マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

文字の大きさ
47 / 50
卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

45、夏の段階で動いてる者は既に動いてる

しおりを挟む
カードレート港を拠点として活動するアンドレーヌ王国の海軍は二種類である。

アンドレーヌ王国の正規の海軍。

マリーハルケン公爵家が抱える私兵武装船団。通称「公爵海軍」。

どちらが強いのか?

そんなのはマリーハルケン公爵が抱える公爵海軍に決まっている。

何せ、上官が血筋で決まる正規の海軍の場合、無能なハズレの貴族子弟が船長になったりなんかしたら本当に機能しなくなるので。

対する公爵海軍は完全な実力主義。平民でも船長になれる。マリーハルケン公爵家の私兵なので、給料もマリーハルケン公爵家から出る。海軍の重要性を理解している前公爵のエドモンドを始め、それ以前の公爵達も金を惜しまずに優秀な人間を育てたので、それはもう強かった。

カフス海で海軍を抱える沿岸諸国や海賊行為を働く海の男達からも一目置かれるくらいに。





 ◇





カードレート城の執務室に通されたエルゼーシアは二人っきりになると同時に祖父のエドモンドに相談された。

「エルゼや。実は今少し困っておってな。知恵を貸してくれんか」

「どのようなです?」

「過去に海賊を罠に嵌めた事があってな。そのせいで海賊の手下が欲しいのだが誰もが罠だと疑い、ワシの配下になってくれん。どうすればいいと思う?」

「公爵海軍を海賊に偽装させればいいのでは?」

そう気軽にエルゼーシアは答えたが、エドモンドは真剣な顔で、

「それが出来んから困っておるのだ」

「どうして出来ないのです?」

「アンドレーヌ王国の同盟国のサラット王国の港で略奪をする海賊だからだ。バレたら拙いし」

気軽に口走ってるが、内容はかなり「邪悪」である。エルゼーシアはピクリと反応しながら祖父を見て、

「・・・何をやられるので?」

「貴族学校の卒業式でエルゼが市井で流行している恋愛小説のように王太子に婚約破棄されたとしよう。その後、ワシが迅速に動いてアンドレーヌ王国を掌握しても、王妃を出したサラット王国が黙ってはおるまい。そもそも国王夫妻もサラット王国に外交交渉に出て居て無傷だからのう。アンドレーヌル王国を奪還する為に同盟国として兵を出すに決まっている。さて、サラット王国がその兵を出す時期はいつだと思う?」

「夏ですね。タル草原の騎馬民族と連動するはずです」

「使者を送って騎馬民族タルと同盟を結ぶのか?」

「そんな事をせずとも夏になればタル草原から勝手に進軍するので、その動きに合わせればよろしいかと」

「ふむ。それが順当だのう。それで西の兵は動かせなくなるのだから。国王が存命であれば、国王の帰還を合図に大人しくこちらに従っていた貴族どもが一斉に蜂起し、ワシらは負ける訳だ。なので、サラット王国がアンドレーヌ王国に進軍出来ぬように海賊を使って足止めしたい訳なんじゃが・・・その海賊が雇えん。自前の公爵海軍では露骨だしのう」

そう頭を悩ませるエドモンドに対して扇を口元に当てたエルゼーシアが、

「・・・お祖父様、もしかして耄碌されました?」

「どういう意味じゃ?」

「どうして海賊を雇うという発想になるんです? 他国を使えばよろしいではありませんか。確かサラット王国がアンドレーヌ王国に王妃を出した背景には東の国との険悪化で挟撃を恐れたからだと記憶しておりますが」

「カーダル辺境伯の居るモーテルゼ公国か。しかし、この20年で情勢が変わってな。現在のモーテルゼ公国にサラット王国を攻める軍事力はもう・・・おお、そうか。攻めずとも海賊行為をさせるだけなら・・・ふむ、カーダル辺境伯を使ってモーテルゼ公国を動かせば、モーテルゼ公国が動かずとも軍部の一部を暴発させれば、偽装海賊が簡単に・・・」

否定的な言葉を吐こうとしたエドモンドは1人で勝手に結論に達して盛りあがった。

「もうよろしいですか、お祖父様」

「うむ、知恵を借りてすまなんだな、さすがはエルゼだ」

「そうだわ。王妃陛下のプレゼントもお願いしますね」

「ニハイス産の白真珠の中玉のロングネックレスな、分かっておる」

エドモンドはそう請け負ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

その掃除依頼、受けてやろう

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者パーティー「明るい未来」のリックとブラジス。この2人のコンビはアリオス王国の上層部では別の通り名で知られていた。通称「必要悪の掃除屋」。 王国に巣食った悪の組織を掃除(=始末)するからだが。 お陰で王国はその2人をかなり優遇していた。 但し、知られているのは王都での上層部だけでのこと。 2人が若い事もあり、その名は王都の上層部以外ではまだ知られていない。 なので、2人の事を知らない地方の悪の組織の下のその2人が派遣されたりすると・・・

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

公爵令嬢クラリスの矜持

福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。 だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。 嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」 婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。 ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。 表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723) 【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19 【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+ 2021/12  異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過 2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過

処理中です...