯爵だった。
この伯爵という爵位は意外に重要である。
上位貴族である公爵などが騎士団長になったら権力が集中する恐れがあるので、アンドレーヌ王国では文官トップの宰相職と武官トップの騎士団長職は公爵と侯爵の家の者はなれない決まりとなっているのだから。
その騎士団長カークスのアリストン伯爵家の領地は王都圏にあり、領地運営はもっぱら血の繋がった弟に任せている。
つまりは王都に出ずっぱりな訳だが。
騎士団長は武官のトップなので、その仕事はアンドレーヌ王国軍の軍部全般に及ぶ。
よって些事などはカークスの耳には入らずに部下達が処理する訳だが。
例えばだが、本日の貴族学校の放課後の噴水広場であった王太子ハミルの行動は騎士団長のカークスの耳に届くのか?
答えはノーである。
王太子ハミルを守る為に従っていた近衛騎士は騎士団長カークスではなく、国王カミル・アンドレーヌの耳に直接、貴族学校の出来事(王太子ハミルの行動)を届ける決まりとなっていた。
それも国王執務室で重要案件の決定を終えて夕食前に寛いでいる時に。
ドアがノックされて侍従がドアを開き、近衛騎士が入室を許される。
一介の近衛騎士の顔など国王は一々覚えていない。
なので、
「何だ?」
「本日、貴族学校で殿下が見過ごせない行動をされましたのでご報告を」
「見せよ」
報告書を読む。噴水広場の出来事が明確に書かれていた。
「ハミルがエルゼーシア嬢以外の女生徒とのう。この子爵令嬢のハミルへの接近に不自然な点は?」
ハニートラップ要員か、との質問だ。
王太子ハミルと公爵令嬢エルゼーシアの決裂を望む勢力はアンドレーヌ王国には多い。
王弟の大公ニヒル・アフス陣営。
第2王子コミルを国王に添えたい外戚のナンシーサン侯爵陣営。
もし、その二勢力が暗躍していたらお灸を添えねばなるまい。
「いえ、入学から成績トップを維持して順当に生徒会入りをしておりまして」
「ふむ、ラリー子爵家ね~」
名前を呟くが国王のカミルには当主の顔も領地も思い出せなかった。
室内に同席していた書記官が、
「北西の小領で、主産業は材木だったかと」
「寄り親は?」
これは重要だ。
その家名いかんで背景も分かるのだから。
「王家直轄です」
予想外の答えだった。
裏で糸を引いている者が居ない?
いや、王家直轄など余計に怪しい。大公の息が掛かっている?
「調べさせよ、近衛と宰相の両方で。内密にだ」
そう厳命したが、近衛騎士が言い辛そうに、
「既に殿下が貴族学校で活動される生徒会に参加が決定した時点で調べました」
そうなのか?
「結果は?」
「不明な点はありませんでした。子爵邸には密偵を潜り込ませてありますが未だに何も発見出来ないとの事です」
「背景に問題はなしか。ハミルめ、それを知っていて。結婚前から側妃の選定をするつもりか?」
カミルはそう王太子の行動の真意に頭を悩ませたのだった。
そしてその日の夕食。
アンゼル宮殿の食堂には王族の全員が集まっていた。
国王のカミル。
王妃のミラリー。
王太子のハミル。
第2王子のコミル。
側妃のスミアン。
ここ最近の家族の食事会の主役は6歳のコミルである。
まだ6歳なので思慮がない。まさか王妃に「邪魔な存在だ」と思われてるとは知る由もなく無邪気に年が11歳上のハミルに、
「兄様、今日は温室花壇を探検しました」
「どんな花が咲いていた?」
「ピンク色の綺麗なの。名前は確か・・・ピンクローズ? 棘があって触っちゃ駄目なの」
「ああ、入口の左側に咲いている花か」
「はい、そうです」
「花が欲しい時は庭師に言って取らせるようにな」
「は~い」
そんな団欒は続いたのだった。
アリストン家は建国からの武門の出で、アンドレーヌ王国での爵位は伯爵だった。
この伯爵という爵位は意外に重要である。
上位貴族である公爵などが騎士団長になったら権力が集中する恐れがあるので、アンドレーヌ王国では文官トップの宰相職と武官トップの騎士団長職は公爵と侯爵の家の者はなれない決まりとなっているのだから。
その騎士団長カークスのアリストン伯爵家の領地は王都圏にあり、領地運営はもっぱら血の繋がった弟に任せている。
つまりは王都に出ずっぱりな訳だが。
騎士団長は武官のトップなので、その仕事はアンドレーヌ王国軍の軍部全般に及ぶ。
よって些事などはカークスの耳には入らずに部下達が処理する訳だが。
例えばだが、本日の貴族学校の放課後の噴水広場であった王太子ハミルの行動は騎士団長のカークスの耳に届くのか?
