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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
8、エルゼーシア・マリーハルケンの18歳の誕生日パーティーが始まる
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エルゼーシアの18歳の誕生日パーティーが定刻通りに始まった。
開催場所はマリーハルケン公爵邸の無駄に広い吹き抜けの玄関ホールだった。
「玄関ホールでパーティーなど非礼だ」と思うなかれ。
最初からパーティーを開く目的でこの玄関ホールは設計されているのだから。なので楽団が演奏出来るスペースはもちろん、吹き抜けに面した2階には2階席も設置されているくらいだ。
何せ、マリーハルケン公爵家には敵が多い。
内部にまで部外者を入れると面倒臭い事になるので。
なのでパーティー会場として部外者に解放される場所は玄関ホールや玄関ホール近くの来客用の化粧室くらいだった。奥へと続く廊下は公爵家の私兵が封鎖だ。中には入れない。庭も厳重に警戒されている。
暗殺者や工作員が入れる隙などなかった。
マリーハルケン公爵家の権勢か。
それともエルゼーシアが王太子ハミルの婚約者だからなのか。
出席者達は早々たる顔ぶれとなった。
王家だけで、今年は、
王太后のムーラ。
王妃のミラリー。
側妃のスミアン。
第2王子のコミル。
国王の実弟で大公のニヒル・アフス。
大公令息で貴族学校1年生のニヒナン・アフス。
これらが来ていた。
王太后のムーラと大公のニヒル・アフスはエルゼーシアの誕生日パーティーに出席する為だけに王都アルゼン入りしているくらいなのだから。
そして、アンドレーヌ王家とマリーハルケン公爵家にはサランド公爵家の系譜を挟んで縁戚だった。
王太后ムーラとマリーハルケン前公爵夫人のモーラが共にサランド公爵家出身の姉妹だったのだから。
なので、王太子ハミルとエルゼーシア公爵令嬢は母方の系譜で又従兄妹という関係だった。
お陰でエルゼーシア公爵令嬢と王太后ムーラの関係は良好である。
王太后ムーラから見たらエルゼーシアは妹の孫で自分の孫の結婚相手となるので。
「王太后陛下、お久しぶりでございます」
真紅の煌びやかなドレスを纏ったエルゼーシアが美しいカーテシーで挨拶すると、
「今日のパーティーの主役がそんなに畏まらないの」
にこやかに王太后ムーラが答える。
その背後に控える王妃ミラリーと側妃スミアンから言わせれば、その王太后ムーラの態度は、
(何ですの、それ? 同盟国の王女であるわたくしには厳しくした癖に)
(ええ、本当に。ドレス一つでどれだけ嫌味を言われた事か。そのドレス程度に肩を出しただけで遠回しに『綺麗な肌をしてるのね。周囲に自慢したくなるのも分かるわ~』って褒めたふりをして貶したのに~)
だったが、二人とも心得ているので素知らぬ顔をして何も言わなかった。
「エルゼ義姉様、今日は一段とお綺麗です」
6歳のコミルが紳士らしく褒めた。
「あら、ありがとう、コミル殿下。あちらに殿下の大好きなお菓子を用意してますよ」
「わ~い、だから大好き、エルゼ義姉様~」
コミルが抱き付いて「あらあら」と笑っていた王太后ムーラが、パーティー会場の玄関ホールを見渡してから、
「それで? パーティーの主役を放り出してハミルはどこにいるのかしら?」
笑顔で尋ねた。
笑顔だったが王太后ムーラの機嫌が悪くなった事は誰の眼にも分かり、エルゼーシアが代表して、
「それがハミル殿下はまだ貴族学校の生徒会のお仕事をされているらしく」
「その程度の些事で婚約者の誕生日パーティーに遅刻してるの? ミラリー妃、王太子を少し甘やかし過ぎてるのではなくて。時間を守らぬ王族は信用されなくてよ」
「まあまあ、陛下。今日はおめでたい席ですから」
そう王太后ムーラを宥めたのは実子で大公のニヒル・アフスである。
国王とは両親が同じ兄弟なので面影がかなり国王と似ている。違いは髭がないのと服装が違うくらいだった。
「とか言ってニヒルは内心で喜んでいるのでしょう。王太子に王の資質がなければ王座が回ってくるものね」
「そんな事ある訳ないでしょ。そんな大それた事をチラッとでも考えたら最後、マリーハルケン前公爵の前に自らが産んだ息子だろうと『王家の為よ』とか言って陛下に始末されるのですから」
ニヒルが言った今の「陛下」とは実母で先代王妃の王太后ムーラの事だ。
母親がキッツイ性格で「それくらいなら平気でやる」事をニヒルはちゃんと知っていたのだ。
それは周囲に控えている王妃のミラリーや側妃のスミアンも同様だったのだが、言われた本人の王太后ムーラはニヒルではなく別の場所を見ながら、
「あら、わたくしはそこまで酷くはなくてよ。主役の孫娘を差し置いて、あちらで年甲斐もなく皆の注目を集めている亡き妹の夫の酷さに比べたら優しいものだわ」
王太后ムーラが向けた視線先では前公爵のエドモンドがドルオ・モスール辺境伯と談笑していた。
この両者の接近の政治的な意味が分かった王家の大人達全員が背筋を正す中、ムーラが更に、
