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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
47、王太子ハミルの夏の視察スケジュールは王都近郊のアンドレーヌ王国最大の銀山
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夏休み。
貴族学校が無くても王太子ハミルは予定が一杯だ。
王太子とは次期国王と同意語なので、国王を継ぐべく準備段階に入っており、執務をやらされ始めている訳だが。
貴族学校、それにエルゼーシアがカードレートの街に向かっているお陰で交流日がない分、普段よりもスケジュールがスカスカだった。
視察も入っている。
イクシー銀山だ。
イクシー銀山はアンドレーヌ王国最大の銀山。
アンドレーヌ王国の主産業の1つと言ってもいい。
その上、王都アンゼル近郊。
どのくらい近郊かと言えば、馬車で3日の距離である。
王族が視察に行くのは、過去の通例から鑑みても何の問題もないのだが。
今回に限って言えば、王太子ハミルの目的は明白だった。
獄中で病死した会頭コンドルの息子で、自分の失敗の巻き添えを喰らった側近、元貴族学校2年生イーグルの解放。
それをする為だ、とその視察目的が透けて見えたのだから。
王太子の外出だ。
気まぐれにその日に外出を決めて、アンゼル宮殿、いや王都アンゼルの外になど警備の関係上、出来ない。
スケジュールは1月も前から組まれていた。
よって王太子の行動は国王カミルにも筒抜けな訳で、
アンゼル宮殿の私室で国王カミルが王妃ミラリー、それに宰相ブラックスに、
「2人はどう思う? 王太子の権限で解放すると思うか、労役刑のサバルス商会の会頭の息子を」
「解放するように取り図るでしょうね、ハミルなら」
それが王妃ミラリーの意見である。
「恨みを買っているのに、ですか?」
宰相ブラックスは懐疑的だったが、
「それが分からんのさ、あやつには。どこか抜けておるのでな」
どこか抜けている。
それが国王カミルの王太子ハミルに対する評価だ。
それ以外の能力は次期国王として合格点なので、エンゼーシアが王妃として補佐すれば何ら問題はないのだが。
最近はどうもハミルがエルゼーシア嬢に向ける嘘臭い笑顔が気になる。
それは王妃ミラリーも同感のようで、
「ハミルの視察よりもあの子爵令嬢、今はちゃんと領地に戻ってるんですよね?」
「ああ、監視が付けてるからな。どうしてだ?」
「2人が会う方が気になるので。視察中に合流とかはありませんよね?」
「そのはずだが、宰相はどう思う?」
「殿下がスケジュールを逸脱しない限りは問題はないかと」
宰相ブラックスが記憶を辿るように言葉を紡いだ。
「どういう意味だ?」
「陛下が王太子時代にも『あった』と記憶しておりますので。確かイクシー銀山の視察の後に予定を変更して、足を伸ばしてチョーリン河の川魚捕り祭に出向いたと」
「川魚捕り祭り? 何ですか、それは?」
他国出身で初耳の王妃ミラリーが問うと、ブラックスがかなりの偏見で、
「若い娘御達が川に潜って川魚を銛で捕る祭りでしてな。岸辺に上がると張り付いた薄手の服が大層扇情的な事になって見物している男どもが鼻の下を伸ばす事で有名な祭りでございます」
「まあ、陛下もそんなのに興味がおありでしたんですね」
そう王妃ミラリーが扇で口元を隠す中、好感度が下がっているのを実感した国王カミルが、
「待てい、あれはただの市井の祭り見物であって、そもそも男どももちゃんと魚を取っておったではないか。確かに女の方は見世物となっていたようだが」
そう言い訳しながら、形勢不利の話題から逃れようと、
「・・・その祭りに子爵令嬢が出るというのか?」
「違いますよ。チョーリン河の川船の材料の木材を卸してる1つが、確か近隣のラリー子爵の領地だったと記憶しておりましたので。祭りの来賓としてラリー子爵も招かれてるかと。ラリー子爵も材木購入の得意先の招待を無碍にはしないでしょうから」
「令嬢も出向くという事か?」
「婚約者を探してるらしいので、もしかしたら顔見せ程度には」
「・・・ふむ」
もしかして拙いか?
