マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

文字の大きさ
34 / 50
卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

32、男爵令息キロス・ワイトム

しおりを挟む
 ◇





話が前後するが。





国王誕生日の直前の貴族学校では新たな動きがあった。

イーグルが去った貴族学校の生徒会では新たな会計が1人追加される事となったのだ。

チャック・アリストンは生徒会の会計としての能力が人並みだったので、補佐に新たな人員を入れる事になった訳だが。

まあ、それは建前である。

無役のジョンが手伝えば何の問題もなかったのだから。

それでも王太子ハミルが自由に動ける自分の手足となれる人物を欲しがった為に、新たに生徒会メンバーを選出する事となり、候補数名の生徒と面接した結果、





キロス・ワイドム。





という男爵令息が生徒会に新たに加わる事が決定した。

キロスは異世界あるあるの黄緑色の髪の少年で眼鏡を掛けている若者だ。

貴族学校の昨年度の学年末の成績は4位。

「何だ、4位か」と侮る事なかれ。

その学年は、

首席がアンヌ。

次席はハミル。

3位はエルゼーシア。

5位はイーグル。

なのだから。

4位は最高の成績と言ってもいい。

というか、キロスを押し退けてイーグルが入っていた事の方が元々問題があったのだから。

このキロスは男爵家の長男で、卒業後の進路は後継者として領地経営を手伝う事が決まっている。

そして、これは意外に重要な事なのだが婚約者もちゃんといた。

どうして重要かと言えばアンヌ嬢にちょっかいを掛けられては王太子ハミルが気に入らないからだ。

だが、このキロスが生徒会の役員に選ばれた真の理由はワイドム男爵家が「王家直轄の典型的な下位貴族」だったからである。





キロスの面接時、王太子ハミルの前に現れたキロスがガチガチで、

「お、お初にお目に掛かります、殿下。キロス・ワイドムです」

と名乗った瞬間に、その恐縮具合を王太子ハミルが気に入ってしまっていたのだから。

この様子ならば、王太子の自分を裏切る事もないだろう。

秘密も守られるな。

「会計のチャックを手伝って欲しい。頼めるか」

「で、殿下の為ならばこの命尽きるまで手伝わせていただきまする」

「ふふ、そこまでは手伝わなくても良い。だが陛下に黙って貰う事もあるかもしれぬがな」

「・・・えっ。そ、それはさすがに不可能ですので他の者にお頼み下さい」

ん、出来ぬのか?

やはり国王と王太子では国王の方が上か。この正直者め。

だが陛下に秘密を喋る奴はいらんな・・・いや違うか。

ここで二つ返事で同意して裏で喋る奴の方が信用が置けぬか。

ふむ。こやつにしよう。

という訳でキロスが新たな生徒会の会計として参加した。





国王誕生日の直前だったので謁見にワイドム男爵家が加わる事はなかったが。





 ◇





アンゼル宮殿の廊下で謁見を終えたラリー子爵一家の前に、そのキロスが現れた。

「えっ、アンヌ嬢? 綺麗ですね、そのドレス姿」

「あら、ありがと」

誰、という顔を両親がしたのでアンヌが紹介するように、

「お父様、お母様、生徒会の新たな会計となったキロス・ワイドム男爵令息です」

「ワイドム男爵家の嫡子、キロスです。生徒会に入って分からぬ事ばかりなのでアンヌ嬢にはお世話になっております。おっと、婚約者は既におりますので、別にアンヌ嬢に対して下心はございません。誤解はされませんように」

キロスが礼儀正しくも真面目に挨拶をした訳だが、アンヌが不思議そうに、

「何をしてるの?」

そう質問するのも当然である。

本日は平日。

貴族学校があるのだから。

時間帯も午後の早い時間なので貴族学校が終わってきたとは思えないので。

「それが、今日は何かと人手が足りないとかで、殿下に宮殿で雑用をするようにと。貴族学校もまさかの公休です」

「それは大変ね」

「いえいえ、殿下のお役に立てるなんて貴族冥利に尽きますよ。では急ぎますので」

「ええ、また学校でね」

なんて言って廊下で挨拶を終えて、別れた訳だが、





キロスはそのまま王太子の執務室へと戻った。

王太子のハミルは執務中だ。室内には国王が付けた文官達も居るので視線だけで「どうであった?」と問うと、

「殿下、先程、廊下でアンヌ嬢を見かけましたよ」

「・・・そうか」

興味無さそうに答えながらも「直接的過ぎるわ、そこは『生徒会の仲間』でいいところを。まだ下位貴族の時間なのだから子爵令嬢のアンヌだとそれで分かるというのに」と減点する中、

「ドレス姿が美しかったです」

そうではないであろう。

様子を語らぬか。その為に向かわせたのに。

「ふ~ん。他には?」

「特には。至って普通でしたので」

それが王太子ハミルが聞きたかった事である。

謁見で何かを言われていれば「青さめてる」はずなのだから。

「そうか。それよりも仕事をするように。次はこの資料を財務部より貰ってくるように」

「はっ」

キロスは本当に雑用をやらされているので書類を取りに出掛けたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

その掃除依頼、受けてやろう

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者パーティー「明るい未来」のリックとブラジス。この2人のコンビはアリオス王国の上層部では別の通り名で知られていた。通称「必要悪の掃除屋」。 王国に巣食った悪の組織を掃除(=始末)するからだが。 お陰で王国はその2人をかなり優遇していた。 但し、知られているのは王都での上層部だけでのこと。 2人が若い事もあり、その名は王都の上層部以外ではまだ知られていない。 なので、2人の事を知らない地方の悪の組織の下のその2人が派遣されたりすると・・・

公爵令嬢クラリスの矜持

福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。 だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。 嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...