マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

23、アンヌの貴族学校の通学続行は国王カミルの判断

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ラリー子爵がアンゼル宮殿に提出した陳情書は「アンヌが時の人」だった事もあり、貴族達が出す陳情書の山に埋もれる事なく、アンゼル宮殿に届いたその日には優秀な下っ端文官の手によって宰相執務室にまで辿り着いていた。

宰相ブラックス・サンドスも「何を書いて寄越したんだ?」と気になって読み、

「ほう、王家の意向に従うか。さすがは王家直轄だな。ラリー子爵は令嬢と違って忠義に厚い下位貴族のようだな」

と満足して、国王執務室に直接届けたのだった。

宰相ブラックスが直接「ラリー子爵からの陳情書です」と渡した時には嫌そうな顔をした国王カミルだったが、陳情書を読んで、

「ほう、毒杯や退学の指示にも従うか。ラリー子爵は忠義に厚いようだな」

と喜んだのだった。

ラリー子爵は「王家の為なら娘であろうと殺す」とまで言ってきたのだ。

アンドレーヌ王国の模範的な下位貴族といってもいい。

そうだ、これこそがアンドレーヌ王国の正しい貴族のあり方なのだ。

「王家に取って代わろう」や「上の王子を押し退けて一族の血が入ってる下の王子を国王に添えよう」などと策略を巡らせたり、「忠臣面をして王家の為」と過剰なまでに干渉してくる高位貴族どもの方がおかしいのだから。

「どうしましょう、陛下? この手紙から見るに、おそらく子爵は本気です。指示を出せばこちらが手を汚す事なく、ラリー子爵の方で内々に決着を付けると思われますが」

自分の孫でも簡単に切り捨てた宰相ブラックスが怖い質問をする中、ラリー子爵からの忠義に厚い手紙を読んで気を良くした国王カミルが、

「いや、そこまでする必要はなかろう。王太后陛下の警告の意味が無くなるからな」

「では令嬢は退学ですか?」

正直、それが妥当である。

「これ以上の問題が起こる」のを避けるにはその原因となってる令嬢を排除するのが一番なのだから。

王家の為だ。

下位貴族の令嬢1人を切り捨てるのに宰相ブラックス同様、国王カミルも何の躊躇もない。

簡単に切り捨てられる。

それが国王という立場なのだから。

そして「王太子ハミルの近くにいる成績トップとかいう子爵令嬢の退学」は国王カミルも当初からプランにあったのだが。

ラリー子爵からの模範的な下位貴族の忠義が記された手紙を読んで、かなり好印象を得てしまったので、

「最後の警告をしたところだ。今回は様子を見る。ハミルの成長に役に立つかも知れぬのでな。それでも駄目であれば、その時に改めて子爵に命令を出せば良かろう」

こんなアマアマな裁定を下してしまったのである。

アンヌとしては首の皮一枚で助かった形な訳だが。

これが「アンドレーヌ王家を終焉に迎える」決定になるとは、この時の国王カミルは知る由もなかった。

宰相ブラックスの方も王家直轄(面倒な高位貴族の寄り親貴族の居ない)の子爵など「家ごと、いつでも潰せる」との認識だったので同じようにゆるく、

「畏まりました。では、そのように返事致しますね」

「返事には余のサインを入れてやろう。その方が子爵も安心するであろうからな」

名案だ、と言わんばかりにそんな事を言い、本当に文官がしたためた返書にサインを入れた国王カミルであった。





 ◇





ラリー子爵家の執務室では届けられたアンゼル宮殿から書状を祈るようにラリー子爵が開封した。

内容を読み、

「ふ~、さすがは陛下だ。『節度を守ればそのまま通学してよい』とおっしゃられてる」

「良かった~。本当に『殺せ』と言ってきたらどうしようかと思ったわ」

夫人コギーも喜んだ。





そのアンゼル宮殿からの返事を受けて、ラリー子爵家では家族会議が開かれた。

まあ、嫡子のアントニーは欠席しての3人だけだったが。

ラリー子爵の王都アンゼルの屋敷は本当に小さいので、大切な話は全部、執務室で行われる。

「これを見なさい、アンヌ」

子爵のアトスがアンヌを諭すように見せた。

「私をそのまま貴族学校に通学させてもいい? アンドレーヌ王国の貴族の子供としての当然の権利だと思うけど」

勉強のし過ぎだろうか?

アンヌもどこかがズレてる。

「違うぞ。アンヌは食堂の食中毒の時に殺されていても文句が言えなかったんだぞ」

「えっ、どうしてです?」

「王太子殿下に色目を使って近付いた下位貴族の令嬢だからだ」

「色目なんて使ってませんよ」

「使ってなくても周囲からはそう見えていたら『それは一緒』の事なんだよ。どうしてヒールなんていただいたりしたんだ?」

「だって断れなくて・・・」

アンヌも「あれは拙かった」と思ってるらしく声を小さくした。

「まあ、確かにな。殿下から渡されたら断れないか。だが次からは受け取るにしても、せめて『別の人からのプレゼントという事にして下さい』と言いなさい」

娘を心配して「妙な入れ知恵」を付ける父親のアトスだった。

「それと王太子殿下との節度、まあ距離感だが、それはちゃんと守るようにな」

「何もありませんから」

「噂されたら『無くてもあった』事に流言一つでされるのがアンゼル宮殿だ。将来、文官になるのだろう? 今から慣れておきなさい」

そうアトスは娘のアンヌを懇々と諭したのだった。





そしてラリー子爵家の家族は領地に帰っていき、王都アンゼルの屋敷の玄関には「額縁に入った国王カミルのサイン入りの通学続行許可書」が飾られたのだった。
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