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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
38、見えない溝は深く広がる
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貴族学校の放課後の生徒会の業務中に乗り込んできた近衛騎士がキロスをアンゼル宮殿に連れていったのだ。
翌日に王太子ハミルがキロスに「何があったのか?」と質問するのは当然の事で、キロスも国王に口止めされていなかったのでその時の問答をあっさりと喋った。
口止めされていなくても王族が関わる事は口を重くするのが通例なのに。
下位貴族ならではの無自覚さである。
高位貴族ならば令息でも教育されているので渋るのだから。
まあ、そのキロスの口の軽さも王太子ハミルは「キロスの自分に対する忠誠心の現れ」と受け取ったのだが。
キロスの言葉を聞いたハミルの感想は「早過ぎる。どうして気付かれた? もしかして監視されている? だが、あの時、執務室にはキロス以外、誰も居なかった。眼の前のキロスが報告したのか? いや、伝言の意味も分かっていなかったし、口止めしたので喋ると思えん。考えられるのはアンゼル宮殿の廊下で伝言を言われたと言ったな。その様子を見られたのか?」だったのだが。
王太子ハミルの感想はそれだけだった。
貴族界で広がってる噂の事を知らなかったので。
よって、その時はそれで話は終わったのだが。
◇
王太子ハミルが「アンヌがブルーウッド公爵の養女となる」との噂を耳にしたのは国王誕生日の3日後である。
それも噂になっている張本人のアンヌの口から。
アンヌの両親、ラリー子爵夫妻は王都アンゼルでの貴族界の動向に敏感になっていて、噂が広まった当日にはその情報を掴んでいたが、娘のアンヌには「心配させまい」と伝えていなかった。
なので、その噂をアンヌが知ったのは王都アンゼルにお使いに出たメイドが噂を耳にしたからで、メイド経由でアンヌは自分のその噂を聞き、両親に問う前に「相談」という形で生徒会のメンバーに先に、
「あの、どういう訳か私がどこかの公爵家の養女になるという噂があるらしいですけど、根も葉もない噂って貴族では当たり前なんですか?」
と質問したものだから、王太子ハミルの耳に届いてしまったのだ。
その噂には王太子のハミルも驚きだ。
確かにプランとしては考えていたがそのプランをハミルはまだ誰にも口外していない。
知っているのは伝言を預かったキロスだけ。
いや、ブルーウッド公爵もいる。
もしやブルーウッド公爵にハメられたのか?
そう疑ったが、もうとっくにその噂は貴族界では有名だったので1年生の宰相の孫のジョンが訳知り顔で、
「その噂、マリーハルケン公爵陣営が広めてるらしいですよ」
「まさか、それはないだろ。する意味もないし」
そう否定したのは生徒会に居たマリーハリケン公爵家のフイトミーだった。
フイトミーは公爵家の令息だったが「噂を知らない側」だったのでそう答えた訳だが。
「御家族に質問してみれば分かるかと?」
「構わんよ。笑われると思うがな」
などと会話をして、
その日の内に、アンゼル宮殿に戻った王太子ハミルは、それとなく調べさせると、噂の出所を間違いなくマリーハルケン公爵家だった。
何せ、マリーハルケン公爵陣営はその事を隠していないのだから。
簡単に判明した。
その事実を追認するように、翌日にはフイトミーが、
「申し訳ない、アンヌ嬢。うちが『噂を流した』で間違いないらしい」
謝罪する場面を生徒会の執務室で王太子ハミルも目撃しており、アンヌが問う前にハミルが、
「どうして、マリーハルケン公爵家はそんな噂を流したのだ?」
「殿下が陛下の誕生日の夜の部の舞踏会でブルーウッド公爵に視線を送ってる様子を見て密約に気付き、それを潰す為だそうです」
そう言われた時には王太子ハミルはポーカーフェイスも忘れて息を飲んでしまった。
舞踏会での私の視線だけでブルーウッド公爵からの伝言を見抜いた、というのか?
それでマリーハルケン公爵家が噂を流した?
何だ、それは。
気持ち悪過ぎではないか。
どれだけ私の事を見ているんだ?
もしやマリーハルケン公爵陣営に王太子の私が監視されている?
エルゼが私の動向を探らせているのか?
このフイトもエルゼの指示で私を監視しているのか?