「この際、その子爵令嬢に婚約者を見繕っては?」
王妃ミラリーはそう提案したが、
「よしてくれ、王妃よ。王家が下位貴族の子爵家に結婚相手を斡旋するなど聞いた事もないわ」
「確かにありませんな。同じ理由でサランド公爵もありませんな。高位貴族が王家直轄の下位子爵に世話をするのも」
そうなのだ。
王家直轄の下位貴族。
これは意外に面倒な立場だった。
王家直轄だが、下位貴族に王家が婚約者を世話したら、それが通例になって他も世話しなければならなくなる。というか、そもそも話として、婚約者を世話して不幸な結婚になったら「王家が恨みを買う」という馬鹿らしい事態になる。なので「滅多に仲人はしない」というのがアンドレーヌ王国の王家のスタンスだった。
かと言って他の高位貴族も無理なのだ。
王家直轄の下位貴族にちょっかいを掛ける事になるのだから。
「王家直轄の下位貴族を分捕ろう」と企んだとみられる。
「では中堅どころや下位の貴族が斡旋すれば万事解決なのでは」と思うところだが。
今のアンヌ・ラリー子爵令嬢は「側妃候補」。
中堅どころや下位の貴族の中に「王太子の恋路を邪魔してまでラリー子爵と縁を結びたい」という貴族はいない。
そもそも旨味がないのだ。
ラリー子爵家と縁を結んでも。
収支は黒字だが、別に羽振りが良い訳でもない。
アンドレーヌ王国の上級の役職にも就いていない。
本当に旨味がなく、誰も無理して婚約しようなどとは思わない。
木端の王家直轄の下位貴族という立場は本当に面倒だった。
「まあ、ラリー子爵は忠誠に篤いから大丈夫であろう」
呑気に国王カミルは言った訳だが。
貴族学校が無くても王太子ハミルは予定が一杯だ。
王太子とは次期国王と同意語なので、国王を継ぐべく準備段階に入っており、執務をやらされ始めている訳だが。
貴族学校、それにエルゼーシアがカードレートの街に向かっているお陰で交流日がない分、普段よりもスケジュールがスカスカだった。
視察も入っている。
イクシー銀山だ。
イクシー銀山はアンドレーヌ王国最大の銀山。
アンドレーヌ王国の主産業の1つと言ってもいい。
その上、王都アンゼル近郊。
どのくらい近郊かと言えば、馬車で3日の距離である。
王族が視察に行くのは、過去の通例から鑑みても何の問題もないのだが。
今回に限って言えば、王太子ハミルの目的は明白だった。
獄中で病死した会頭コンドルの息子で、自分の失敗の巻き添えを喰らった側近、元貴族学校2年生イーグルの解放。
それをする為だ、とその視察目的が透けて見えたのだから。
王太子の外出だ。
気まぐれにその日に外出を決めて、アンゼル宮殿、いや王都アンゼルの外になど警備の関係上、出来ない。
スケジュールは1月も前から組まれていた。
よって王太子の行動は国王カミルにも筒抜けな訳で、
アンゼル宮殿の私室で国王カミルが王妃ミラリー、それに宰相ブラックスに、
「2人はどう思う? 王太子の権限で解放すると思うか、労役刑のサバルス商会の会頭の息子を」
「解放するように取り図るでしょうね、ハミルなら」
それが王妃ミラリーの意見である。
「恨みを買っているのに、ですか?」
宰相ブラックスは懐疑的だったが、
「それが分からんのさ、あやつには。どこか抜けておるのでな」
どこか抜けている。
それが国王カミルの王太子ハミルに対する評価だ。
それ以外の能力は次期国王として合格点なので、エンゼーシアが王妃として補佐すれば何ら問題はないのだが。
最近はどうもハミルがエルゼーシア嬢に向ける嘘臭い笑顔が気になる。
それは王妃ミラリーも同感のようで、
