マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

24、ハミルの30日の謹慎が明ける

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30日の謹慎を終えたて王太子ハミルが北の塔から解放される日がやってきた。

無論、ただ解放される訳ではない。

アンゼル宮殿の私室で待つ国王カミル、王妃ミラリーの前に王太子ハミルは通されて、

「反省したな?」

確認されたのだから。

ここで「いいえ、エルゼのせいで入れられてうんざりです」などと本心を答えようものなら、また入れられるので、

「はい、陛下」

塩らしく返事をしたハミルだった。

王太子の反省を見て、国王カミルと王妃ミラリーは「ちゃんと反省したか」「立派よ、ハミル」とはならない。何故ならば2人はちゃんと息子の事を知っており「ハミルらしくない」と内心で危惧していたのだから。

だが、違和感だけだったので指摘せずに、

「うむ。ではハミルが幽閉中にあった事を幾つか伝える。1つ、謹慎中のハミルの脱走に協力した平民、サバルス商会のコンドルの息子を労役5年でイクシー銀山に送った」

「えっ、イーグルは宰相の血を引いているのでは?」

側近が罪に問われた事にさすがのハミルも驚いた。

「宰相の判断だ。宮殿の隠し通路を気軽に使うからこうなる。落城の時以外には『使うな』と教えたであうが。どうして使った? あれは王妃も知らぬのだぞ?」

「あら、そうなのですの?」

「いくら同盟国とはいえ宮殿の秘密は教えられぬからな」

「それはそうですわね」

国王カミルと王妃ミラリーが喋った後、ハミルを見たのでハミルは不思議そうに、

「えっと、イーグルは隠し通路に通っておりませんが」

「詰問中に入り方を知ってしまったのだ」

「それだけで?」

「それだけでだ。いいな。王国の存亡以外では二度と使うな」

「・・・畏まりました」

「2つ、貴族学校の食堂で毒の木の実が混入する事故が起きた。巻き込まれたのはアンヌ・ラリー子爵令嬢だ」

「はあ? どうして、アンヌ嬢が・・・まさか、またエルゼが」

「全然違うわ」

国王カミルが吐き捨てると同時に「やはり反省しておらぬな」と判断しつつ、噛み砕くようにハミルに向かって、

「総てはハミル、おまえがマリーハルケン公爵の茶会に乗り込んで起こした失態のせいだ。よくもあれだけの高位貴族の夫人達が居た前であのような騒ぎを起こせたものだな。あの失態のせいで子爵令嬢の『ハミルの側妃候補の噂』が現実味を増したのだぞ」

「やれやれ、そんな勘繰りをエルゼがするとは」

「エルゼーシア嬢ではない。そこから離れよ」

指摘した国王カミルが溜息と共に、

「いい加減、分かれ、ハミル。おまえは王太子、次の国王なのだぞ。その王太子が下位貴族、それも令嬢を婚約者のエルゼーシア嬢よりも大切に扱ったら、他の貴族達が黙ってはいないに決まっているではないか。エルゼーシア嬢はマリーハルケン公爵家の令嬢だから他の貴族は口を噤んで何も言われぬだけで、王子に近付いた令嬢など悪意の的なのだぞ、本来ならば。余の時も大変でな。婚約者候補の名が挙がった令嬢達がそれはもう苛烈な潰し合いをしてたものだ。隣国から王妃を貰う事はとっくの昔に決まっていたのにだぞ」

それには結婚相手の王妃ミラリーも口元を扇で隠して苦笑した。

「そもそも、何とも思っていない令嬢にプレゼントなんかを贈るか? それも人知れずならともかく階段から転落する原因となるなど」

「あれは私が悪いのです」

「そうだな。悪いのはハミルだ。だが『王太子が悪い』では他の貴族が納得しない。よって『別人が悪くされる』。階段の転落では『ハイヒールをねだった子爵令嬢が悪い』だ。茶会のハミルの失態も『ハミルに泣き付いて、それをやらせた子爵令嬢が悪い』となる」

と説明してから、

「そして3つめだ。王家に忠誠を誓うアンドレーヌ王国の模範的な下位貴族で、領地に居た親が王都アンゼルでの娘の噂を遅蒔きに耳にしたら『こんな書状』を送ってくる」

ラリー子爵が寄越してきた手紙を国王カミルは息子のハミルに見せた。

「娘を王家の指示で殺す」と書かれた書状だった。

何だ、これは?

王家への追従が過ぎるのではないか。

と内心で苦笑したハミルだったが、署名欄がアトス・ラリーだったのを見て、アンヌの実家ラリー家の書状だと分かり、アンヌの父親の名前は知らなかったが「もしかしてアンヌの父親が」と遅蒔きに悟った。

「えっと、本心じゃありませんよね?」

「証拠に残る書面で提出してきてるのにそう思うのか、ハミルは?」

「誰かが無理矢理書かせた、とかの可能性も・・・」

「違う。油断ならぬ高位貴族どもとしか接点のないハミルは知らぬであろうがな。王家直轄の下位貴族で、王家に忠誠の厚い者達は『これが普通』なのだよ。余が命じただけでラリ一子爵は小細工なしで子爵令嬢を殺すぞ。断言してもいい」

それを聞き、王太子ハミルは背筋を正した。

アンヌの生殺与奪の権利が国王カミルにある事を否応なく実感したからだ。

「・・・私はどうすればよろしいのでしょうか?」

「子爵令嬢とはこれ以上親密になるな。王家とマリーハルケン公爵家に狙われたらラリー子爵家など簡単に吹き飛ぶのだからな。王太子のハミル1人では守り切れまい」

「ですが」

王太子のハミルが反論を口にしようとしたが、それよりも早く国王カミルが、

「警告は今回の毒の木の実が最後だ」

「・・・最後とは?」

あったら余がアンゼル宮殿にラリー子爵を招いて『娘を殺せ、と命令する』という意味だ。『ハミルの周囲に居ては王家に不都合だから』との理由だけでな。当然『夫人殺しの悪評のあるホースマー侯爵との結婚を斡旋』などといったぬるい事はせぬぞ。その令嬢は既に王家とマリーハルケン公爵家の政略結婚に干渉している。存在自体がアンドレーヌ王国の不利益となっているのだからな。毒の木の実での警告などせずに手っ取り早く貴族学校から退学させても良かったが、ハミルの失態の巻き添えで何の瑕疵もない優秀な生徒の未来を閉ざすのは気が引けたのでな。毒の木の実での警告は王家としての温情でもある。その令譲が無傷では他の貴族が勝手に潰しに動く可能性もあったのでな。毒の木の実での警告があれば、もうどの貴族も巻き添えを恐れてその令嬢にちょっかいを掛けぬという訳だ」

まるで「毒の木の実」の件がいい事のように説明された。

「・・・文官になる事がアンヌ嬢の夢らしいのですが」

「自力で試験に合格するのであれば何の問題ない」

「本当ですね」

確認するようにハミルが問うと、

「ああ、だが・・・分かってるな、ハミル」

「はい、陛下」

「では退室して良し」

「失礼します」

王太子ハミルはその後、退室していったのだが、





部屋に残った国王カミルと王妃ミラリーは王族とはいえハミルの親である。

なので息子の嘘くらいは簡単に見抜けており、

「あれは全然、分かっておらぬな」

「はい、絶対に何かやりますね。どうしてあんな風に育っちゃったのかしら」

2人は深々と溜め息を吐いたのだった。
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