王太子ハミルが「今回の噂の黒幕はエルゼーシア」と決め付けたところに、フイトミーが「とどめ」とばかりに、
「それで殿下、お尋ねするのですがブルーウッド公爵とは密約とかは交わされたのですか?」
探りを入れてきたので、
「交わす訳がないであろうが。そもそもどうして私がアンヌ嬢をブルーウッド公爵の養女にせねばならんのだ」
殆ど逆ギレ気味にハミルは答えてしまった。
そのリアクションでは「『密約はあった』と白状してしまっている」といったようなものなのに。
それでも「臣下の嗜み」としてフイトミーは気付かないふりをして、
「ですよね~」
そう答えるに留めたのだった。
翌日に王太子ハミルがキロスに「何があったのか?」と質問するのは当然の事で、キロスも国王に口止めされていなかったのでその時の問答をあっさりと喋った。
口止めされていなくても王族が関わる事は口を重くするのが通例なのに。
下位貴族ならではの無自覚さである。
高位貴族ならば令息でも教育されているので渋るのだから。
まあ、そのキロスの口の軽さも王太子ハミルは「キロスの自分に対する忠誠心の現れ」と受け取ったのだが。
キロスの言葉を聞いたハミルの感想は「早過ぎる。どうして気付かれた? もしかして監視されている? だが、あの時、執務室にはキロス以外、誰も居なかった。眼の前のキロスが報告したのか? いや、伝言の意味も分かっていなかったし、口止めしたので喋ると思えん。考えられるのはアンゼル宮殿の廊下で伝言を言われたと言ったな。その様子を見られたのか?」だったのだが。
王太子ハミルの感想はそれだけだった。
貴族界で広がってる噂の事を知らなかったので。
よって、その時はそれで話は終わったのだが。
◇
王太子ハミルが「アンヌがブルーウッド公爵の養女となる」との噂を耳にしたのは国王誕生日の3日後である。
それも噂になっている張本人のアンヌの口から。
アンヌの両親、ラリー子爵夫妻は王都アンゼルでの貴族界の動向に敏感になっていて、噂が広まった当日にはその情報を掴んでいたが、娘のアンヌには「心配させまい」と伝えていなかった。
なので、その噂をアンヌが知ったのは王都アンゼルにお使いに出たメイドが噂を耳にしたからで、メイド経由でアンヌは自分のその噂を聞き、両親に問う前に「相談」という形で生徒会のメンバーに先に、
「あの、どういう訳か私がどこかの公爵家の養女になるという噂があるらしいですけど、根も葉もない噂って貴族では当たり前なんですか?」
と質問したものだから、王太子ハミルの耳に届いてしまったのだ。
その噂には王太子のハミルも驚きだ。
確かにプランとしては考えていたがそのプランをハミルはまだ誰にも口外していない。
知っているのは伝言を預かったキロスだけ。
いや、ブルーウッド公爵もいる。
もしやブルーウッド公爵にハメられたのか?
そう疑ったが、もうとっくにその噂は貴族界では有名だったので1年生の宰相の孫のジョンが訳知り顔で、
「その噂、マリーハルケン公爵陣営が広めてるらしいですよ」
「まさか、それはないだろ。する意味もないし」
そう否定したのは生徒会に居たマリーハリケン公爵家のフイトミーだった。
フイトミーは公爵家の令息だったが「噂を知らない側」だったのでそう答えた訳だが。
「御家族に質問してみれば分かるかと?」
「構わんよ。笑われると思うがな」
などと会話をして、
その日の内に、アンゼル宮殿に戻った王太子ハミルは、それとなく調べさせると、噂の出所を間違いなくマリーハルケン公爵家だった。
何せ、マリーハルケン公爵陣営はその事を隠していないのだから。
簡単に判明した。
その事実を追認するように、翌日にはフイトミーが、
「申し訳ない、アンヌ嬢。うちが『噂を流した』で間違いないらしい」
謝罪する場面を生徒会の執務室で王太子ハミルも目撃しており、アンヌが問う前にハミルが、
「どうして、マリーハルケン公爵家はそんな噂を流したのだ?」
「殿下が陛下の誕生日の夜の部の舞踏会でブルーウッド公爵に視線を送ってる様子を見て密約に気付き、それを潰す為だそうです」
そう言われた時には王太子ハミルはポーカーフェイスも忘れて息を飲んでしまった。
舞踏会での私の視線だけでブルーウッド公爵からの伝言を見抜いた、というのか?
それでマリーハルケン公爵家が噂を流した?
何だ、それは。
気持ち悪過ぎではないか。
どれだけ私の事を見ているんだ?
もしやマリーハルケン公爵陣営に王太子の私が監視されている?
エルゼが私の動向を探らせているのか?
このフイトもエルゼの指示で私を監視しているのか?
王太子ハミルが「今回の噂の黒幕はエルゼーシア」と決め付けたところに、フイトミーが「とどめ」とばかりに、
「それで殿下、お尋ねするのですがブルーウッド公爵とは密約とかは交わされたのですか?」
探りを入れてきたので、
「交わす訳がないであろうが。そもそもどうして私がアンヌ嬢をブルーウッド公爵の養女にせねばならんのだ」
殆ど逆ギレ気味にハミルは答えてしまった。
そのリアクションでは「『密約はあった』と白状してしまっている」といったようなものなのに。
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