マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

31、国王誕生日、昼の部

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アンドレーヌ王国の国王カミルの誕生日。

その日のアンゼル宮殿のスケジュールは、

昼間は隣国の使者、並びに国内貴族達による国王への祝賀謁見。

夜は舞踏会。(貴族学校の学生は参加不可)。

このようになっており、





午前中に隣国(と言っても隣接国は東のサラット王国しかないのだが)の使者と面談した。

他は一切、使者を寄越してこない。西のタル草原の騎馬民族は使者など派遣してこないし、北のイリオット王国はパルプス山脈が国交を遮断しているので。

カフス海を挟んだ貿易国が使者を寄越すのは内地の王都アンゼルではなく、カードレートの港を統治するマリーハルケン公爵家へなのだから。

そんな訳でアンゼル宮殿で他国の使者1組とチャッチャと面会を終えれば、後の時間は全部が貴族達との祝賀面会に費やされた。

何故そんなに時間が必要なのかと言えば、アンドレーヌ王国の貴族の数は御存知、

大公家が1。

公爵家が4。

侯爵家が9。

辺境伯家が2。

伯爵家が29。

子爵家が70。

男爵家が143。

となっており、午前中から始めないと夜までに終わらない可能性があるからだ。

高位貴族が複数の爵位を所有していたりするので、この数字の人数だけ貴族が居る訳でもないが。

有家無家の末端の男爵家などは、この日のみが国王カミルと謁見出来る唯一の日である。

アンドレーヌ王国の建国祭では辺境伯までしか挨拶出来ないので。

末端の男爵達が国王に挨拶出来るのは国王カミルの温情なのだが。

「こんなに会えるか、面倒臭い」

そう言えば、あっという間に規模は縮小出来るのだから。

たが、国王カミルがそんな事を言っていないのだから謁見は実行された。

とはいえである。

調見の間への入場と退出の調見する貴族の移動だけで2分。

会話が3分。

その計5分計算の謁見でも200人とすれば1000分も時間が掛かる計算なのだから。

1時間が60分なのだから600分だけで10時間となり、残る400分も時間に直したら6時間40分となる。

そうなのだ、1000分は時間単位に変換すると16時間40分となるのだ。

もうお分かりだろう。

午前中から謁見を始めてもアンドレーヌ王国中の貴族がその日1日に挨拶するのは、土台無理な話なのである。

貴族200人以上を謁見の間に一堂に集めておいて、次々に声を掛ければ可能だが。

そんな事をすれば流れ作業になるし、何を喋ったのかも周囲にモロバレになる(まあ、警備の騎士達が居るので国王が密談をする事は厳密には不可能なのだが)。

それに謁見の特別感も演出出来ない。

これでは「謁見をやる」意味がないのだ。

何より、この謁見では上位貴族達は、堂々と子供や引退した先代を参加させる場合もあるのに。

そんな訳で、国王カミルとの面会日は毎年全員は無理で、「2年、または3年に1回」の頻度で行われた。

ただし、それは有象無象の下位貴族の場合である。

高位貴族はもちろん、アンゼル宮殿の中枢に居る有力な下位貴族達は毎年国王カミルと謁見しているのだから。





他には例外的として。

昨年ちゃんと謁見したはずなのに、娘が貴族学校で悪目立ちしたせいで「娘を同伴して参加するように」との招待状が届いたラリー子爵とかも。





 ◇





そんな訳でラリー子爵家はアンヌも一緒に謁見である。

下位から始まる謁見なので、男爵を捌くだけで午前中は終わり、子爵家は午後からとなったが。

本日は平日である。

貴族学校を「国王陛下の誕生日謁見」で公欠のアンヌは申し訳なさそうに、

「お父様、お母様、ごめんなさい」

そう謝罪した。

謁見に来てる廊下で見かける貴族達に令嬢や令息を連れてきている家はない。

それなのに自分が場違いな場所にいる理由を「貴族学校のゴタゴタのせい」くらいはアンヌも分かっており、アンゼル宮殿の廊下で謁見を待つ両親に神妙な顔で詫びた訳だが、

「こんなに早くアンヌを陛下に紹介出来る栄誉を授かるのだから、アンヌが謝る必要はないよ」

「本当に。アンヌが目立ってくれたのは幸運なくらいなんだから」

アンヌの両親のアトスとコギーは「娘を心配させまい」とそんな風に笑ったが、内心はド緊張である。

アンヌを見た国王が「やっぱり気が変わった。殺しておくように」とか言われそうなので。

「お時間です」

案内係の文官がそう告げた。

謁見の間の扉を潜るとお声係が、

「ラスクル領のラリー子爵家、当主のアトス様、夫人のコギー様、令嬢のアンヌ様。ご入場されます」

そんな事を告げた。

国王に教える為だろう。

もしくは「入場者の身元を改めた」と告げる為か。

ともかく、その声でラリー子爵家一家は謁見の間に入ったのだった。

ラリー子爵家の前に謁見していた貴族達は別の出口から退出しているので別に誰かと視線が会う事もない。

そして上座には国王カミル、王妃ミラリーがいた。

宰相ブラックス、騎士団長カークスも控えるが、それだけではない。

財務卿フリット・ゲール。

内務卿ジョール・サンドス。

外務卿ガルード・ダルトン。

法務卿イーラ・サランド。

騎士団副団長ブッチャル・ウッドー。

海軍総督ベード・コモリーム。

軍務卿チャントス・ベドル。

最高幹部達が勢揃いしていたのだから。

他にも謁見の貴族説明要員の文官達がチラホラいる。

これらの重鎮らも勢揃いしていたので空気は本当に引き締まっていた。

ラリー子爵家一同が礼をして、アトスが代表して、

「アンドレーヌ王に拝謁いたします」

「うむ、良く来てくれた。そちらがラリー子爵の令嬢か。一度見ておこうと思ってな」

国王カミルがアンヌを見た。

確かに美人の部類だが別段、王太子のハミルが執着するほどの美貌とは思えない。何が王太子の気を引いたのか。男を手玉に取るだけの手管でも持ってるのだろうか。

その娘を見定める視線を感じながらアトスが、

「陛下がお指図下されば、アンゼル宮殿を騷がせた娘は私めが責任を持って・・・」

「これ、ラリー子爵。余の誕生日に物騒な事を言うでない」

「はっ、申し訳ございません」

「それに許したであろう。何の問題もない。無論、文官試験の方も実力のみで査定するので安心せよ」

「はっ」

「ラスクル領の材木の方がどうだ?」

「最近では軍船に使うとカウス海の造船業者までが材木を求めてまして。正直、良い値を付けて貰っており儲かっております」

「うむ。伐採した箇所に植樹は?」

「アンドレーヌ王国よりお預かりしている地ですので万事抜かりなく」

アトスの受け答えは王家への忠誠に溢れてる。

面白味はないが、模範的な王家直轄の下位貴族だ。

忠誠心が厚い事だけは嫌でも分かった。

謁見の時間はあっという間に過ぎ、時計係の文官が「陛下、お時間です」と告げた。

「そうか、ではまたな、ラリー子爵、夫人、令嬢」

「はっ、退席させていただきます」

一礼をしてラリー子爵の一家は謁見の間を退室していった。

「どう見た、宰相?」

「問題はありませんな。どうしてあのような騒ぎになったのかが不思議なくらいです」

「ハミルが無駄に構ったせいであろう。言っておかねばな」

そう総括したのだった。
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