「ハミルの視察よりもあの子爵令嬢、今はちゃんと領地に戻ってるんですよね?」
「ああ、監視が付けてるからな。どうしてだ?」
「2人が会う方が気になるので。視察中に合流とかはありませんよね?」
「そのはずだが、宰相はどう思う?」
「殿下がスケジュールを逸脱しない限りは問題はないかと」
宰相ブラックスが記憶を辿るように言葉を紡いだ。
「どういう意味だ?」
「陛下が王太子時代にも『あった』と記憶しておりますので。確かイクシー銀山の視察の後に予定を変更して、足を伸ばしてチョーリン河の川魚捕り祭に出向いたと」
「川魚捕り祭り? 何ですか、それは?」
他国出身で初耳の王妃ミラリーが問うと、ブラックスがかなりの偏見で、
「若い娘御達が川に潜って川魚を銛で捕る祭りでしてな。岸辺に上がると張り付いた薄手の服が大層扇情的な事になって見物している男どもが鼻の下を伸ばす事で有名な祭りでございます」
「まあ、陛下もそんなのに興味がおありでしたんですね」
そう王妃ミラリーが扇で口元を隠す中、好感度が下がっているのを実感した国王カミルが、
「待てい、あれはただの市井の祭り見物であって、そもそも男どももちゃんと魚を取っておったではないか。確かに女の方は見世物となっていたようだが」
そう言い訳しながら、形勢不利の話題から逃れようと、
「・・・その祭りに子爵令嬢が出るというのか?」
「違いますよ。チョーリン河の川船の材料の木材を卸してる1つが、確か近隣のラリー子爵の領地だったと記憶しておりましたので。祭りの来賓としてラリー子爵も招かれてるかと。ラリー子爵も材木購入の得意先の招待を無碍にはしないでしょうから」
「令嬢も出向くという事か?」
「婚約者を探してるらしいので、もしかしたら顔見せ程度には」
「・・・ふむ」
もしかして拙いか?
「この際、その子爵令嬢に婚約者を見繕っては?」
王妃ミラリーはそう提案したが、
「よしてくれ、王妃よ。王家が下位貴族の子爵家に結婚相手を斡旋するなど聞いた事もないわ」
「確かにありませんな。同じ理由でサランド公爵もありませんな。高位貴族が王家直轄の下位子爵に世話をするのも」
そうなのだ。
王家直轄の下位貴族。
これは意外に面倒な立場だった。
王家直轄だが、下位貴族に王家が婚約者を世話したら、それが通例になって他も世話しなければならなくなる。というか、そもそも話として、婚約者を世話して不幸な結婚になったら「王家が恨みを買う」という馬鹿らしい事態になる。なので「滅多に仲人はしない」というのがアンドレーヌ王国の王家のスタンスだった。
かと言って他の高位貴族も無理なのだ。
王家直轄の下位貴族にちょっかいを掛ける事になるのだから。
「王家直轄の下位貴族を分捕ろう」と企んだとみられる。
「では中堅どころや下位の貴族が斡旋すれば万事解決なのでは」と思うところだが。
今のアンヌ・ラリー子爵令嬢は「側妃候補」。
中堅どころや下位の貴族の中に「王太子の恋路を邪魔してまでラリー子爵と縁を結びたい」という貴族はいない。
そもそも旨味がないのだ。
ラリー子爵家と縁を結んでも。
収支は黒字だが、別に羽振りが良い訳でもない。
アンドレーヌ王国の上級の役職にも就いていない。
本当に旨味がなく、誰も無理して婚約しようなどとは思わない。
木端の王家直轄の下位貴族という立場は本当に面倒だった。
「まあ、ラリー子爵は忠誠に篤いから大丈夫であろう」
呑気に国王カミルは言った訳だが。
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