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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
48、偽イーグルとご対面
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王太子ハミルの夏の視察のイクシー銀山への視察はスケジュール通りに行われた。
もうイクシー銀山の採掘現場の入口まで王太子ハミルは移動している。
王太子ハミルの移動に付き従うのは侍従や騎士達の一団が120人程だった。多いと思われるかもしれないが絶対王制のアンドレーヌ王国の王太子なのだ。警備が厳重なのは当然の事であった。
そして、視察先のイクシー銀山はナンシーサン侯爵領にある。ハミルがもし死ねば側已スミアンが産んだ第2王子コミルが国王になれる訳で「もしかしたら、もしかするかもしれない」。なので警備は普段よりも厳重だった。
その一団の中に「場違い」とばかりに紛れているのが、王太子ハミルの将来の側近候補である同世代の令息である。彼らも同行していた。
とは言っても、マリーハルケン公爵家のフイトミーは欠席である。
フイトミーは公爵家。爵位を継承するまでになれるとしても大臣だったので。
だが、他の3人は参加していた。
チャック・アリストンは武門の出なのでなれる最高位は騎士団長である。
ジョン・サンドスは騎士団長と宰相、どちらの進路に進んでも良いように訓練を受けている。
そしてキロス・ワイドム。男爵令息なので、さすがに宰相は無理でも、利権の少ない大臣にはこのまま側近になれれば就けそうだった。
その3人を含めた王太子ハミルの一団はイクシー銀山に来たのだが、さすがに入口までだ。
中には入らない。
ハミルは王太子なのだから。
万が一にも坑道に入って落盤事故でも起こったら洒落にならないので。
なので入口の前の警備を兼ねた銀鉱石を検査する建造物に入って休憩後に、検査する様子を眺めて視察は終わりとなる訳だが。
王太子ハミルのイクシー銀山の視察の真の目的は「自分が気軽にアンゼル宮殿の隠し通路を使った巻き添えで労役を喰らったイーグルを釈放する」事である。
「貴族がやると違法」だが、絶対王制の国家で王太子が法を曲げる分には「合法」だった。それが絶対王制だった。
だが御存知、イーグルはもうこの世に居ない。
このイクシー銀山に居るイーグルは偽物なのである。
なので、労役刑で働いていたイーグルが看守に連れられて部屋に入り、その姿を見た王太子ハミルのリアクションは、
「誰だ、貴様は? 私はイーグルを呼べと言ったのだが?」
別人が来て不機嫌な顔となったのだった。
対する看守の率直なリアクションは、
「はい? どういう意味でしょうか。この男が御所望のイーグルですが?」
と声ではそう言っているが、内心では、
(何言ってるんだ、この王太子は? この男がイーグルなのに。もしかして昼間っから酒でも飲んで酔っ払ってる?)
である。
兵士がそう思うのも仕方がない事だ。
何せ、王都アンゼルからやってきた時からイーグルはこの水色の髪の男だったのだから。
その両者のリアクションを見て、この部屋の双方の誤解の構図を完全に理解しているのは皮肉な事にイーグルを名乗っている偽物のボロッケンだけだった。
ボロッケンは10代後半でイーグルと同じ年齢である。その「年齢」こそが「水色の髪」 以外の偽イーグルに必要な条件だったのだから。
そしてボロッケンは王都アンゼルのケチなスリだった。
それも酒場の下働きをしていて、酔っ払い客を狙う。
だが、運悪くバカな酔っ払いから財布を盗んだら、そのバカな酔っ払いが騎士で、盗んだ財布の中に騎士団の機密が入っていた事から執拗に捜査されて結局は捕縛された。
その後は当然のように背後関係の確認である。「誰に頼まれて機密を狙った?」という訳だ。
そんな黒幕は存在しないのだから背後関係はない事が判明したが、機密文書を盗んだ為に労役20年を喰らいそうになったところを偽イーグルの仕事を持ち掛けられた、という事情である。
条件は労役の減刑。
20年が5年になるのだから、そりゃ、まあ、話に乗ったのだが。
そしたら想像以上に面倒な事になっていて、マヌケな奴がボロッケンがなりすましている偽イーグルに遭いにくる訳だ。それも看守を顎で使える権力者なのか、何度も坑道から外に出されて。
だが、こんな事をさせるのだから、騎士団の見張りがボロッケンが扮する偽イーグルにも張り付いている。なので外に出て、面談してるところを騎士団が踏み込んで逮捕。
もう2回もそんな事があり、3回目が眼の前の王子様という訳だった。
ケチなスリのボロッケンもさすがに自分の国の王太子の顔くらいは知っている。