答えはノーである。
王太子ハミルを守る為に従っていた近衛騎士は騎士団長カークスではなく、国王カミル・アンドレーヌの耳に直接、貴族学校の出来事(王太子ハミルの行動)を届ける決まりとなっていた。
それも国王執務室で重要案件の決定を終えて夕食前に寛いでいる時に。
ドアがノックされて侍従がドアを開き、近衛騎士が入室を許される。
一介の近衛騎士の顔など国王は一々覚えていない。
なので、
「何だ?」
「本日、貴族学校で殿下が見過ごせない行動をされましたのでご報告を」
「見せよ」
報告書を読む。噴水広場の出来事が明確に書かれていた。
「ハミルがエルゼーシア嬢以外の女生徒とのう。この子爵令嬢のハミルへの接近に不自然な点は?」
ハニートラップ要員か、との質問だ。
王太子ハミルと公爵令嬢エルゼーシアの決裂を望む勢力はアンドレーヌ王国には多い。
王弟の大公ニヒル・アフス陣営。
第2王子コミルを国王に添えたい外戚のナンシーサン侯爵陣営。
もし、その二勢力が暗躍していたらお灸を添えねばなるまい。
「いえ、入学から成績トップを維持して順当に生徒会入りをしておりまして」
「ふむ、ラリー子爵家ね~」
名前を呟くが国王のカミルには当主の顔も領地も思い出せなかった。
室内に同席していた書記官が、
「北西の小領で、主産業は材木だったかと」
「寄り親は?」
これは重要だ。
その家名いかんで背景も分かるのだから。
「王家直轄です」
予想外の答えだった。
裏で糸を引いている者が居ない?
いや、王家直轄など余計に怪しい。大公の息が掛かっている?
「調べさせよ、近衛と宰相の両方で。内密にだ」
そう厳命したが、近衛騎士が言い辛そうに、
「既に殿下が貴族学校で活動される生徒会に参加が決定した時点で調べました」
そうなのか?
「結果は?」
「不明な点はありませんでした。子爵邸には密偵を潜り込ませてありますが未だに何も発見出来ないとの事です」
「背景に問題はなしか。ハミルめ、それを知っていて。結婚前から側妃の選定をするつもりか?」
カミルはそう王太子の行動の真意に頭を悩ませたのだった。
そしてその日の夕食。
アンゼル宮殿の食堂には王族の全員が集まっていた。
国王のカミル。
王妃のミラリー。
王太子のハミル。
第2王子のコミル。
側妃のスミアン。
ここ最近の家族の食事会の主役は6歳のコミルである。
まだ6歳なので思慮がない。まさか王妃に「邪魔な存在だ」と思われてるとは知る由もなく無邪気に年が11歳上のハミルに、
「兄様、今日は温室花壇を探検しました」
「どんな花が咲いていた?」
「ピンク色の綺麗なの。名前は確か・・・ピンクローズ? 棘があって触っちゃ駄目なの」
「ああ、入口の左側に咲いている花か」
「はい、そうです」
「花が欲しい時は庭師に言って取らせるようにな」
「は~い」
そんな団欒は続いたのだった。
13
あなたにおすすめの小説
気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした
ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
その掃除依頼、受けてやろう
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者パーティー「明るい未来」のリックとブラジス。この2人のコンビはアリオス王国の上層部では別の通り名で知られていた。通称「必要悪の掃除屋」。
王国に巣食った悪の組織を掃除(=始末)するからだが。
お陰で王国はその2人をかなり優遇していた。
但し、知られているのは王都での上層部だけでのこと。
2人が若い事もあり、その名は王都の上層部以外ではまだ知られていない。
なので、2人の事を知らない地方の悪の組織の下のその2人が派遣されたりすると・・・
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
追放されましたが、辺境で土壌改革をしたら領民からの感謝が止まりません。~今更戻ってきてと言われても、王都の地盤はもうボロボロですよ?~
水上
恋愛
【全11話完結】
「君は泥臭くて可愛くない」と婚約破棄されたセレナ。
そんな王太子に見切りをつけ、彼女は辺境へ。
そこで待っていたのは、強面だけど実は過保護な辺境伯だった。
セレナは持ち前の知識と技術で不毛の大地を大改革。
荒野は豊作、領民は大歓喜。
一方、彼女を追放した王都は、特産品のワインが作れなくなったり、土壌が腐って悪臭を放ったり、他国との同盟に亀裂が入り始めたりと大惨事に。
戻ってきてと縋られても、もう手遅れですよ?
公爵令嬢クラリスの矜持
福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。
だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。
嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる