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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
32、男爵令息キロス・ワイトム
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◇
話が前後するが。
国王誕生日の直前の貴族学校では新たな動きがあった。
イーグルが去った貴族学校の生徒会では新たな会計が1人追加される事となったのだ。
チャック・アリストンは生徒会の会計としての能力が人並みだったので、補佐に新たな人員を入れる事になった訳だが。
まあ、それは建前である。
無役のジョンが手伝えば何の問題もなかったのだから。
それでも王太子ハミルが自由に動ける自分の手足となれる人物を欲しがった為に、新たに生徒会メンバーを選出する事となり、候補数名の生徒と面接した結果、
キロス・ワイドム。
という男爵令息が生徒会に新たに加わる事が決定した。
キロスは異世界あるあるの黄緑色の髪の少年で眼鏡を掛けている若者だ。
貴族学校の昨年度の学年末の成績は4位。
「何だ、4位か」と侮る事なかれ。
その学年は、
首席がアンヌ。
次席はハミル。
3位はエルゼーシア。
5位はイーグル。
なのだから。
4位は最高の成績と言ってもいい。
というか、キロスを押し退けてイーグルが入っていた事の方が元々問題があったのだから。
このキロスは男爵家の長男で、卒業後の進路は後継者として領地経営を手伝う事が決まっている。
そして、これは意外に重要な事なのだが婚約者もちゃんといた。
どうして重要かと言えばアンヌ嬢にちょっかいを掛けられては王太子ハミルが気に入らないからだ。
だが、このキロスが生徒会の役員に選ばれた真の理由はワイドム男爵家が「王家直轄の典型的な下位貴族」だったからである。
キロスの面接時、王太子ハミルの前に現れたキロスがガチガチで、
「お、お初にお目に掛かります、殿下。キロス・ワイドムです」
と名乗った瞬間に、その恐縮具合を王太子ハミルが気に入ってしまっていたのだから。
この様子ならば、王太子の自分を裏切る事もないだろう。
秘密も守られるな。
「会計のチャックを手伝って欲しい。頼めるか」
「で、殿下の為ならばこの命尽きるまで手伝わせていただきまする」
「ふふ、そこまでは手伝わなくても良い。だが陛下に黙って貰う事もあるかもしれぬがな」
「・・・えっ。そ、それはさすがに不可能ですので他の者にお頼み下さい」
ん、出来ぬのか?
やはり国王と王太子では国王の方が上か。この正直者め。
だが陛下に秘密を喋る奴はいらんな・・・いや違うか。
ここで二つ返事で同意して裏で喋る奴の方が信用が置けぬか。
ふむ。こやつにしよう。
という訳でキロスが新たな生徒会の会計として参加した。
国王誕生日の直前だったので謁見にワイドム男爵家が加わる事はなかったが。
◇
アンゼル宮殿の廊下で謁見を終えたラリー子爵一家の前に、そのキロスが現れた。
「えっ、アンヌ嬢? 綺麗ですね、そのドレス姿」
「あら、ありがと」
誰、という顔を両親がしたのでアンヌが紹介するように、
「お父様、お母様、生徒会の新たな会計となったキロス・ワイドム男爵令息です」
「ワイドム男爵家の嫡子、キロスです。生徒会に入って分からぬ事ばかりなのでアンヌ嬢にはお世話になっております。おっと、婚約者は既におりますので、別にアンヌ嬢に対して下心はございません。誤解はされませんように」
キロスが礼儀正しくも真面目に挨拶をした訳だが、アンヌが不思議そうに、
「何をしてるの?」
そう質問するのも当然である。
本日は平日。
貴族学校があるのだから。
時間帯も午後の早い時間なので貴族学校が終わってきたとは思えないので。
「それが、今日は何かと人手が足りないとかで、殿下に宮殿で雑用をするようにと。貴族学校もまさかの公休です」
「それは大変ね」
「いえいえ、殿下のお役に立てるなんて貴族冥利に尽きますよ。では急ぎますので」
「ええ、また学校でね」
なんて言って廊下で挨拶を終えて、別れた訳だが、
キロスはそのまま王太子の執務室へと戻った。
王太子のハミルは執務中だ。室内には国王が付けた文官達も居るので視線だけで「どうであった?」と問うと、
「殿下、先程、廊下でアンヌ嬢を見かけましたよ」
「・・・そうか」
興味無さそうに答えながらも「直接的過ぎるわ、そこは『生徒会の仲間』でいいところを。まだ下位貴族の時間なのだから子爵令嬢のアンヌだとそれで分かるというのに」と減点する中、
「ドレス姿が美しかったです」
そうではないであろう。
様子を語らぬか。その為に向かわせたのに。
「ふ~ん。他には?」
「特には。至って普通でしたので」
それが王太子ハミルが聞きたかった事である。
謁見で何かを言われていれば「青さめてる」はずなのだから。