「エルゼちゃんとの婚約を王家の頼みで、我が兄がどれだけ大変な思いをして結んだのかハミルは知らないようね。わたくしは引退した身。王家が窮地に陥っても口を挟むつもりはありませんから自分達でどうにかしなさいね」
開催場所はマリーハルケン公爵邸の無駄に広い吹き抜けの玄関ホールだった。
「玄関ホールでパーティーなど非礼だ」と思うなかれ。
最初からパーティーを開く目的でこの玄関ホールは設計されているのだから。なので楽団が演奏出来るスペースはもちろん、吹き抜けに面した2階には2階席も設置されているくらいだ。
何せ、マリーハルケン公爵家には敵が多い。
内部にまで部外者を入れると面倒臭い事になるので。
なのでパーティー会場として部外者に解放される場所は玄関ホールや玄関ホール近くの来客用の化粧室くらいだった。奥へと続く廊下は公爵家の私兵が封鎖だ。中には入れない。庭も厳重に警戒されている。
暗殺者や工作員が入れる隙などなかった。
マリーハルケン公爵家の権勢か。
それともエルゼーシアが王太子ハミルの婚約者だからなのか。
出席者達は早々たる顔ぶれとなった。
王家だけで、今年は、
王太后のムーラ。
王妃のミラリー。
側妃のスミアン。
第2王子のコミル。
国王の実弟で大公のニヒル・アフス。
大公令息で貴族学校1年生のニヒナン・アフス。
これらが来ていた。
王太后のムーラと大公のニヒル・アフスはエルゼーシアの誕生日パーティーに出席する為だけに王都アルゼン入りしているくらいなのだから。
そして、アンドレーヌ王家とマリーハルケン公爵家にはサランド公爵家の系譜を挟んで縁戚だった。
王太后ムーラとマリーハルケン前公爵夫人のモーラが共にサランド公爵家出身の姉妹だったのだから。
なので、王太子ハミルとエルゼーシア公爵令嬢は母方の系譜で又従兄妹という関係だった。
お陰でエルゼーシア公爵令嬢と王太后ムーラの関係は良好である。
王太后ムーラから見たらエルゼーシアは妹の孫で自分の孫の結婚相手となるので。
「王太后陛下、お久しぶりでございます」
真紅の煌びやかなドレスを纏ったエルゼーシアが美しいカーテシーで挨拶すると、
「今日のパーティーの主役がそんなに畏まらないの」
にこやかに王太后ムーラが答える。
その背後に控える王妃ミラリーと側妃スミアンから言わせれば、その王太后ムーラの態度は、
(何ですの、それ? 同盟国の王女であるわたくしには厳しくした癖に)
(ええ、本当に。ドレス一つでどれだけ嫌味を言われた事か。そのドレス程度に肩を出しただけで遠回しに『綺麗な肌をしてるのね。周囲に自慢したくなるのも分かるわ~』って褒めたふりをして貶したのに~)
だったが、二人とも心得ているので素知らぬ顔をして何も言わなかった。
「エルゼ義姉様、今日は一段とお綺麗です」
6歳のコミルが紳士らしく褒めた。
「あら、ありがとう、コミル殿下。あちらに殿下の大好きなお菓子を用意してますよ」
「わ~い、だから大好き、エルゼ義姉様~」
コミルが抱き付いて「あらあら」と笑っていた王太后ムーラが、パーティー会場の玄関ホールを見渡してから、
「それで? パーティーの主役を放り出してハミルはどこにいるのかしら?」
笑顔で尋ねた。
笑顔だったが王太后ムーラの機嫌が悪くなった事は誰の眼にも分かり、エルゼーシアが代表して、
「それがハミル殿下はまだ貴族学校の生徒会のお仕事をされているらしく」
「その程度の些事で婚約者の誕生日パーティーに遅刻してるの? ミラリー妃、王太子を少し甘やかし過ぎてるのではなくて。時間を守らぬ王族は信用されなくてよ」
「まあまあ、陛下。今日はおめでたい席ですから」
そう王太后ムーラを宥めたのは実子で大公のニヒル・アフスである。
国王とは両親が同じ兄弟なので面影がかなり国王と似ている。違いは髭がないのと服装が違うくらいだった。
「とか言ってニヒルは内心で喜んでいるのでしょう。王太子に王の資質がなければ王座が回ってくるものね」
「そんな事ある訳ないでしょ。そんな大それた事をチラッとでも考えたら最後、マリーハルケン前公爵の前に自らが産んだ息子だろうと『王家の為よ』とか言って陛下に始末されるのですから」
ニヒルが言った今の「陛下」とは実母で先代王妃の王太后ムーラの事だ。
母親がキッツイ性格で「それくらいなら平気でやる」事をニヒルはちゃんと知っていたのだ。
それは周囲に控えている王妃のミラリーや側妃のスミアンも同様だったのだが、言われた本人の王太后ムーラはニヒルではなく別の場所を見ながら、
「あら、わたくしはそこまで酷くはなくてよ。主役の孫娘を差し置いて、あちらで年甲斐もなく皆の注目を集めている亡き妹の夫の酷さに比べたら優しいものだわ」
王太后ムーラが向けた視線先では前公爵のエドモンドがドルオ・モスール辺境伯と談笑していた。
この両者の接近の政治的な意味が分かった王家の大人達全員が背筋を正す中、ムーラが更に、
「エルゼちゃんとの婚約を王家の頼みで、我が兄がどれだけ大変な思いをして結んだのかハミルは知らないようね。わたくしは引退した身。王家が窮地に陥っても口を挟むつもりはありませんから自分達でどうにかしなさいね」
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