絵姿や新聞のスケッチ画で描かれているのだから。
「おい、おまえは誰だ?」
不機嫌な顔の王太子ハミルから直答された。
「イーグルですが」
「嘘をつくな」
「・・・『そう言え』と騎士団のお偉いさんに言われています」
「何?」
そこで初めて王太子ハミルは不機嫌な怒り以外の表情を作った。
探るように、
「詳しく言え」
気軽に言ってくれるぜ。
ボロッケンは室内をチラリと見渡した。
王太子ハミルがイクシー銀山の罪人と面会するのだ。
この小さな部屋には完全武装した鎧姿の騎士10人以上が立ち合っている。
こんな大勢の前で事情を話すのは拙いだろ。
ボロッケンがそう妙な取引を持ち掛けていた騎士団のお偉いさんに配慮したのは当然、 自分の減刑が懸っているからである。
「よくもペラペラと喋ったな、減刑の取引はなしだ」と一方的に宣言されたらたまったものではない。5年と20年の労役は違い過ぎるのだから。
「人が多過ぎます。誰かに話すのでそれをお聞き下さい」
という訳で、護衛の騎士の1人が渋々とボロッケンの前にきて、ボロッケンはその護衛の騎士にまずは事情を説明し、その事情を聞いた騎士が驚きつつも、王太子ハミルに伝言ゲームのように伝えた。
その伝言で「王都アンゼルを出発した時には既にイーグルが入れ替わっている」事を知った王太子ハミルは偽イーグルを見ながら、
「本物がどこに居るか知らないか?」
「見当も付きません。会った事がないので」
偽イーグルの言葉を聞いて、王太子ハミルが思った事は、
(はは~ん。さては宰相め。自分の孫可愛さに小細工を弄してすり替えたな)
これである。
完全な勘違いであったが。
何せ、もうとっくにイーグルはチョメされているので。それも国王カミルの「こいつはアンゼル宮殿の隠し通路の事を喋るな」との独断だけで。
しかし、それでも裏の事情を知った気になった王太子ハミルは「何だ、無事だったのか、 イーグルは。わざわざ私が視察に来なくても良かった訳か」そう思いつつも、幼少期からの知人の「イーグルが無事だ」と勘違いして見るからに機嫌が良くなったのだった。
「事情は分かった。下がってよいぞ」
そして王太子ハミルの今にも鼻歌を歌いだしそうな機嫌の良さで命令し、偽イーグルのボロッケンと兵士を部屋から下がらせたのだった。
もうイクシー銀山の採掘現場の入口まで王太子ハミルは移動している。
王太子ハミルの移動に付き従うのは侍従や騎士達の一団が120人程だった。多いと思われるかもしれないが絶対王制のアンドレーヌ王国の王太子なのだ。警備が厳重なのは当然の事であった。
そして、視察先のイクシー銀山はナンシーサン侯爵領にある。ハミルがもし死ねば側已スミアンが産んだ第2王子コミルが国王になれる訳で「もしかしたら、もしかするかもしれない」。なので警備は普段よりも厳重だった。
その一団の中に「場違い」とばかりに紛れているのが、王太子ハミルの将来の側近候補である同世代の令息である。彼らも同行していた。
とは言っても、マリーハルケン公爵家のフイトミーは欠席である。
フイトミーは公爵家。爵位を継承するまでになれるとしても大臣だったので。
だが、他の3人は参加していた。
チャック・アリストンは武門の出なのでなれる最高位は騎士団長である。
ジョン・サンドスは騎士団長と宰相、どちらの進路に進んでも良いように訓練を受けている。
そしてキロス・ワイドム。男爵令息なので、さすがに宰相は無理でも、利権の少ない大臣にはこのまま側近になれれば就けそうだった。
その3人を含めた王太子ハミルの一団はイクシー銀山に来たのだが、さすがに入口までだ。
中には入らない。
ハミルは王太子なのだから。
万が一にも坑道に入って落盤事故でも起こったら洒落にならないので。
なので入口の前の警備を兼ねた銀鉱石を検査する建造物に入って休憩後に、検査する様子を眺めて視察は終わりとなる訳だが。
王太子ハミルのイクシー銀山の視察の真の目的は「自分が気軽にアンゼル宮殿の隠し通路を使った巻き添えで労役を喰らったイーグルを釈放する」事である。
「貴族がやると違法」だが、絶対王制の国家で王太子が法を曲げる分には「合法」だった。それが絶対王制だった。
だが御存知、イーグルはもうこの世に居ない。
このイクシー銀山に居るイーグルは偽物なのである。
なので、労役刑で働いていたイーグルが看守に連れられて部屋に入り、その姿を見た王太子ハミルのリアクションは、
「誰だ、貴様は? 私はイーグルを呼べと言ったのだが?」
別人が来て不機嫌な顔となったのだった。
対する看守の率直なリアクションは、
「はい? どういう意味でしょうか。この男が御所望のイーグルですが?」
と声ではそう言っているが、内心では、
(何言ってるんだ、この王太子は? この男がイーグルなのに。もしかして昼間っから酒でも飲んで酔っ払ってる?)