「そうか。それよりも仕事をするように。次はこの資料を財務部より貰ってくるように」
「はっ」
キロスは本当に雑用をやらされているので書類を取りに出掛けたのだった。
話が前後するが。
国王誕生日の直前の貴族学校では新たな動きがあった。
イーグルが去った貴族学校の生徒会では新たな会計が1人追加される事となったのだ。
チャック・アリストンは生徒会の会計としての能力が人並みだったので、補佐に新たな人員を入れる事になった訳だが。
まあ、それは建前である。
無役のジョンが手伝えば何の問題もなかったのだから。
それでも王太子ハミルが自由に動ける自分の手足となれる人物を欲しがった為に、新たに生徒会メンバーを選出する事となり、候補数名の生徒と面接した結果、
キロス・ワイドム。
という男爵令息が生徒会に新たに加わる事が決定した。
キロスは異世界あるあるの黄緑色の髪の少年で眼鏡を掛けている若者だ。
貴族学校の昨年度の学年末の成績は4位。
「何だ、4位か」と侮る事なかれ。
その学年は、
首席がアンヌ。
次席はハミル。
3位はエルゼーシア。
5位はイーグル。
なのだから。
4位は最高の成績と言ってもいい。
というか、キロスを押し退けてイーグルが入っていた事の方が元々問題があったのだから。
このキロスは男爵家の長男で、卒業後の進路は後継者として領地経営を手伝う事が決まっている。
そして、これは意外に重要な事なのだが婚約者もちゃんといた。
どうして重要かと言えばアンヌ嬢にちょっかいを掛けられては王太子ハミルが気に入らないからだ。
だが、このキロスが生徒会の役員に選ばれた真の理由はワイドム男爵家が「王家直轄の典型的な下位貴族」だったからである。
キロスの面接時、王太子ハミルの前に現れたキロスがガチガチで、
「お、お初にお目に掛かります、殿下。キロス・ワイドムです」
と名乗った瞬間に、その恐縮具合を王太子ハミルが気に入ってしまっていたのだから。
この様子ならば、王太子の自分を裏切る事もないだろう。
秘密も守られるな。
「会計のチャックを手伝って欲しい。頼めるか」
「で、殿下の為ならばこの命尽きるまで手伝わせていただきまする」
「ふふ、そこまでは手伝わなくても良い。だが陛下に黙って貰う事もあるかもしれぬがな」
「・・・えっ。そ、それはさすがに不可能ですので他の者にお頼み下さい」
ん、出来ぬのか?
やはり国王と王太子では国王の方が上か。この正直者め。
だが陛下に秘密を喋る奴はいらんな・・・いや違うか。
ここで二つ返事で同意して裏で喋る奴の方が信用が置けぬか。
ふむ。こやつにしよう。
という訳でキロスが新たな生徒会の会計として参加した。
国王誕生日の直前だったので謁見にワイドム男爵家が加わる事はなかったが。
◇
アンゼル宮殿の廊下で謁見を終えたラリー子爵一家の前に、そのキロスが現れた。
「えっ、アンヌ嬢? 綺麗ですね、そのドレス姿」
「あら、ありがと」
誰、という顔を両親がしたのでアンヌが紹介するように、
「お父様、お母様、生徒会の新たな会計となったキロス・ワイドム男爵令息です」
「ワイドム男爵家の嫡子、キロスです。生徒会に入って分からぬ事ばかりなのでアンヌ嬢にはお世話になっております。おっと、婚約者は既におりますので、別にアンヌ嬢に対して下心はございません。誤解はされませんように」
キロスが礼儀正しくも真面目に挨拶をした訳だが、アンヌが不思議そうに、
「何をしてるの?」
そう質問するのも当然である。
本日は平日。
貴族学校があるのだから。
時間帯も午後の早い時間なので貴族学校が終わってきたとは思えないので。
「それが、今日は何かと人手が足りないとかで、殿下に宮殿で雑用をするようにと。貴族学校もまさかの公休です」
「それは大変ね」
「いえいえ、殿下のお役に立てるなんて貴族冥利に尽きますよ。では急ぎますので」
「ええ、また学校でね」
なんて言って廊下で挨拶を終えて、別れた訳だが、
キロスはそのまま王太子の執務室へと戻った。
王太子のハミルは執務中だ。室内には国王が付けた文官達も居るので視線だけで「どうであった?」と問うと、
「殿下、先程、廊下でアンヌ嬢を見かけましたよ」
「・・・そうか」
興味無さそうに答えながらも「直接的過ぎるわ、そこは『生徒会の仲間』でいいところを。まだ下位貴族の時間なのだから子爵令嬢のアンヌだとそれで分かるというのに」と減点する中、
「ドレス姿が美しかったです」
そうではないであろう。
様子を語らぬか。その為に向かわせたのに。
「ふ~ん。他には?」
「特には。至って普通でしたので」
それが王太子ハミルが聞きたかった事である。
謁見で何かを言われていれば「青さめてる」はずなのだから。
「そうか。それよりも仕事をするように。次はこの資料を財務部より貰ってくるように」
「はっ」
キロスは本当に雑用をやらされているので書類を取りに出掛けたのだった。
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