マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

文字の大きさ
40 / 50
卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

38、見えない溝は深く広がる

しおりを挟む
貴族学校の放課後の生徒会の業務中に乗り込んできた近衛騎士がキロスをアンゼル宮殿に連れていったのだ。

翌日に王太子ハミルがキロスに「何があったのか?」と質問するのは当然の事で、キロスも国王に口止めされていなかったのでその時の問答をあっさりと喋った。

口止めされていなくても王族が関わる事は口を重くするのが通例なのに。

下位貴族ならではの無自覚さである。

高位貴族ならば令息でも教育されているので渋るのだから。

まあ、そのキロスの口の軽さも王太子ハミルは「キロスの自分に対する忠誠心の現れ」と受け取ったのだが。

キロスの言葉を聞いたハミルの感想は「早過ぎる。どうして気付かれた? もしかして監視されている? だが、あの時、執務室にはキロス以外、誰も居なかった。眼の前のキロスが報告したのか? いや、伝言の意味も分かっていなかったし、口止めしたので喋ると思えん。考えられるのはアンゼル宮殿の廊下で伝言を言われたと言ったな。その様子を見られたのか?」だったのだが。

王太子ハミルの感想はだった。

貴族界で広がってる噂の事を知らなかったので。





よって、その時はそれで話は終わったのだが。





 ◇





王太子ハミルが「アンヌがブルーウッド公爵の養女となる」との噂を耳にしたのは国王誕生日の3日後である。

それも噂になっている張本人のアンヌの口から。

アンヌの両親、ラリー子爵夫妻は王都アンゼルでの貴族界の動向に敏感になっていて、噂が広まった当日にはその情報を掴んでいたが、娘のアンヌには「心配させまい」と伝えていなかった。

なので、その噂をアンヌが知ったのは王都アンゼルにお使いに出たメイドが噂を耳にしたからで、メイド経由でアンヌは自分のその噂を聞き、両親に問う前に「相談」という形で生徒会のメンバーに先に、

「あの、どういう訳か私がどこかの公爵家の養女になるという噂があるらしいですけど、根も葉もない噂って貴族では当たり前なんですか?」

と質問したものだから、王太子ハミルの耳に届いてしまったのだ。

その噂には王太子のハミルも驚きだ。

確かにプランとしては考えていたがそのプランをハミルはまだ誰にも口外していない。

知っているのは伝言を預かったキロスだけ。

いや、ブルーウッド公爵もいる。

もしやブルーウッド公爵にハメられたのか?

そう疑ったが、もうとっくにその噂は貴族界では有名だったので1年生の宰相の孫のジョンが訳知り顔で、

「その噂、マリーハルケン公爵陣営が広めてるらしいですよ」

「まさか、それはないだろ。する意味もないし」

そう否定したのは生徒会に居たマリーハリケン公爵家のフイトミーだった。

フイトミーは公爵家の令息だったが「噂を知らない側」だったのでそう答えた訳だが。

「御家族に質問してみれば分かるかと?」

「構わんよ。笑われると思うがな」

などと会話をして、





その日の内に、アンゼル宮殿に戻った王太子ハミルは、それとなく調べさせると、噂の出所を間違いなくマリーハルケン公爵家だった。

何せ、マリーハルケン公爵陣営はその事を隠していないのだから。

簡単に判明した。





その事実を追認するように、翌日にはフイトミーが、

「申し訳ない、アンヌ嬢。うちが『噂を流した』で間違いないらしい」

謝罪する場面を生徒会の執務室で王太子ハミルも目撃しており、アンヌが問う前にハミルが、

「どうして、マリーハルケン公爵家はそんな噂を流したのだ?」

「殿下が陛下の誕生日の夜の部の舞踏会でブルーウッド公爵に視線を送ってる様子を見て密約に気付き、それを潰す為だそうです」

そう言われた時には王太子ハミルはポーカーフェイスも忘れて息を飲んでしまった。

舞踏会での私の視線だけでブルーウッド公爵からの伝言を見抜いた、というのか?

それでマリーハルケン公爵家が噂を流した?

何だ、それは。

気持ち悪過ぎではないか。

どれだけ私の事を見ているんだ?

もしやマリーハルケン公爵陣営に王太子の私が監視されている?

エルゼが私の動向を探らせているのか?

このフイトもエルゼの指示で私を監視しているのか?

王太子ハミルが「今回の噂の黒幕はエルゼーシア」と決め付けたところに、フイトミーが「とどめ」とばかりに、

「それで殿下、お尋ねするのですがブルーウッド公爵とは密約とかは交わされたのですか?」

探りを入れてきたので、

「交わす訳がないであろうが。そもそもどうして私がアンヌ嬢をブルーウッド公爵の養女にせねばならんのだ」

殆ど逆ギレ気味にハミルは答えてしまった。

そのリアクションでは「『密約はあった』と白状してしまっている」といったようなものなのに。

それでも「臣下の嗜み」としてフイトミーは気付かないふりをして、

「ですよね~」

そう答えるに留めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

公爵令嬢クラリスの矜持

福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。 だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。 嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

その掃除依頼、受けてやろう

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者パーティー「明るい未来」のリックとブラジス。この2人のコンビはアリオス王国の上層部では別の通り名で知られていた。通称「必要悪の掃除屋」。 王国に巣食った悪の組織を掃除(=始末)するからだが。 お陰で王国はその2人をかなり優遇していた。 但し、知られているのは王都での上層部だけでのこと。 2人が若い事もあり、その名は王都の上層部以外ではまだ知られていない。 なので、2人の事を知らない地方の悪の組織の下のその2人が派遣されたりすると・・・

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...