である。
兵士がそう思うのも仕方がない事だ。
何せ、王都アンゼルからやってきた時からイーグルはこの水色の髪の男だったのだから。
その両者のリアクションを見て、この部屋の双方の誤解の構図を完全に理解しているのは皮肉な事にイーグルを名乗っている偽物のボロッケンだけだった。
ボロッケンは10代後半でイーグルと同じ年齢である。その「年齢」こそが「水色の髪」 以外の偽イーグルに必要な条件だったのだから。
そしてボロッケンは王都アンゼルのケチなスリだった。
それも酒場の下働きをしていて、酔っ払い客を狙う。
だが、運悪くバカな酔っ払いから財布を盗んだら、そのバカな酔っ払いが騎士で、盗んだ財布の中に騎士団の機密が入っていた事から執拗に捜査されて結局は捕縛された。
その後は当然のように背後関係の確認である。「誰に頼まれて機密を狙った?」という訳だ。
そんな黒幕は存在しないのだから背後関係はない事が判明したが、機密文書を盗んだ為に労役20年を喰らいそうになったところを偽イーグルの仕事を持ち掛けられた、という事情である。
条件は労役の減刑。
20年が5年になるのだから、そりゃ、まあ、話に乗ったのだが。
そしたら想像以上に面倒な事になっていて、マヌケな奴がボロッケンがなりすましている偽イーグルに遭いにくる訳だ。それも看守を顎で使える権力者なのか、何度も坑道から外に出されて。
だが、こんな事をさせるのだから、騎士団の見張りがボロッケンが扮する偽イーグルにも張り付いている。なので外に出て、面談してるところを騎士団が踏み込んで逮捕。
もう2回もそんな事があり、3回目が眼の前の王子様という訳だった。
ケチなスリのボロッケンもさすがに自分の国の王太子の顔くらいは知っている。
絵姿や新聞のスケッチ画で描かれているのだから。
「おい、おまえは誰だ?」
不機嫌な顔の王太子ハミルから直答された。
「イーグルですが」
「嘘をつくな」
「・・・『そう言え』と騎士団のお偉いさんに言われています」
「何?」
そこで初めて王太子ハミルは不機嫌な怒り以外の表情を作った。
探るように、
「詳しく言え」
気軽に言ってくれるぜ。
ボロッケンは室内をチラリと見渡した。
王太子ハミルがイクシー銀山の罪人と面会するのだ。
この小さな部屋には完全武装した鎧姿の騎士10人以上が立ち合っている。
こんな大勢の前で事情を話すのは拙いだろ。
ボロッケンがそう妙な取引を持ち掛けていた騎士団のお偉いさんに配慮したのは当然、 自分の減刑が懸っているからである。
「よくもペラペラと喋ったな、減刑の取引はなしだ」と一方的に宣言されたらたまったものではない。5年と20年の労役は違い過ぎるのだから。
「人が多過ぎます。誰かに話すのでそれをお聞き下さい」
という訳で、護衛の騎士の1人が渋々とボロッケンの前にきて、ボロッケンはその護衛の騎士にまずは事情を説明し、その事情を聞いた騎士が驚きつつも、王太子ハミルに伝言ゲームのように伝えた。
その伝言で「王都アンゼルを出発した時には既にイーグルが入れ替わっている」事を知った王太子ハミルは偽イーグルを見ながら、
「本物がどこに居るか知らないか?」
「見当も付きません。会った事がないので」
偽イーグルの言葉を聞いて、王太子ハミルが思った事は、
(はは~ん。さては宰相め。自分の孫可愛さに小細工を弄してすり替えたな)
これである。
完全な勘違いであったが。
何せ、もうとっくにイーグルはチョメされているので。それも国王カミルの「こいつはアンゼル宮殿の隠し通路の事を喋るな」との独断だけで。
しかし、それでも裏の事情を知った気になった王太子ハミルは「何だ、無事だったのか、 イーグルは。わざわざ私が視察に来なくても良かった訳か」そう思いつつも、幼少期からの知人の「イーグルが無事だ」と勘違いして見るからに機嫌が良くなったのだった。
「事情は分かった。下がってよいぞ」
そして王太子ハミルの今にも鼻歌を歌いだしそうな機嫌の良さで命令し、偽イーグルのボロッケンと兵士を部屋から下がらせたのだった。
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