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聖剣士強襲編
斬られ役、跳び退く
しおりを挟む14-①
“ゴンッッッ!!”
「ぐぁぁぁーーーーーっ!?」
「痛ぁぁぁぁぁーーーっ!?」
ミトが勢いよく飛び起きたその瞬間、ミトの顔を覗き込んでいた武光は頭突きを喰らわされた形となり、両者は額を抑えて悶絶した。
ミトは痛みを紛らわすように首を左右に振ると、武光を “キッ” と睨んだ。
「痛たた……ちょっと!! 何するのよ……って、たたたた武光ーーーーーっ!?」
「……よう」
「どどどうして貴方がここにいるのよ!?」
「どうしてって……お前らを助けに来たんやんか……痛っ」
アスタトの巫女だけが持つ、ありとあらゆる怪我や病気を治す事の出来る力……《癒しの力》による治療を終えたナジミは、ミトに声をかけた。
「姫様、お身体は大丈夫ですか!?」
「その声……もしかしてナジミさん!?」
「はい!! お久しぶりです!!」
「貴女が助けてくれたのね……でも、どうしてそんなおかしな狐の仮面を着けているの?」
ミトの問いに対し、ナジミは俯きながら小さく呟いた。
「……ネコなのに……ネコなのにっ!!」
「痛っ!? だから何で俺に肩パンすんねん!?」
「ま……とにかく、助けに来てくれてありが──」
そこまで言いかけて……ミトは思い出した!!
「ね、ねぇ……私、変な事口走ったりしてないわよね……?」
ミトは傍に置いてあった愛刀、《宝剣カヤ・ビラキ》に話しかけた。
カヤ・ビラキは、武光の超聖剣イットー・リョーダンや魔穿鉄剣と同じく、意思を持つ剣で、現国王、ジョージ=アナザワルド3世が剣術を好むミトの為に作らせた剣である。
刀身を始めとする各部には、超希少金属が惜しげも無く使われ、鍔や柄や鞘には様々な宝石が散りばめられた、『宝剣』の名に恥じぬ豪華絢爛で煌びやかなる細身の直剣である。
ちなみに、カヤ・ビラキはイットー・リョーダンの妻である。
カヤは主からの問いに対し、落ち着きのある声で諭すように答えた。
〔姫様……世の中にはお知りになられない方が幸せな事ってあると思うんですよね〕
「どういう事よ!? 私、何も言ってないわよね!? ねえってば!!」
ミトは、護衛の少女達に視線を向けたが、どういう訳か、三人共目を合わせてくれない。
「いや……その……」
「何と言いますか……」
「え、えーっと……」
「いや、何で三人とも目を合わせないのよ!? ま、まさか……」
ミトは恐る恐る武光とナジミに視線を向けた。
「て、照れるぜ……」
「いくら姫様でもダメです!! あげませんよ!?」
「ヘギャーーーーー!?」
ミトは、王家の姫君にあるまじき叫びを上げた。
「い、いや違うのよ!? そそそ、そういう意味じゃなくて!! えーっと、そう……犬!! 犬の事だから!! お、おいでたけみつ!!」
「ひゃん!?」
突然抱き上げられて、物凄い勢いで頭をワシャワシャされ、仔犬のたけみつも困惑気味である。
「おぉー、よしよし!! 貴方は本当に可愛いわねー!?」
「へー、犬ですかぁ……」
「犬の事でありましたか……」
「い、犬なんですね……」
“ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ……”
「ぜっ……全員出てけーーーーーっ!!」
武光達は 逃げ出した!
……十分後、武光一行と少女達は洞穴の前まで戻ってきた。
洞穴の前で全員正座、たけみつもお座りである。
そして、『洞穴の中で怒りまくっているであろうミトを誰が呼ぶのか?』という事になって、不運にもジャンケンに負けたフリードは、洞穴の奥にいるミトに、おっかなびっくり呼びかけた。
「ひっ……姫様ーーーっ!! ミト姫様ーーーーーっ!!」
「………………反応無いなぁ」
「………………ありませんね」
「くぅーん……」
顔を見合わせる武光達だったが、しばらくして洞穴の中からカヤの声が響いた。
〔アナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルド様の御成ーーーりーーー!!〕
「あっ、激おこ姫が来るぞ!! 皆、平伏しろ!!」
コツ……コツ……と足音が近付いて来る。一同は慌てて平伏した。周りの人間達が平伏したのを真似て、たけみつも伏せをする。
絶対コレめちゃくちゃ怒られる奴だ……覚悟を決めた一同は下腹部に力を込めた。
頭上から声が降ってきた。
「……面を上げなさい」
恐る恐る頭を上げ、ミトの表情を見た武光達は思った……うわ、真顔だ。怒った顔より逆に怖い!!
「まずは……クレナ=レディーグル、ミナハ=ブルシャーク、キクチナ=イェロパンサ」
「「「は、ハイッッッ!!」」」
名前を呼ばれ、背筋をピンと伸ばしてビビりまくる少女達に対し、ミトは膝を屈して視線の高さを合わせると……ニッコリと微笑みかけた。
「護衛の任、大儀です。守ってくれてありがとう」
「「「も、勿体無き……お言葉……!!」」」
敬愛する姫君から労いの言葉をかけられた少女達は目を潤ませながら再び平伏した。
「……ナジミさん」
「は、はいっ」
「またナジミさんには助けられましたね……感謝します」
「いやーそんなー、私と姫様の仲じゃないですか!!」
「それもそうね……ふふふ」
そう言って親友同士は笑い合った。
「……あと武光!!」
「お……おう!!」
「わん!!」
「……張っ倒す!!」
「やめたれや!! 動物虐待はアカンって!?」
「犬の方じゃなくて……貴方の方です!!」
「何や、犬やなくて俺かぁ……って、何でやねん!! 俺が何したっちゅうんじゃーーー!?」
「うるさい!! 問答無用!!」
「わーーーっ!! ちょっ……そんな照れんなって!!」
「照れてない!!」
誰の目から見ても照れ隠しである。仔犬のたけみつと共に、武光を追いかけ回すミトを見て、護衛の少女達は(ああ、あの人はミト姫様にとって特別な人なんだな)と思った。
ミト姫様にこの一年間お仕えしてきたが……あんなに楽しげで柔らかな雰囲気の姫様は見た事が無い。
そして、後ろを振り返りながら走っていた武光は、木の陰から現れた人影にぶつかり、ぶつかった両者は尻餅をついた。
「痛たたた……ハッ!? すみません!! 大丈夫ですか!?」
武光はぶつかった相手を助け起こそうとしたが……!!
「……武光さん!! 離れて下さい!!」
武光がぶつかった相手を見て、クレナ達が叫んだ。
「へっ? いや、でも……」
「そいつが……私達を襲った聖剣士です!!」
「ゲェーーーーーッ!?」
武光は 跳び退いた。
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