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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜
46、夏休み、アンヌは領地のラスクル領へ
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アンヌは夏休み、ラリー子爵夫妻の強い勧めで領地のラスクル領へと戻っていた。
アンヌ自身は勉強したいので王都アンゼルにいたかったのだが。
何せ、貴族学校の図書館には文官試験に必要な専門書がズラリなので。
実家にも確かに書庫はあったが、ラリー子爵家は弱小子爵の書庫だ。
蔵書の数が違う。
なのでアンヌは当初「勉強の為に帰省は断ろうとした」のだが、両親のラリー子爵夫妻からすれば王都アンゼルに娘が残って王太子と何かあったら眼も当てられない。
そうでなくても最近では「側妃になる為にブルーウッド公爵の養女になる」との根も葉もない噂を流されているというのに。
そんな訳で「文官になったら休みもなくて気軽に帰ってこれないから学生の内に帰って来なさい」とどうにか説得して娘を守る為にもラスクル領に連れて来ていた。
ラスクル領の主産業は材木である。
林の木々を伐採して、新たに植林もする。
間伐なども行う。
樹木のサイクルは40年なので、林業では長期の計画が必要である。
ラリー家も先祖からの方針を継承して林業を行っていた。
材木は船を作るのに必要で、良い材木は高値で取引される。
王都アンゼルよりも北側だが、大河界隈の舟大工に材木を卸す業者が買い付けに来ていた。
正直「儲かっている」というのが感想だ。
他にも木工芸品が盛んで家具などに加工して販売している。
こっちはカラッキシだが技術の継承はされていた。
ラスクル領には畑は少ないが、領民を賄うだけの小麦は領地で取れる。
養蜂や蜂蜜酒を作ってるが、それだけだ。
何もない田舎。
それがアンヌのラスクル領の印象だった。
王都アンゼルから北西に馬車で4日掛けてアンヌはラスクル領に辿り付いていた。
北西に向かったが西国境のタル草原からはまだ遠い。
モスール辺境伯が奮戦しているので、この辺は騎馬民族タルの脅威とは無縁だった。
のどかなものだ。
アンヌを害そうと動く貴族やその手下も居ない。
やはり王家主導の毒の木の実騒動が効いているらしい。
誰も関わろうとしないのだから。
お陰で婚約者探しも難航しているが、道中は何のトラブルも起きなかった。
アンヌの安全は保障されている。
アンヌはもちろん、ハミルやエルゼーシアも知らない事だが、アンヌにはアンドレーヌ王国の密偵部隊がそれとなく付いていたのでトラブルがなかった事は王家も知っているくらいだ。
そうなのだ、監視はアンヌの帰省にも付いてきていた。
そして、ここがポイントなのだが、監視要員は別にアンヌの護衛任務は受けていない。
そこが王家の王家たる所以なのだが。
監視任務の為だけにアンヌの帰省に付いてきていた。
王太子ハミルが眼を掛けているアンヌに、高位貴族はもちろん、他国の勢力までが絡んできていたら大変な事になり得るので。
まあ、そんな心配はなかったのだが。
何せ、高位貴族は王家主導の毒の混入事件で及び腰だし、他国の勢力と言っても西はタル草原で南はカフス海、北はパルプス山脈、東の同盟国のサラット王国としか隣接していないのだから。
「お帰りなさい、お姉様」
使用人4人を始め、弟のアントニーが出迎えてくれた。
赤毛でなくて父親似の茶髪だ。
「ただいま、アントニー。お父様とお母様は?」
「お父様は橋を見に行ったよ。お母様はクッキーを焼いている」
「そう。それじゃあ、勉強を教えてあげるわね」
勉強が取り柄のアンヌはそう弟に笑い掛けたのだった。
アンヌ自身は勉強したいので王都アンゼルにいたかったのだが。
何せ、貴族学校の図書館には文官試験に必要な専門書がズラリなので。
実家にも確かに書庫はあったが、ラリー子爵家は弱小子爵の書庫だ。
蔵書の数が違う。
なのでアンヌは当初「勉強の為に帰省は断ろうとした」のだが、両親のラリー子爵夫妻からすれば王都アンゼルに娘が残って王太子と何かあったら眼も当てられない。
そうでなくても最近では「側妃になる為にブルーウッド公爵の養女になる」との根も葉もない噂を流されているというのに。
そんな訳で「文官になったら休みもなくて気軽に帰ってこれないから学生の内に帰って来なさい」とどうにか説得して娘を守る為にもラスクル領に連れて来ていた。
ラスクル領の主産業は材木である。
林の木々を伐採して、新たに植林もする。
間伐なども行う。
樹木のサイクルは40年なので、林業では長期の計画が必要である。
ラリー家も先祖からの方針を継承して林業を行っていた。
材木は船を作るのに必要で、良い材木は高値で取引される。
王都アンゼルよりも北側だが、大河界隈の舟大工に材木を卸す業者が買い付けに来ていた。
正直「儲かっている」というのが感想だ。
他にも木工芸品が盛んで家具などに加工して販売している。
こっちはカラッキシだが技術の継承はされていた。
ラスクル領には畑は少ないが、領民を賄うだけの小麦は領地で取れる。
養蜂や蜂蜜酒を作ってるが、それだけだ。
何もない田舎。
それがアンヌのラスクル領の印象だった。
王都アンゼルから北西に馬車で4日掛けてアンヌはラスクル領に辿り付いていた。
北西に向かったが西国境のタル草原からはまだ遠い。
モスール辺境伯が奮戦しているので、この辺は騎馬民族タルの脅威とは無縁だった。
のどかなものだ。
アンヌを害そうと動く貴族やその手下も居ない。
やはり王家主導の毒の木の実騒動が効いているらしい。
誰も関わろうとしないのだから。
お陰で婚約者探しも難航しているが、道中は何のトラブルも起きなかった。
アンヌの安全は保障されている。
アンヌはもちろん、ハミルやエルゼーシアも知らない事だが、アンヌにはアンドレーヌ王国の密偵部隊がそれとなく付いていたのでトラブルがなかった事は王家も知っているくらいだ。
そうなのだ、監視はアンヌの帰省にも付いてきていた。
そして、ここがポイントなのだが、監視要員は別にアンヌの護衛任務は受けていない。
そこが王家の王家たる所以なのだが。
監視任務の為だけにアンヌの帰省に付いてきていた。
王太子ハミルが眼を掛けているアンヌに、高位貴族はもちろん、他国の勢力までが絡んできていたら大変な事になり得るので。
まあ、そんな心配はなかったのだが。
何せ、高位貴族は王家主導の毒の混入事件で及び腰だし、他国の勢力と言っても西はタル草原で南はカフス海、北はパルプス山脈、東の同盟国のサラット王国としか隣接していないのだから。
「お帰りなさい、お姉様」
使用人4人を始め、弟のアントニーが出迎えてくれた。
赤毛でなくて父親似の茶髪だ。
「ただいま、アントニー。お父様とお母様は?」
「お父様は橋を見に行ったよ。お母様はクッキーを焼いている」
「そう。それじゃあ、勉強を教えてあげるわね」
勉強が取り柄のアンヌはそう弟に笑い掛けたのだった。
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